著者
村井 亜希子 錦織 良 神 光一郎
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.68-75, 2020-09-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
29

本研究は,わが国における歯科衛生士の就業実態や医療・介護現場で歯科衛生士が行っている処置・指導の状況などの歯科衛生士の需給に関する実態について明らかにするとともに,将来的な歯科衛生士の需給バランスについて検討することを目的として行った.分析データには,厚生労働省が実施している国家統計調査の結果および本学附属歯科衛生士専門学校に応募があった求人票を用いた. その結果,全国の歯科衛生士養成学校数は2010年から2019年の10年間で9校増え163校であった.就業歯科衛生士数を年度ごとに累積人数で推計したところ,ほぼ半数の者が歯科衛生士として就業していない実態が明らかとなった.一方,30歳以上では就業者数が増加しており,特に50歳以上ではその傾向が顕著であった.歯科衛生士の就業状況では90%の者が歯科診療所に従事していたが,一般病院や介護保険施設における歯科衛生の従事者数および保険点数の算定回数が大幅に増加している傾向が示唆された.求人票のデータ分析では,求人応募機関数が2010年度の443施設から2017年度には944施設と2倍以上に増え,特に病院からの求人が2010年度の6施設から2017年度には31施設と急増していた. 本研究により,歯科衛生士の需要が経年的に増していることが窺え,今後も周術期や介護現場等での専門的口腔管理の重要性が浸透し,歯科衛生士の需要は高まることが推測される.一方,歯科衛生士国家試験合格者のほぼ半数が歯科衛生士として就業しておらず,20歳代の就業歯科衛生士数が他の年齢層の就業歯科衛生士数と比べて減少傾向を示していることが明らかとなった.今後歯科衛生士の需給を検討する上では,歯科衛生士が生涯を通じて資格を活かすことのできるワークライフバランスや待遇の改善,医科歯科連携や高齢者の口腔機能管理などに係る教育カリキュラムの充実など,有資格者が歯科保健医療に貢献できる就業の在り方を検討することが課題であると考えられる.
著者
錦織 良 加藤 功一
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯科および整形外科の領域では、間葉系幹細胞(MSC)移植による骨組織の再生治療が盛んに研究されている。そのような治療をいっそう効果的に行うには、不均質なMSC 集団の中から骨分化能の高い細胞をその表面マーカーを利用して予め選別し、細胞品質を管理することが治療に有効であると考える。そこで本研究では、未分化状態のMSC に発現する表面マーカーと、分化培養を行なった後の骨分化の程度との相関を調べ、それによってMSC の予見的表面マーカーを同定することで、MSC の品質管理に応用するための方法として、オンチップ・セル・ソーティング法および、MSC の予見的マーカーとして候補となる表面マーカー/抗体を多数選び出し、これらの可能性を調査した。マイクロアレイの作製には、アルカンチオール自己組織化単分子膜のプラズマパターニング法を用いた。10種類程度の抗体を1種類ずつスポットに固定した。多種類の表面マーカーに対する多種類の抗体を配列固定した小さな抗体チップ(チップ)を作製した。そのチップ上に細胞を播種することによって、それぞれの表面マーカーを発現する細胞を抗体を固定化したスポット上に播種しソーティングを行った。抗体に対応した表面マーカーを発現した分化前のMSCの表面抗原発現パターンを簡便に分析評価することができた。また、文献を調査することでMSCに特異的に発現する予見的表面マーカーの候補が明らかになった。スポットに捉えられた細胞の数を数えることで、定量的な評価が可能であることが示唆された。抗体チップを用いることで、細胞表面に発現する各種マーカーをチップの使用により迅速に分析することが可能になった。この手法によって、再生医療におけるMSCの品質管理に関する研究が加速されるものと期待される。なお、代表者は文部科学省の専任義務のポジションに変わったため規則上科研の研究継続が出来なかった。