著者
長 友昭
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University : Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-21, 2021-03-25

本稿では,日本法と中国法における氏名権・姓名権および親の命名権について,日中両国の現行法の解釈と実務の状況を紹介することによって明らかする。日本における氏名権は,民法にはほとんど規定がなく戸籍法の関連規定があるのみであるが,司法の実務では,命名権の制限の基準について「悪魔」ちゃん事件で見られるように権利濫用禁止の法理が用いられることが多い。しかし,氏名権の性質からすれば,公共の福祉の保護ないし公序良俗違反の基準が適切である場面も多い。中国については,姓名権として1986年の民法通則や婚姻法において認められていたものが,司法・立法のレベルでさらに解釈され,今般の民法典の中で人格権編に規定が置かれることになった。その過程で生じた「北雁雲依」事件や「趙C」事件を検討すると,公序良俗違反の視点や公共の利益の視点で判決が出されており,その成果が中国民法典の規定にも取り入れられたといえる。
著者
長 友昭
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
拓殖大学論集. 政治・経済・法律研究 = The review of Takushoku University:politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.119-141, 2018-03-15

近時話題となっている所有者不明土地問題については,従来から土地の処理の現場に関わる,各種団体や行政機関の問題の把握が主となっていたが,最近は,それらの委員会の専門委員などとして民法,行政法,憲法学者が招かれ,法制的議論が進められるようになってきた。ここでの議論を委員の研究成果や議事録の分析,会議の傍聴により追いかけて,その方向性を把握した。すなわち,今後の新制度の指針となるものとして,農業経営基盤強化促進法における利用権の設定が挙げられることから,この利用権の運用実務とその問題点を検討し,利用権の期間の長期化の可否に関する注意点を明らかにした。さらに民法上の共有,相続および近時の改正点,ならびに不動産登記法や近時改正のあった土地改良法や森林法などの現行法の解釈と法体系上のありようを検討し,今後目指される新制度との具体的な異同および類似性と親和性を明らかにした。