著者
鈴木 重夫
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.127-132, 1987-03-01

幼児は日常的に走ることを好んで体験している.また,走る動作のある遊びを好んでしている.特に幼稚園のような集団生活をする場では,その集団力学的な面も関与して,走る活動が多くなっている.そのような中で,走る快感はもとより,止まることのタイミング,スピード感,距離感等が養われ,友達と遊ぶ喜びを味わい,ルールのある遊びを楽しむことによって社会性が発達する.このように走ることは,幼児の生活の中に深くかかわっている.3歳児にみられるような,ぎこちなさも,このような生活の中でやがて消失するであろう.しかし,この場合も,親や教師がよい模範を示すと同時に,それぞれの幼児の個人差や特徴及び実態に目をむけ,手の振りかたや,足のあげかた等,適切に助言を与えることを考える必要があるように思う.また,ゲーム的な遊びのみでなく,直線コースを友達と競争して力いっぱい走るとか,リレーをするとかの競技的な集団遊びも取り入れていくことが望ましいと考えている.それは,走る姿勢の矯正や,記録の向上を意味しているのではない.早く走ることのできる喜びを幼児なりに体験し,自信を持つことができるようになることを望んでいるのである.