著者
吉田 正人 鈴田 和之 上門 潤一郎 新井 幸三
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.190-199, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2

化粧品分野では,毛髪の損傷低減,損傷した毛髪の修復などに様々なタイプのケラチンタンパク質が応用されている。側鎖に非対称性のジスルフィド基をもつ水溶性のS-カルボキシメチルアラニルジスルフィドケラチン (CMADK) タンパク質が,羊毛繊維のチオグリコール酸ナトリウム塩による還元処理と,それに続く過酸化水素による酸化処理により合成された。SDS-PAGE法により,この新しい誘導体化タンパク質の分子量は約64 kDaおよび48 kDaであることがわかった。また,CMADKタンパク質に含まれるジスルフィド基量は4.4×10-4 mol/gであった。非対称性のジスルフィド基をもつ水溶性タンパク質と毛髪中のフリーのチオール基とのSH/SS交換反応を通して共有結合しうるタンパク質による毛髪表面の修飾が期待された。毛髪のねじり応力評価法からCMADKタンパク質で処理した毛髪の剛性率は増加した。洗髪のシミュレーションモデルを用いた繰り返し処理を行っても,毛髪の剛性が維持されることがわかった。