著者
谷澤 真 飛永 敬志 伊藤 俊一
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.51-55, 2014 (Released:2014-02-05)
参考文献数
19

【目的】短時間の静的ストレッチングが柔軟性や筋機能にどのような影響をもたらすかについて,未だ一定の見解が得られておらず,最も効果的な伸張時間も確立されていない。そこで,静的ストレッチングにおける伸張時間の違いが柔軟性および筋出力に及ぼす影響について検討した。【方法】健常成人20名を対象とした。伸張時間を30秒間と6秒間の2条件に定め,柔軟性の評価としてSLRを測定し,筋出力の評価としてBIODEXを用いて等尺性膝屈伸筋力,等速性膝屈伸筋力を測定した。【結果】伸張時間が6秒間では関節可動域は拡大しないものの筋出力は向上し,30秒間では関節可動域は拡大したものの筋出力は低下した。【結論】静的ストレッチングは伸張時間の違いにより効果が異なり,目的・用途に合わせて伸張時間を選択する必要があることが示唆された。
著者
山岸 恵理子 榎本 隆 廣瀬 圭子 田口 孝行
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.22-26, 2010 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16

本研究ではトレーニング方法の相違による体幹伸展筋群の筋活動を比較し,体幹伸展筋群のトレーニング方法における筋活動量の段階付けを行うことを目的とした。被験者には①腹臥位で最大筋力発揮,②腹臥位で対角上下肢挙上,③徒手筋力検査(MMT)5,④四つ這いで対角上下肢挙上,⑤MMT3,⑥逆ブリッジ,⑦ブリッジ,⑧座位で重錘挙上,⑨座位で上肢挙上・頭部伸展を行わせ,その肢位を3秒間保持させた。その際,胸部傍脊柱筋(T9),腰部傍脊柱筋(L3)から表面筋電図(EMG)を導出し,積分筋電図(IEMG)を求めた。その後①のIEMGを基準とし②~⑨の最大随意収縮に対する割合(%MVC)を求め,T9・L3における②~⑨の筋活動量を比較,分類した。その結果,T9ではA②・③・④,B⑤・⑥,C⑦・⑧・⑨に,L3ではD②・③・⑤・⑥・⑦,E④,F⑧・⑨に分類することができた。T9ではA,Bは最大筋力の増強,Cは筋持久力増強に適していることが推測された。L3ではDは最大筋力の増強,Eは筋持久力増強,Fは筋力増強効果が期待できないことが推測された。
著者
遠藤 浩士
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-8, 2015 (Released:2015-01-09)
参考文献数
9

スポーツ現場において,理学療法士がスポーツ選手や愛好家などを対象に活動するためには,スポーツの競技特性を捉えることが重要であり,スポーツ外傷・障害の予防と復帰後の競技パフォーマンスに取り組むべきである。2020年の東京オリンピックという大きな大会でスポーツ活動支援を行うためにも,理学療法士が今「何をするべきなのか?」また「何が出来るのであろうか?」。その問いに対しては,スポーツ活動をこれから行う子供や現在行っている子供からスポーツ活動を継続的に行っている選手に至るまで,地域ごとに対象者を取り巻く環境整備などに取り組んでいく必要がある。「スポーツ」という大きな括りとしては,選手のみならず監督・指導者といったスポーツ現場と,医師・理学療法士を含めた医療現場との連携が必要である。さらにスポーツ活動支援を充実するうえでは,理学療法士という職域を超えた知識や技術が求められる。
著者
原田 脩平 佐野 幸子 井上 貴裕
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.98-102, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
16

【はじめに】筆者らは,健康相談室の活動の一つとして,生体電気インピーダンス法による筋肉量,脂肪量などの測定を行っている。今回,筋肉量減少および脂肪量増加に対する予防の開始時期や注意点,男女の違いを明らかにすることを目的とした。【方法】埼玉県内の住宅団地やイベント会場などにて参加を呼びかけ承諾の得られた男女483人を対象者とした。測定にはマルチ周波数体組成計MC-780A(タニタ社)を使用し,測定値を年代別,性別に区分して分析した。【結果】筋肉量の年代ごとの変化では,男女ともに中年期以降で下肢の筋肉量の低下が有意にみられた。脂肪量は男性では青年期から壮年期にかけて有意に増加し,女性では中年期に男性よりも有意に多かった。【結論】男女ともに45歳以上の中年期から下肢筋力低下の予防の必要性が考えられた。脂肪量は,男性では青年期から壮年期にかけて増加を防ぐ必要があり,女性では中年期に過剰な蓄積を防ぐ必要があることが考えられた。
著者
村田 健児
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.89-92, 2021 (Released:2021-04-09)
参考文献数
4

症例報告は,古くから存在する医学分野の報告形式であり,理学療法分野においても医学研究の一環としての日頃の臨床現場から得られた新しい知見を普及させるための手段の一つである。報告内容の目的は,症例の経過から得られる客観的データから臨床的問題を定義し,今まで分かっていなかった情報を論理的に提示し,後世の治療に役立てることである。1件の症例報告でも蓄積された患者情報は将来強いエビデンスとなるかもしれない。本稿は理学療法における症例報告の役割と投稿方法や査読のポイントについて紹介する。
著者
谷本 道哉
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-9, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17

体幹トレーニングとして,体幹の剛体化を目的としたプランクが行われることが多い。体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングとして活用されることもある。また,腹横筋の活動促通を目的としたドローインもよく行われる。しかし,プランクでは実際には体幹を剛体化させるBracingも腹圧の上昇もしていない。また,そもそも多くの競技動作では体幹は固定させるよりも,大きく動作して力学的仕事を行っており,これらから考えるとプランクの意義を見出しにくい。ただし,反証データもあるが,プランクの実施による競技パフォーマンスの向上を認める報告もある。そのメカニズムは明確ではないが,選手にとって効果を実感できるのであれば,プランクの実施はプラスとなるかもしれない。また,ドローインには腹横筋の筋活動の促通効果が腰痛患者において認められる。ただし,腹横筋の筋活動レベルは競技動作そのもののほうがドローインよりもはるかに高い。競技動作を十分に行える身体機能を有する競技選手においては,ドローインを行う意義は薄いかもしれない。プランクやドローインの意義には不明確な部分があるが,体幹の機能から考えて,体幹動作の強い筋力と大きな可動性を有することが重要であることはおよそ間違いないであろう。これらの機能改善には,体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングと体幹の可動性獲得の動作トレーニングが有用となるだろう。
著者
須永 康代
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.11-15, 2019 (Released:2019-05-24)
参考文献数
34

妊娠および出産を契機とした女性の身体変化は著明であり,本国においてもこの時期のトラブルに対する予防・改善が理学療法の対象となるケースは年々増加している。妊娠中の腹部の突出を起因とする筋骨格系の変化による腰背部痛や骨盤底機能障害などのトラブルが日常生活動作の困難感をきたすこともある。また質量中心の変位によって姿勢制御機構に変化をもたらし,アライメントや動作パターンに影響を及ぼすことも明らかとなっている。妊娠・出産期における筋骨格系の機能解剖学的,運動学的変化について十分理解したうえで,産科的リスク管理のもと理学療法を実施することが必要不可欠である。今後,理学療法士の介入により,妊娠中から産後にかけての女性の健康支援をさらに充実させていくとともに,臨床における理学療法のエビデンスを構築していくことが望まれる。
著者
鈴木 茂樹 浅賀 亮哉 銭田 良博 木村 裕明
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-7, 2019 (Released:2019-05-24)
参考文献数
13

近年,エコーガイド下Fasciaリリースは,その効果を実感した医師やその他の医療従事者の間で広がりつつある。Fasciaとは筋膜以外にも腱,靭帯,脂肪などの結合組織を示すが,その定義は国際的にも議論中であり,本邦でも適切な日本語訳制定に至っていない。医師は痛みの原因となる部分に生理食塩水を注入することで,理学療法士は徒手療法によって,痛みを改善することができる。発痛源と関連痛が離れている場合は,発痛源を探るために様々な身体診断を行う必要がある。しかし,発痛源評価には様々な方法があり,医師一人では困難である。そのため,理学療法士などとの多職種連携が重要である。さらに理学療法士は,再発予防のための日常生活動作指導も行うことができる。また,Fasciaについての正しい理解や,疼痛のメカニズム,疼痛とFasciaの関係の可能性について,最新の知見を解説していく。
著者
森田 智美 宮崎 純弥
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.23-26, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
5
被引用文献数
1

足関節背屈制限を有する者では立ち上がり動作が困難となることが報告されているが,具体的にどの程度の制限が動作を阻害するのかは明らかとなっていない。そこで,立ち上がり動作を容易に行うために必要な背屈可動域を検討するために,金属支柱付き短下肢装具を用いて4種類の足関節背屈可動域(15°,10°,5°,0°)を設定し,各条件下での立ち上がり動作と通常の立ち上がり動作を比較したところ,前方分力・垂直分力のピーク値および離殿時の股関節屈曲角度(体幹―大腿のなす角)に変化が現れた。背屈可動域5°の条件では前方分力の増加と股関節屈曲角度の減少を認め,動作遂行に困難感が伴った。背屈可動域0°の条件では,前方分力・垂直分力の増加と股関節屈曲角度の減少を認め,動作遂行に困難感が伴った。前方分力・垂直分力のピーク値および離殿時の股関節屈曲角度は立ち上がり動作遂行の困難感を示す指標となり得ることが示唆され,動作を容易に行うために必要な足関節背屈可動域は10°以上であることが示唆された。
著者
小平 寛岳 国分 貴徳 瀧谷 春奈 藤嶋 弾 平田 恵介 名字 名前 塙 大樹 小林 章 金村 尚彦
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-26, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
31

【目的】歩行速度の違いによる立脚初期の股関節伸展筋群活動の変化に着目し,歩行速度が股関節キネマティクスに及ぼす影響について検討した。【方法】整形外科疾患のない成人男性 7 名を対象とし三次元動作解析装置,床反力計付きトレッドミル,表面筋電図を用いて0.9 m/s 歩行と1.8 m/s 歩行を計測した。計測から得られた立脚初期(10% 歩行周期)の筋活動量(大殿筋,大腿二頭筋,半腱様筋),外的股関節屈曲モーメント,股関節屈曲角度,重複歩長を条件間で比較・検討した。【結果】 0.9 m/s 歩行と比較し 1.8 m/s 歩行で外的股関節屈曲モーメント,重複歩長,股関節屈曲角度,半腱様筋活動に有意な増加がみられた。一方で,大殿筋と大腿二頭筋には有意な変化はみられなかった。【結論】歩行速度の増加に対し,立脚初期では股関節屈曲角度,重複歩長の増加による対応が行われ,この対応には半腱様筋の筋活動量増加の関与が示唆された。
著者
似鳥 藍子 馬場 志 山田 隆介
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.58-60, 2011 (Released:2011-03-30)
参考文献数
7

ギランバレー症候群(以下GBS)の予後は回復良好とされていたが,近年では回復が遅延するという報告がある。しかし,その回復遅延群とされた症例でも長期的なリハビリテーションの介入により,回復を認めているという報告もある。しかしながら,そのような個人の経過を追った症例報告は現在において少ない。今回,我々が経験した回復遅延群のGBSは,他院から当院へ転院した直後は身体機能は低く,基本動作においてはほぼ全介助であり,退院先は施設方向であったが,当院入院3ヶ月以降に著明な回復が認められ,自宅退院へ至った症例であった。転院初期の予測とは違う経過をたどった症例の経過を知ることができ,そして回復期リハビリテーションという限られた期間がある中では,回復期に限らず,長期的な介入な可能となるよう,退院後のフォローや地域・家族との連携の重要さを改めて知ることができた。
著者
渡辺 学
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.3-7, 2014 (Released:2014-02-05)
参考文献数
2

忙しい臨床の中であらゆる症例に詳細なデータの測定と分析を行っていくのは難しい。治療者の記憶に基づいた臨床経験には主観というバイアスが強く働く。患者の回復能力を最大限に引き出すためには,自らの臨床的意思決定を客観的に評価できるようにしなければならない。そのためには研究的な視点を持った症例検討を行う必要があり,手順として,①フィードバック,②症例検討,③臨床的疑問,④症例研究,の順でステップアップしていくのがよいと思われる。理学療法士というプロフェッショナルとしての臨床技術を高め,そして自信を持てるようになるには,データに基づく症例検討を行うことが非常に有効で近道であると思われる。
著者
佐々木 諒平
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.14-17, 2010 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究は,健常成人12名(男女各6名)を対象に,足趾機能がバランス能力に与える影響について,足趾把持力と重心動揺を測定し,検討したものである。結果,足趾把持力について,男女間での差および左右での差は認められなかった。足趾把持力と重心動揺との関係については,男性において足趾把持力と総軌跡長とは負の相関関係,足趾把持力と単位面積軌跡長とは正の相関関係が認められ,統計学的な有意差も認められた。逆に,女性では必ずしも男性と同様の結果は認められなかった。これらのことから,男性において足趾把持力はバランス能力を規定する上で有利に働いていると思われ,バランス能力向上のための運動療法において足趾把持力の強化が有効であることが推察された。また,女性においては男性と同様な結果は得られず,また男女間に足趾把持力の有意差が認められなかったにも関わらず,男性のみ足趾把持力と重心動揺とに有意な相関が認められたことから,男女のバランス戦略が異なる可能性が示唆された。
著者
万治 淳史 吉満 倫光
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-47, 2015 (Released:2015-01-09)
参考文献数
6

【目的】本研究の目的は回復期リハ病院入院中の片麻痺患者に対し,シーティング(車椅子寸法などの適合・調整)を行い,体幹機能・座位姿勢・バランス能力に与える効果について,明らかにすることとした。【方法】対象は回復期脳卒中後片麻痺患者10名であった。各患者に対し,シーティングを行い,調整した車椅子を使用した期間と標準型車椅子を使用した期間(各一週間)の前後における体幹機能・バランス能力について,比較を行った。【結果】結果,体幹機能・バランス能力について,シーティングを行った車椅子を使用した前後において,体幹機能・バランス能力の有意な改善を認めた。【結論】結果から,回復期脳卒中後片麻痺患者においては車椅子の適合を評価し,患者の特徴・状態に合わせたシーティングを行うことが機能回復の一助となることが示唆された。
著者
會田 萌美 武井 圭一 奥村 桃子 平澤 耕史 田口 孝行 山本 満
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.25-28, 2016 (Released:2016-03-17)
参考文献数
7

【目的】本研究では,片脚立位における非支持脚拳上方向の股関節角度の相違に着目し,支持脚筋活動に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】男子大学生13名を対象に,片脚立位姿勢(非支持脚股関節中間位,外転20度・45度,屈曲30度・90度)を保持させ,支持脚の大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,腓腹筋内側頭の筋活動を測定した。4筋における股関節中間位と外転位,股関節中間位と屈曲位の肢位間の筋活動を比較した。【結果】非支持脚を外転方向へ挙上した片脚立位では,角度の増大に伴い中殿筋に有意な筋活動の増加を認めた。外転45度・屈曲90度の片脚立位では,股関節中間位の片脚立位に比べ,中殿筋・大殿筋の有意な筋活動の増加を認めた。【結論】Closed Kinetic Chainでの筋力トレーニングとしての片脚立位は,股関節外転により支持脚中殿筋の筋活動を鋭敏に増加させ,外転45度・屈曲90度では股関節周囲筋の筋活動を増加させる特徴があると考えられた。
著者
中野 克己
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.45-50, 2014 (Released:2014-02-05)
参考文献数
11

【目的】短下肢装具(以下,装具)は,歩行能力の向上に貢献しているが,従来より,麻痺側下肢立脚期における矢状面上のチェックが中心で,人間の歩行を十分に検討しているとはいえない。そのため,装具の作製時及び仮合わせ時におけるチェック表の作成を試みた。【方法】プラスチック装具(継手付を含む)と金属支柱付き装具を対象とした。作製時チェック表は,当センターで装具を作製した163例で,装具検討会資料より項目を集計し分類した。仮合わせ時チェック表は,当センター理学療法士18名にアンケートを依頼し,得られた回答を分類した。【結果】作製時チェック表は,782項目を集計した結果,10大項目と22小項目,仮合わせ時チェック表は,182項目を集計した結果,9大項目と23小項目で作成された。【結論】装具作製は,麻痺側下肢立脚期の矢状面上のみならず,前額面上や水平面上,そして麻痺側遊脚期のチェック項目も検討する必要があることが示唆された。
著者
国分 貴徳 金村 尚彦
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.9-15, 2015 (Released:2015-01-09)
参考文献数
10

情報が溢れ,各個人が思うままに私見を発信することが容易となっている現代においては,発信された情報を精査し知識として取り入れていく能力が求められている。理学療法領域に目を向けても,講習会や書籍,文献等を通じて種々様々な情報が発信されており,理学療法士各個人にはその情報の中から,科学的で再現性の高い情報を取捨選択し,臨床に応用していく能力が求められている。その上で,Peer Reviewを経て学会誌および科学誌等に掲載された論文については,一定以上の科学性および再現性が担保されており,その応用価値は非常に高い。一方でそういった情報を応用する際には,科学的視点,すなわちある程度までの研究に関する知識が必要となるが,この点が現状の理学療法領域における課題となっていると感じている。理学療法の臨床はApplied Scienceであるという観点に立脚し,種々多様な情報を精査し応用していく必要がある。それが可能となる程度までの科学的視点を理学療法士各個人が持つことで,理学療法実践における科学性が担保されるとともに,臨床能力の向上につながると考えている。
著者
国分 貴徳
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.86-93, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
2

本稿はEditorialとして,本誌「理学療法−臨床・研究・教育」を例に,論文投稿から査読の流れおよび査読に対する返答までの流れについてまとめたものである。初めての論文投稿を検討されている方々へ,少しでも情報提供をと考えて筆をとった次第である。初めての論文投稿と聞くと,誰しもが高いハードルに感じ二の足を踏むことであろう。しかしながらまずは症例報告からであっても,自身の臨床思考過程を可能な限り科学的かつ客観的に文章にまとめ他人の批評を受けることは,自身の臨床における思考過程が整理され,明日のより良い臨床実践につながる。そればかりか,そのような積み重ねが理学療法の科学性,Evidenceの確立に確実に寄与しうる。そしてその延長線上に臨床研究の実践と,論文執筆が待っている。本項を通し,少しでも多くの理学療法士が論文投稿を身近に感じ,本誌への投稿がなお一層増えることを期待してやまない。
著者
谷本 道哉
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-9, 2020

<p>体幹トレーニングとして,体幹の剛体化を目的としたプランクが行われることが多い。体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングとして活用されることもある。また,腹横筋の活動促通を目的としたドローインもよく行われる。しかし,プランクでは実際には体幹を剛体化させるBracingも腹圧の上昇もしていない。また,そもそも多くの競技動作では体幹は固定させるよりも,大きく動作して力学的仕事を行っており,これらから考えるとプランクの意義を見出しにくい。ただし,反証データもあるが,プランクの実施による競技パフォーマンスの向上を認める報告もある。そのメカニズムは明確ではないが,選手にとって効果を実感できるのであれば,プランクの実施はプラスとなるかもしれない。また,ドローインには腹横筋の筋活動の促通効果が腰痛患者において認められる。ただし,腹横筋の筋活動レベルは競技動作そのもののほうがドローインよりもはるかに高い。競技動作を十分に行える身体機能を有する競技選手においては,ドローインを行う意義は薄いかもしれない。プランクやドローインの意義には不明確な部分があるが,体幹の機能から考えて,体幹動作の強い筋力と大きな可動性を有することが重要であることはおよそ間違いないであろう。これらの機能改善には,体幹屈曲筋・伸展筋の筋力トレーニングと体幹の可動性獲得の動作トレーニングが有用となるだろう。</p>