著者
鈴木 茂樹 浅賀 亮哉 銭田 良博 木村 裕明
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-7, 2019 (Released:2019-05-24)
参考文献数
13

近年,エコーガイド下Fasciaリリースは,その効果を実感した医師やその他の医療従事者の間で広がりつつある。Fasciaとは筋膜以外にも腱,靭帯,脂肪などの結合組織を示すが,その定義は国際的にも議論中であり,本邦でも適切な日本語訳制定に至っていない。医師は痛みの原因となる部分に生理食塩水を注入することで,理学療法士は徒手療法によって,痛みを改善することができる。発痛源と関連痛が離れている場合は,発痛源を探るために様々な身体診断を行う必要がある。しかし,発痛源評価には様々な方法があり,医師一人では困難である。そのため,理学療法士などとの多職種連携が重要である。さらに理学療法士は,再発予防のための日常生活動作指導も行うことができる。また,Fasciaについての正しい理解や,疼痛のメカニズム,疼痛とFasciaの関係の可能性について,最新の知見を解説していく。
著者
鵜川 浩一 古田 亮介 愛甲 雄太 銭田 良博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-227_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】仙腸関節痛について村上らは、主病変は靭帯領域に存在すると報告している。また仙腸関節痛に対する運動療法においても後仙腸靭帯、骨間仙腸靭帯に対しアプローチすることで疼痛緩和を認めるという報告も散見できる。しかし、その靭帯の状態の違いついての報告は、我々が渉猟しえた限りで無かった。よって仙腸関節痛患者の靭帯が占める面積比から特徴を調査することを目的とした。【方法】対象は、仙腸関節ブロックの効果が7割以上の者で仙腸関節症と診断され、仙腸関節痛鑑別テストが陽性の者を仙腸関節痛群(以下、SIJ群)とした。その他の除外基準は、手術既往のある者とした。また、腰痛が無く仙腸関節痛鑑別テストが陰性の者を正常群(以下、N群)とした。SIJ群10名20関節(男性2名、女性8名、平均年齢41.2±8.8歳)、N群11名22関節(男性6名、女性5名、平均年齢27.2±4.2歳)が比較対象となった。測定肢位は、被験者を側臥位とし股関節膝関節は90°屈曲位とした。後仙腸靭帯と骨間仙腸靭帯(以下、靭帯領域)を超音波画像診断装置にて描出した。描出方法は、第1仙椎棘突起のレベルで、腰部多裂筋の短軸像を正中仙骨稜へ垂線となる位置で描出した。この位置の腰部多裂筋の深層に、靭帯領域が存在する。描出した画像に、腸骨稜と第1仙椎棘突起とを結ぶ線を引いた。その線と骨縁からなる領域を総面積とした。総面積と靭帯領域の面積をimage Jにて計測し、総面積に対する靭帯領域の割合の平均値の差をSIJ群とN群とで比較した。統計処理はMann-Whitney U検定を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】総面積に対する靭帯領域の割合は、SIJ群38.9±11.6%、N群29.4±7.7%であり、SIJ群の方が正常群より優位に靭帯領域が広かった(P<0.05)。【結論(考察も含む)】SIJ群の靭帯領域はN群と比べて優位に面積が広かった。よってSIJ群は後仙腸靭帯、骨間仙腸靭帯が肥厚している可能性と、靭帯領域周囲の軟部組織が変性している可能性が示唆される。仙腸関節ブロックが有効な点も加味して考えると、仙腸関節痛患者に対する運動療法として、靭帯領域に着目することは有用である可能性が示唆された。今後の課題として、組織学的に検討することが必要である。【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の目的と意義について十分に説明し同意を得た。またヘルシンキ宣言に沿って本研究を進めた。