著者
三沢 徳枝 長山 知由理 松田 典子 石山 ゐづ美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.283-289, 2015-02-01 (Released:2017-11-17)

本研究で,家族対話と家族有用感から家族コミュニケーションを捉え,レジリエンス因子の意欲的活動性と内面共有性との関連性を検討した結果,家族コミュニケーションはレジリエンスに影響し,家族対話や家族有用感が高いとレジリエンスも高いことが明らかになった。また中学生は家族との関係性を評価する家族有用感がキャリア意識の向上に関連すると推察された。中学家庭科の学習指導要領では「これからの自分と家族とのかかわりに関心を持ち,家族関係をよりよくする方法を考える」ことが目標とされているが,この学習をすることは家族と向き合い,対話を深めることにつながり,ひいてはさらに社会と向き合えるレジリエンスを高め,生活者としての自立を育むと考察された。
著者
長山 知由理
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

1.序論 最初に循環器系として,神経・血管カップリングを提案したい1).神経・血管カップリングによって,循環器系から神経系を推定できる.心臓の機能を計測する方法として,ECGなどを挙げられる.肺の機能である心拍数についても,成人した健常者では目安値があるため疾病の診断などにおいて活用されている.このような心臓機能や肺機能などの循環器系は,神経系と連動していて神経パルスとECGや心拍数は同期している.神経・血管カップリングはガウス関数であり,ニューロンの活動は正規分布をしている. 神経により動くものには視覚系や聴覚系の他に,神経パルスにより行動になるので歩行機能を良く結び付ける.脊髄には,CPG(Central Pattern Generator)という生体を制御する仕組みがある.このことによって,身体全体のバランスを維持するように歩行することができる. 2.目的 神経・血管カップリングによって正規分布を描いた知覚系・運動系の成果から,脳システムに関する家庭科について検討する.このようなニューロンの活動について利用することで,生徒に情報教育に関する深い知識・理解を与えることを目指したい.   3.方法 中学校の生徒116人に対して,アンケート調査を実施することになった.生徒には,インフォームド・コンセントを実施した.質問項目は,a.衣生活のこと,b.食生活のこと,c.住生活のこと,d.消費生活のこと,e.家族のことに分類した各およそ20問の質問用紙に5段階評価で答えさせることをした.アンケート調査の結果は,各段階の人数をカウントした後にパーセント表示した.   4.結果 オレンジ色には女性が似合うのだと回答した生徒が多く見られて,既にあるジェンダーの研究とほぼ同じような結果が得られた.このことから,本研究で実施したアンケート調査は参考になる程度のサンプル数であったのだと言える.その他にも睡眠を促す色とされている緑色には,夏らしいイメージがあることが統計的に分かった. 生徒は環境,福祉,国際,安全,情報のテーマ中では,『安全』に対する興味・関心が最も高い結果であった.また別の項目では,生活に欠かせないものとして衣・食・住と水道・電気・ガスを挙げる生徒が目立った.このように『情報』や電話とインターネットに関しては,なくても困らない生徒が目立った結果であり,教育的問題を感じられた.   5.考察 水道・電気・ガスなどの住宅設備には生徒も関心を持っているようなので,是非とも情報教育の方針を取り入れたいものだ.水道・電気・ガスを最も利用するキッチンの設計では,関節可動域への配慮を欠かせないだろう2).関節可動域とは身体の動作域のことで,脳システムから推定される神経パルスなどで評価される.人体採寸などの実験・実習は,家庭科教育全般に関する実践の際に取り入れたいものだ. またインターネットによる消費電力の管理などの最新技術によって,日常生活の快適詩・利便性は拡がる.省エネ(節電・節水)は,生活に欠かせないものである水道・電気・ガスについて環境課題と関連させて指導できる可能性があるように思う.家庭科で電話やインターネットについて環境問題の観点から指導することで,アンケート調査の結果を改善していきたい.   6.結論 電話やインターネットについて,生活に不可欠でないのだと感じている生徒が目立ったことを受けて,改善させるための授業計画を練った.神経・血管カップリングの成果から,脳システムを取り入れることでペースメーカーへの理解を深められる.更に電磁波に関する課題を知らせた上で,調査結果から躍度によるキッチン設計について授業実践した.以上のことから,単なる興味を実生活で実現するために,家庭科に情報教育という方向性を与えられた.   文献 1)Buxton RB et al. Neuroimage 2004. Vol. 23, pp. 220 – pp. 233 2)AIST 人体寸法・形状データベース
著者
長山 知由理
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.91-91, 2011

1.はじめに<BR>本稿は,人間・環境科学と家庭科教育を調和させることで,その領域が広義になることに目を向けたものだ.<BR> 専攻だった人間・環境科学では,生理学や生化学,構造力学や意匠学,高分子科学(水・熱・力に対する性質)やコロイド科学などを教わる.研究室に入ってからは,神経科学のようなこともやった.プログラムを書いて,ニューロリハビリに明け暮れる毎日だった.<BR> 大学院では,可塑性を数理モデルで検討していた.ニューロリハビリでの可塑性は,『運動などの外界(環境)が人間にもたらすこと』といった意味合いが強い.一方の保育では,『家族が幼児にもたらすこと』といった役割も多く1),家庭科教育で扱うことで新しい発見があった.<BR><BR>2.目的<BR> 現在の教育現場に求められていることは,活用型学力と呼ばれるものだ.家庭科での活用型学力とは,一言で表現するなら,授業で学んだことから社会をより良くしていける能力のことだ.もう一つの方向性は,e Learningでは得られない,生徒の言語能力の向上である.<BR> では実生活をより良くするとは,どういう意味だろうか.やはり少子高齢化,高度情報化,それから環境教育や防災教育といった,日本が直面している危機に,学校教育により立ち向かっていくことなのではないだろうか.そのような大きな課題に取り組むためには,やはり社会に開かれた人格を育成すべきだ.そのために,コミュニケーションを強調すべきなのだと考えている.ここでは特に,少子高齢化について述べる.<BR><BR>3.方法<BR> 遊ぶことで,幼児は成長していくけれど,どうしてなのか."遊び"は年齢を重ねていくと,徐々にグループでのものとなる.身体・心身の発育だけでなく,生活習慣も身に付けていく.この真似することとは,何か.<BR> 高齢になっても,新しくできるようになることもある.そんなお年寄りもいる地域と,学校や家庭という三角形の中で,その重心のように暮らしていることを伝えたつもりである.それは幼児も,中学生も同じだ.そして,可塑性,ミラー・ニューロンなどについて平易に説明してあげた.<BR><BR>4.結果<BR> 学活の時間に一担当クラスに行ってみると,『理科っぽいことも知っていて…』と言われて嬉しかった.生徒は一生懸命であるにも関わらず,中学生には難しい局面もあり,そこは改善していきたいと思っている.幼児の成長を画像化する技術(NIRS:近赤外分光法)があることは,脳波を計測したこともある生徒に対して,理解させるのは容易だった.しかし数理モデル2)まで理解させようとすると,急に難易度は高まった.少し工夫して次時に,人工知能(PCゲームでの対戦など)を思い出させて説明すると,生徒の理解度は高まった.<BR><BR>5.まとめ<BR> 保育に関わらず,何だかんだで,まずは生徒に関心を払ってもらうことから始まる.そして幼児のためのお菓子やオモチャ作りなど,実際に手を動かす"ものづくり"を通して,知識もモノになっていくのだろう.一緒に考える時間を持ちながら,将来の日本や世界の在り方をイメージさせられたら望ましい.<BR>