著者
岩瀬 正典 平田 泰彦 石橋 大海 林田 一洋 永渕 正法 柏木 征三郎 大久保 英雄 松原 不二夫
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.1053-1060, 1984

慢性肝炎を合併したDubin-Johnson症候群(DJS)の1例を報告する.本症例で興味ある点は,1)肝は肉眼的にほぼ正常の色調を呈した,2)胆汁酸負荷試験で再上昇現象を示したことである.症例は22歳の男性.2年前に急性肝炎(非B型)に罹患.トランスアミナーゼの中等度の上昇,直接型優位の高ビリルビン血症およびBSPの再上昇を認め,腹腔鏡検査で肝はほぼ正常の色調を呈した.組織像は慢性肝炎非活動型の所見であり,主に中心帯の肝細胞内に少量の色素顆粒を認めた.空腹時血清総胆汁酸は増加,ウルソデオキシコール酸500mgを経口負荷後,総胆汁酸濃度は30分で最高値をとった後低下し,90分より再上昇を示した.空腹時総胆汁酸の増加は合併している慢性肝炎の影響も考えられたが,再上昇現象はDJSの胆汁酸代謝異常によるものと考えられた.
著者
岩瀬 正典 北園 孝成 久保 充明 清原 裕 康 東天 大隈 俊明 土井 康文 佐々木 敏 神庭 重信
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

糖尿病治療の目標は糖尿病患者の予後をできるだけ健常者の予後に近づけることである。そのためには糖尿病患者と健常者を比較する疫学研究が必要である。我々は福岡県内の糖尿病専門施設に通院中の糖尿病患者5131人(福岡県糖尿病患者データベース研究、追跡期間5年間 追跡率97%)と耐糖能正常者を含む福岡県久山町住民3351人(久山町研究)からなるデータベースを構築した。本研究期間では生活習慣(早食い、食物繊維・マグネシウム摂取量、運動、飲酒、喫煙、睡眠時間、うつ症状、生活習慣スコア)、2型糖尿病患者の膵島自己抗体、2型糖尿病感受性遺伝子、重症低血糖、慢性腎臓病、癌、遺伝子―環境相互作用について報告した。
著者
岩瀬 正典 上野 道雄 吉住 秀之 土井 康文 浅野 有 鍋山 尚子 姫野 治子 飯野 研三 飯田 三雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.921-929, 2004-12-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
29

糖尿病性腎症の治療としてアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) の併用療法が注目されているが, 我が国における検討は少ない. 今回, ACE阻害薬を6カ月間以上投与中の早期ないし顕性腎症を合併した2型糖尿病患者 (n=36) で, ACE阻害薬をARBに変更した群 (ARB変更群), ARBを併用した群 (ARB併用群), ACE阻害薬を継続した群 (ACE継続群) の3群に無作為に割り付け6カ月間比較検討した. ARBとして, カンデサルタンを投与し (平均5mg/日), 開始前と開始6カ月後に24時間家庭蓄尿を行った. 血圧は3群間に有意差を認めなかった. 尿蛋白排泄量はACE継続群で有意に増力口したが (p<0.05), 他の2群では有意な変化を認めなかった. 尿蛋白増力口率はARB併用群でACE継続群よりも有意に低下した (ACE継続群119±5296, ARB変更群19±2996, ARB併用群9±1796, p<0.05vsACE継続群). 尿蛋白排泄量の変化と血圧の変化の間には有意な相関を認めなかった. クレアチニン・クリアランスはACE継続群で有意に低下したが (前80±8mZ/分6カ月後70±6ml/分p<0.05), 他の2群では有意な変化を認めなかった (ARB変更群前87±11ml/分6カ月後84±7ml/分ns, ARB併用群前86±10ml/分6カ月後80±11ml/分ns). 血清尿酸がACE継続群で有意に上昇したが, 血清力リウムやヘモグロビンはどの群でも有意な変化を認めなかった. ACE阻害薬とARBの併用療法は早期ないし顕性腎症合併2型糖尿病患者の腎症進展抑制に有用であることが示唆された.