- 著者
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長山 知由理
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.54, pp.91-91, 2011
1.はじめに<BR>本稿は,人間・環境科学と家庭科教育を調和させることで,その領域が広義になることに目を向けたものだ.<BR> 専攻だった人間・環境科学では,生理学や生化学,構造力学や意匠学,高分子科学(水・熱・力に対する性質)やコロイド科学などを教わる.研究室に入ってからは,神経科学のようなこともやった.プログラムを書いて,ニューロリハビリに明け暮れる毎日だった.<BR> 大学院では,可塑性を数理モデルで検討していた.ニューロリハビリでの可塑性は,『運動などの外界(環境)が人間にもたらすこと』といった意味合いが強い.一方の保育では,『家族が幼児にもたらすこと』といった役割も多く1),家庭科教育で扱うことで新しい発見があった.<BR><BR>2.目的<BR> 現在の教育現場に求められていることは,活用型学力と呼ばれるものだ.家庭科での活用型学力とは,一言で表現するなら,授業で学んだことから社会をより良くしていける能力のことだ.もう一つの方向性は,e Learningでは得られない,生徒の言語能力の向上である.<BR> では実生活をより良くするとは,どういう意味だろうか.やはり少子高齢化,高度情報化,それから環境教育や防災教育といった,日本が直面している危機に,学校教育により立ち向かっていくことなのではないだろうか.そのような大きな課題に取り組むためには,やはり社会に開かれた人格を育成すべきだ.そのために,コミュニケーションを強調すべきなのだと考えている.ここでは特に,少子高齢化について述べる.<BR><BR>3.方法<BR> 遊ぶことで,幼児は成長していくけれど,どうしてなのか."遊び"は年齢を重ねていくと,徐々にグループでのものとなる.身体・心身の発育だけでなく,生活習慣も身に付けていく.この真似することとは,何か.<BR> 高齢になっても,新しくできるようになることもある.そんなお年寄りもいる地域と,学校や家庭という三角形の中で,その重心のように暮らしていることを伝えたつもりである.それは幼児も,中学生も同じだ.そして,可塑性,ミラー・ニューロンなどについて平易に説明してあげた.<BR><BR>4.結果<BR> 学活の時間に一担当クラスに行ってみると,『理科っぽいことも知っていて…』と言われて嬉しかった.生徒は一生懸命であるにも関わらず,中学生には難しい局面もあり,そこは改善していきたいと思っている.幼児の成長を画像化する技術(NIRS:近赤外分光法)があることは,脳波を計測したこともある生徒に対して,理解させるのは容易だった.しかし数理モデル2)まで理解させようとすると,急に難易度は高まった.少し工夫して次時に,人工知能(PCゲームでの対戦など)を思い出させて説明すると,生徒の理解度は高まった.<BR><BR>5.まとめ<BR> 保育に関わらず,何だかんだで,まずは生徒に関心を払ってもらうことから始まる.そして幼児のためのお菓子やオモチャ作りなど,実際に手を動かす"ものづくり"を通して,知識もモノになっていくのだろう.一緒に考える時間を持ちながら,将来の日本や世界の在り方をイメージさせられたら望ましい.<BR>