著者
岩瀬 正典 上野 道雄 吉住 秀之 土井 康文 浅野 有 鍋山 尚子 姫野 治子 飯野 研三 飯田 三雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.921-929, 2004-12-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
29

糖尿病性腎症の治療としてアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) の併用療法が注目されているが, 我が国における検討は少ない. 今回, ACE阻害薬を6カ月間以上投与中の早期ないし顕性腎症を合併した2型糖尿病患者 (n=36) で, ACE阻害薬をARBに変更した群 (ARB変更群), ARBを併用した群 (ARB併用群), ACE阻害薬を継続した群 (ACE継続群) の3群に無作為に割り付け6カ月間比較検討した. ARBとして, カンデサルタンを投与し (平均5mg/日), 開始前と開始6カ月後に24時間家庭蓄尿を行った. 血圧は3群間に有意差を認めなかった. 尿蛋白排泄量はACE継続群で有意に増力口したが (p<0.05), 他の2群では有意な変化を認めなかった. 尿蛋白増力口率はARB併用群でACE継続群よりも有意に低下した (ACE継続群119±5296, ARB変更群19±2996, ARB併用群9±1796, p<0.05vsACE継続群). 尿蛋白排泄量の変化と血圧の変化の間には有意な相関を認めなかった. クレアチニン・クリアランスはACE継続群で有意に低下したが (前80±8mZ/分6カ月後70±6ml/分p<0.05), 他の2群では有意な変化を認めなかった (ARB変更群前87±11ml/分6カ月後84±7ml/分ns, ARB併用群前86±10ml/分6カ月後80±11ml/分ns). 血清尿酸がACE継続群で有意に上昇したが, 血清力リウムやヘモグロビンはどの群でも有意な変化を認めなかった. ACE阻害薬とARBの併用療法は早期ないし顕性腎症合併2型糖尿病患者の腎症進展抑制に有用であることが示唆された.