著者
岩田 博夫 加藤 功一 笹井 芳樹 滝 和郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

胚性幹細胞(ES細胞)からのインスリン産生細胞の分化誘導:マウスまたカニクイザルのES細胞から米国NIHのMcKayらの報告した分化誘導法を基本に研究を進めてきた。インスリン陽性細胞には2種類のタイプが存在し、一つはインスリン染色で細胞全体が強く染色される小さな細胞、他はインスリン染色で細胞質のみ染色される比較的大きな細胞であった。また、サブカルチャーを行っても常にインスリンの免疫染色が陽性になる細胞が存在した。さほど高効率ではないが、間違いなくインスリン産生細胞へと分化誘導できていると考えている。高効率にインスリン分泌細胞を分化誘導するために、Tet systemを利用してカニクイザルサルES細胞内でPDX-1遺伝子発現を制御することによりインスリン分泌細胞へと分化誘導する方系を作成した。ES細胞からのドーパミン産生細胞の分化誘導:PA6細胞のConditioned Medium中の成分とポリイオンコンプレックス形成法を用いて表面を試作し、この表面上でES細胞をドーパミン産生細胞へと分化誘導した。また、PA6細胞のConditioned Mediumを用いてES細胞を浮遊培養しドーパミン分泌細胞への分化誘導を行った。培養30日後においてもドーパミンの検出ができた。中空糸内にカニクイザルES細胞を封入した後、PA6細胞の順化培地中で培養を行ったところ、効率よく神経細胞へと分化した。免疫隔離膜:PEG脂質を用いて細胞表面を細胞に障害を与えることなく極めて薄い層で覆うことができた。カプセル化による体積増加が極めて小さい生細胞マイクロカプセル化法として極めて有力であると考える。ヒトES細胞:ヒトES細胞使用許可の取得が諸般の事情で遅れ、平成18年3月10日付けでヒトES使用計画の大臣確認書が交付された。このため大部分の仕事はマウスES細胞とカニクイザルのES細胞を用いて研究を行った。
著者
錦織 良 加藤 功一
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯科および整形外科の領域では、間葉系幹細胞(MSC)移植による骨組織の再生治療が盛んに研究されている。そのような治療をいっそう効果的に行うには、不均質なMSC 集団の中から骨分化能の高い細胞をその表面マーカーを利用して予め選別し、細胞品質を管理することが治療に有効であると考える。そこで本研究では、未分化状態のMSC に発現する表面マーカーと、分化培養を行なった後の骨分化の程度との相関を調べ、それによってMSC の予見的表面マーカーを同定することで、MSC の品質管理に応用するための方法として、オンチップ・セル・ソーティング法および、MSC の予見的マーカーとして候補となる表面マーカー/抗体を多数選び出し、これらの可能性を調査した。マイクロアレイの作製には、アルカンチオール自己組織化単分子膜のプラズマパターニング法を用いた。10種類程度の抗体を1種類ずつスポットに固定した。多種類の表面マーカーに対する多種類の抗体を配列固定した小さな抗体チップ(チップ)を作製した。そのチップ上に細胞を播種することによって、それぞれの表面マーカーを発現する細胞を抗体を固定化したスポット上に播種しソーティングを行った。抗体に対応した表面マーカーを発現した分化前のMSCの表面抗原発現パターンを簡便に分析評価することができた。また、文献を調査することでMSCに特異的に発現する予見的表面マーカーの候補が明らかになった。スポットに捉えられた細胞の数を数えることで、定量的な評価が可能であることが示唆された。抗体チップを用いることで、細胞表面に発現する各種マーカーをチップの使用により迅速に分析することが可能になった。この手法によって、再生医療におけるMSCの品質管理に関する研究が加速されるものと期待される。なお、代表者は文部科学省の専任義務のポジションに変わったため規則上科研の研究継続が出来なかった。