著者
岩科 司 八田 洋章
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.139-146, 1998-12
被引用文献数
1

Mastixia trichotoma Blume (ミズキ科),キジュ(Camptotheca acuminata Decne,ヌマミズキ科),ウリノキ(Alangium platanifolium (Sieb. & Zucc.) Harms var. trilobum (Miq.) Ohwi,ウリノキ科),シマウリノキ(Alangium premnifolium Ohwi,ウリノキ科)およびハンカチノキ(Davidia involucrata Baill., ハンカチノキ科)の葉に含まれるフラボノイド化合物がハンカチノキを除き,初めて報告された。これらの植物に含まれているのはいずれもフラボノールの配糖体で, M. trichotomaからはkaempferol 3-O-glucosideと3-O-galactosideおよびquercetin 3-O-glucoside,キジュからはkaempferolの3-O-glucosideと3-O-galactoside,およびquercetinの3-O-glucoside, 3-O-galactosideと3-O-rutinoside,ウリノキからはkaempferol 3-O-rutinoside,およびquercetin 3-O-glucosideと3-O-rutinoside,シマウリノキからはkaempferolの3-O-rutinoside, 3-O-rhamnosylgalactoside, quercetinの3-O-glucoside, 3-O-galactosideと3-O-rutinoside,およびisorhamnetinの3-O-rhamnosylglucosideと3-O-rhamnosylgalactoside,そしてハンカチノキからはkaempferolの3-O-galactoside,およびquercetinの3-O-glucoside, 3-O-galactosideと3-O-arabinosideが分離同定された。これらのフラボノイドはいずれもkaempferol, quercetinおよびisorhamnetinの3-O-モノ-あるいはジ-配糖体であり,著者らが以前に分離同定を行った大多数のミズキ属(Cornus)植物のフラボノイド組成と極めて類似していた。以上のような点から,限られた種の分析ではあるものの,上記4科の種属はフラボノイドを指標とした化学分類学的観点からみると,ミズキ科のうちでもフラボノールでなくフラボンの配糖体を含むハナイカダ属(Helwingia)や,糖として主にキシロースを結合しているフラボノールの3,7-O-配糖体が主要成分であるアオキ属(Aucuba)よりもむしろミズキ属に近縁であると推定された。
著者
鈴木 鉄男 金子 衛 鳥潟 博高 八田 洋章
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-44, 1968

温州ミカンの水分不足度をあらわす指標として, 葉の飽和水分不足度 (W.S.D.) をとりあげ, その日変化, 季節変化をほ場栽植と鉢植えミカンについて実測し, さらに気象要因, 土壌水分との関係について調査を行なつた。<br>1. 夏期における葉のW.S.D.の日変化は, 日の出とともに上昇し, 12時にピークを示し, 以後下降して18時に最低となつた。冬期の日変化は夏期とほぼ同様の傾向を示したが, その動きは小さかつた。<br>2. 葉のW.S.D.の季節変化は, 冬期は1月上旬以降の低温と寒風によつて急上昇し, 2月上旬にピークを作り, 以後3月下旬までは次第に下降した。春期は4月中は低い値で経過したが, 5月上旬は春先の乾燥と新しようほう出などの関係で急上昇して一つのピークを作り, その後は6月上旬にかけてやや下降した。夏期は高温, 乾燥とあいまつて7月上旬から8月下旬にかけて高い値を示し, とくに8月上旬は顕著で最高のピークを形成した。秋期は9月中は比較的高い値で経過したが, 10月上旬からは次第に下降した。<br>3. 冬半期と夏半期における葉のW.S.D.と各気象要因との相関関係をみたところ, 冬半期のW.S.D.は気温, 地温, 降水量, 飽差とそれぞれ高い負の相関を示し, 夏半期のW.S.D.は気温, 地温, 飽差と高い正の相関を示した。<br>4. 秋期から冬期にかけて, 風に当てた場合の葉のW.S.D.の変化をみたところ, 風速が増すにつれてW. S.D.は上昇し, また風に当てた時間が長いほどW.S.D. は上昇した。さらに枝しよう内の蒸騰流の速度は, 風に当てることによつて明らかに大となり, 土壌が乾燥するにつれて流速は低下した。<br>5. 土壌含水量の変化と葉のW.S.D.の関係をみた結果, 夏期は両者の間に高い負の相関があり, 曲線回帰方程式によつて葉のW.S.D.から土壌含水量が推測できた。なお, 土壌水分がほ場容水量~水分当量の間にある時はW.S.D.の変化は緩慢であつたが, 水分当量以上に土壌が乾燥するとW.S.D.は次第に上昇し, その後は乾燥にともなつて急上昇した。W.S.D.が8%になると葉に干害徴候があらわれ, 10%に達すると果実の外観にも干害徴候が出始めた。冬期においては土壌含水量とW.S.D.の相関は認められず, 冬期に葉のW.S.D.が上昇するのはむしろ気象要因によるところが大きいようである。
著者
八田 洋章
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-33, 1995-12

It is very difficult to quantitatively recognize the tree shapes as three dimensional body, although we have been unconsiously looking at them abundant in our surroundings. Various features of response of trees to their environment cause slow progress of the study of tree architecture. This paper reviews an outline of studies in tree form and author's work on shrub architecture. Attention was paid to significance of seedlings on the architectural study, because the basic growth pattern and stem form are controlled by the genetic potential. The author also noticed some of shrub in which plant body is composed of many different-aged stems and they are renewing within 2-5 years sucessively. In these plants, it is possible to investigate in detail the process of shoot growth from sprouting to death after fruiting. The constructive process of shrubs architecture will be expected to prove by these approaches. We have examined ca. 30 species every year with special reference to the branching patterns of seedlings. Noteworthy results on seedling include that (1) seedlings initially may be show a species specific growth process under a genetic control; (2) then they strongly influence the later development of tree form; and (3) species having a similar tree form may have different ways of architectural development.