- 著者
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川崎 晃一
上野 道雄
尾前 照雄
松岡 緑
- 出版者
- The Japanese Society of Internal Medicine
- 雑誌
- 日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.10, pp.1293-1298, 1980
- 被引用文献数
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収縮期(SBP)ならびに拡張期(DBP)血圧,口内温(Temp)および脈拍(PR)の日周(cir-cadian),月周(circatrigintan)および年周リズム(circannual rhythm)を検出するために, 1健康女性(34才)の1日4回(起床時,昼食前,夕食前,就寝前), 1年間にわたる自己測定値をコサイナー法を用いて分析した. DBP, Temp, PRの推計学的に有意な日周,月周および年周リズムならびにSBPの有意な日周リズムが検出された. 1年間を通じてSBP, DBPのメサー(余弦曲線の基線)は115.2±0.2(SE)/85.4±0.2mmHgであり, TempとPRのそれは36.04±0.01°C, 79.8±0.2/分であつた.日周リズムの頂点位相はそれぞれ7:08(SBP), 10:40(DBP), 17:00(Temp)および18:48(PR)に検出された.また月周リズムの頂点位相は月経開始後7日目(SBP), 8日目(DBP), 22日目(Temp), 19日目(PR)に,年周リズムのそれは1月10日(SBP), 12月1日(DBP), 12月4日(Temp)および11月23日(PR)に検出された.日周リズムを1カ月毎に検出すると, SBPとDBPの頂点位相は冬季では3:00すぎに,夏季では午後遅く認められ,季節的変動が大きかつた.しかしTempとPRの頂点位相は1年を通じて著しい変動はなかつた.今回分析し得た諸変数の自己測定はたとえ1日4回の測定頻度であつても日周リズムから年周リズムまでのリズム分析に有用であつた.またこの成績はリズム分析を行なうことによつてより適切で,より効果的な治療を行なうために,個人個人の高血圧治療に"chronotherapy"が適用されうることを示唆する.