著者
安部 達也 鉢呂 芳一 小原 啓 稲垣 光裕 菱山 豊平 國本 正雄 村上 雅則
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.600-608, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
18
被引用文献数
2

新規下剤には排便回数の増加のみならず,腹痛や腹部膨満感,排便困難といった便秘の諸症状に対する効果も期待される.急性便秘とは異なり,慢性便秘の場合は長期間使用しても耐性や依存性,偽メラノーシスが生じないことも求められる.2012年に処方箋医薬品としては実に30年振りとなるルビプロストンが発売され,2019年のラクツロース経口ゼリーまで合計6種の新規下剤が登場した.慢性便秘症診療ガイドライン2017において最も推奨されている下剤は,浸透圧性下剤と上皮機能変容薬の2種類であり,新規下剤6剤のうち4剤がその2種類に含まれている.前治療がない場合は一般的には浸透圧性下剤が第一選択薬となり,効果がない場合は上皮機能変容薬やエロビキシバットへの変更を検討する.新薬同士の選択は,便秘の病態や重症度,予測される副作用を考慮して行うが,個々の患者との相性は実際に投与してみないと分からないこともある.
著者
安部 達也 國本 正雄 鉢呂 芳一
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.247-253, 2008 (Released:2008-10-02)
参考文献数
33
被引用文献数
9 11

高齢化にともない増加が予想される便失禁患者に対応すべく便失禁専門外来を開設した.週1回の外来に2年弱で250名が受診した.女性の割合が高く,女性の方が高齢であった.便失禁症状は切迫性よりも漏出性が多かった.詳細な問診と肛門機能検査などから便失禁の原因を検討した結果,分娩損傷によるものが最多で全体の2割(48例)を占めた.その他,直腸脱(25例),肛門手術後(21例),内括約筋変性症(18例)などが多く,原因を特定できない特発性も44例あった.外科的治療は少なく,多くの症例でバイオフィードバック療法や肛門管電気刺激療法などの保存的治療を行った.高齢などを理由に無治療(31例)や,治療途中で脱落する例(20例)もあった.
著者
鉢呂 芳一 國本 正雄 安部 達也 草野 真暢
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.317-321, 2006-06-01
被引用文献数
9 16

新しい内痔核硬化療法剤であるジオン注は,硫酸アルミニウムカリウムおよびタンニン酸を有効成分とする局所注射用配合剤で,現在手術療法に代わる内痔核根本治療薬として期待されている.当院では2005年4月より,内痔核症例を中心に200症例の肛門疾患に対しジオン注治療を施行した.合併症として1例にジオン注投与後に嵌頓痔核を発生し,結紮切除術を施行した.退院後の経過観察中8例に再発(脱出)を認め,3例においてすでに再ジオン注投与を施行した.ジオン注投与前後で肛門機能検査および肛門エコー検査を施行したが,肛門機能への影響は認めなかった.ジオン注治療では,脱出.出血による症状は投与直後より劇的に消失した.現時点における短期成績では,ジオン注硬化療法は十分満足できる結果であった.
著者
安部 達也 鉢呂 芳一 海老澤 良昭 菱山 豊平 國本 正雄
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.6-10, 2016 (Released:2015-12-24)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

目的:新規便秘治療薬であるルビプロストンの有効性と副作用について検討した.方法:慢性便秘症に対してルビプロストンを投与した133例(女性73例,平均65.0歳)を対象とした.投与開始から2週間観察してConstipation scoring system(CSS)の変化と副作用について検討した.成績:CSSの全8因子のうち,排便回数,排便困難,残便感,腹痛,排便時間,排便失敗回数の6因子が有意に減少し,合計点はベースラインの10.05から7.60に有意に改善した.55例(41.4%)に副作用を認め,36例(27.1%)が副作用のために内服を中止した.副作用としては悪心(24.1%)と下痢(16.5%)が多く,悪心の頻度は男性よりも女性で高かった.結論:ルビプロストンは排便回数を増加させ,便秘の諸症状を改善することが示された.女性は悪心を起こしやすいため,適応は慎重に判断すべきである.
著者
安部 達也 鉢呂 芳一 小原 啓 稲垣 光裕 菱山 豊平 國本 正雄
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.237-243, 2020 (Released:2020-06-25)
参考文献数
20

実地臨床における大腸通過時間検査の診断能を分析し,その臨床的意義について検討した.慢性的な便秘症状のために当院を受診し,X線不透過マーカー法による大腸通過時間検査を行った184例(平均年齢67歳,女性109例)を対象とした.SITZMARKS®を1カプセル服用して,3日後または5日後に腹部X線を撮影し,残存マーカー数をカウントした.マーカー服用後3日目に撮影した170例のうち,64例(38%)が大腸通過遅延型(マーカーが40%以上残存)であった.大腸通過遅延型のマーカー分布はrectosigmoid(31例)とleft colon(23例)が多かった.残存マーカー数と便秘の重症度の間には有意な相関関係は認められなかった(rs=0.086,p=0.237).大腸通過時間検査に伴う副作用は1例も認めなかった.日本人を対象として大腸通過時間検査を行い,海外での成績と同等の結果が示された.
著者
神山 剛一 安部 達也 鉢呂 芳一 國本 正雄 荒木 靖三 高野 正博
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.867-872, 2011 (Released:2011-11-02)
参考文献数
44
被引用文献数
4

便失禁の保存的治療では,まず患者の生活習慣を調べた上で食物繊維摂取を促し,便を軟化させるコーヒーやアルコールなどは控えるよう指導する.これに加え薬物療法が選択されるが,軟便が漏れる場合はロペラミドが有効とされ,一方ポリカルボフィルカルシウムは便の性状に関係なく便失禁を改善させる.これら基本的なアプローチで改善しない場合,より専門的な介入の適応となる.便失禁に対するバイオフィードバック療法(以下BF療法)は症状の改善に有用で,海外では広く認められた方法である.当院では薬物療法で改善しなかった54名にBF療法を施行し,Wexner's scoreを9から3へ改善させることができた.他にアナルプラグや逆行性洗腸があるが,いずれも脊髄障害患者や直腸切除後といった特定の対象者で有効性が得られている.