著者
鍛冶 美幸
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.66-70, 2006 (Released:2008-01-18)
参考文献数
17
被引用文献数
1

宗教儀式や祭事における巫女の舞,集落での集団の踊りなど,“踊り”は古来より人々の生活のなかにあり,人々の心をつなげ,神と通じる重要な活動であった.近代に入り身体と精神を分析的に区別してとらえる視点が広く定着し,精神生活と“踊り”は徐々に切り離されていく傾向があったが,昨今あらためて身体と精神の不可分性を唱え両者の統合を重視する視点が注目されている.本稿で紹介するダンス/ムーブメント・セラピーは,ダンスや動作を用いて統合体としての心身の機能回復・向上を目指す心理療法である.身体活動を通じた直接的な自己表現や心理的体験,人とのふれあいによってぬくもりを体感する機会が乏しくなっている現代において,“踊り”によってもたらされる交流と,芸術的で象徴的な表現/体験の機会の獲得は再び重要な心理社会的役割を担う可能性をもつのであると考えられる.
著者
鍛冶 美幸
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 = Journal of the Society of Biomechanisms (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.66-70, 2006-05-01
参考文献数
17

宗教儀式や祭事における巫女の舞,集落での集団の踊りなど,"踊り"は古来より人々の生活のなかにあり,人々の心をつなげ,神と通じる重要な活動であった.近代に入り身体と精神を分析的に区別してとらえる視点が広く定着し,精神生活と"踊り"は徐々に切り離されていく傾向があったが,昨今あらためて身体と精神の不可分性を唱え両者の統合を重視する視点が注目されている.本稿で紹介するダンス/ムーブメント・セラピーは,ダンスや動作を用いて統合体としての心身の機能回復・向上を目指す心理療法である.身体活動を通じた直接的な自己表現や心理的体験,人とのふれあいによってぬくもりを体感する機会が乏しくなっている現代において,"踊り"によってもたらされる交流と,芸術的で象徴的な表現/体験の機会の獲得は再び重要な心理社会的役割を担う可能性をもつのであると考えられる.
著者
鍛冶 美幸
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.291-302, 2018-03-30

従来の認知行動療法では、身体症状や問題行動を言語化して説明することを通して、身体は客体化されてきた。また生理的なアプローチや行動の修正に取り組む身体は、問題を解決するための道具として対象化されてきた。しかし第三世代の認知行動療法では、マインドフルネスという仏教思想にもとづく心身観を取り入れ、ありのままの身体を客観的に観察し言語化して認識する方法が用いられた。そこには身体の客体化や対象化から離れた、身心一如にもとづく日本古来の心身観や身体鍛錬との関連が認められる。症状や問題行動の苦悩も含め、環境や自分自身のすべてをつながりのなかに在るものとして受け入れるという仏教思想の「縁起」は、この概念を理解するために意味を持つ。こうした視座に立ち、心と不可分の、自らの生の根源としての身体と向き合い身体技法に取り組むことは、認知行動療法の身体性をめぐる重要なパラダイムといえるのではないだろうか。