著者
長岡 慎介
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究センター
雑誌
イスラーム世界研究 : Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies (ISSN:18818323)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.243-275, 2014-03-14

The Malaysian practice of Islamic finance has greatly contributed to the rapid growth of the industry in the first decade of the twenty-first century and so the term ‘Malaysia' is widely recognized as symbolizing the development of Islamic finance. However, this term is also mentioned negatively in criticisms of the current practices. The critics, known as the "Mudaraba Consensus School", who aspire to the ideals of Islamic economics and finance, have used the term of "Malaysia" to allegedly symbolize the prevalence of "bad" practices in the industry. This study focuses on the development of the Islamic capital market in Malaysia and explains how Malaysia has responded to the criticism from the "Mudaraba Consensus School". From the analysis, it can be observed that the Malaysian Islamic capital market has positively addressed this criticism by involving the consensus. Specifically, it has initiated the following three measures: 1) "equitization" of debt-based financial products as a direct response, 2) diversification of asset classes in the Islamic capital market, and 3) visualization of Sharia-compliant corporate assets which have a great potential to universalize the consensus. Such challenges by the Malaysian Islamic capital market pave the way for bridging the dichotomy between theory and practice in Islamic economics and finance. They also provide an alternative development blueprint for future Islamic economics and finance, which is different from that proposed by what the author refers to as the "New Horizon‘s' in Islamic Economics and Finance.
著者
長岡 慎介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.26-31, 2016-01-01 (Released:2016-04-01)

中東アラブ世界は,イスラーム文明がもたらした「読み(誦み)」「書く」伝統が連綿と受け継がれてきた地域である。その伝統は,21世紀でも依然として健在である。他方,ヨーロッパ近代が生みだしたテクノロジーによって,その伝統が新しいメディアによって再構築され,以前には考えられなかった形で伝播していく動きも見られ始めている。本稿は,そのような新旧の伝統と革新が複雑に入り交じる現代中東アラブ世界の「読み(誦み)」「書く」伝統を支える知的インフラである出版メディア(書籍,インターネット)の一側面を描写する。
著者
長岡 慎介
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、現代イスラーム金融に関する以下の2点について研究を行った。(1)現代イスラーム金融の地域的差異と多様性についての研究本年度は昨年度に引き続き、現代イスラーム金融理論およびそれにもとづいて行われている現代イスラーム金融の実践がどのような地域的差異を持っているかについての研究を行った。本年度の研究では、検討の対象とする金融商品およびタイムスパンを広げた。金融商品については、金融機関が顧客に提供する消費貸借手法および金融機関自らが取り扱うリクイディティ・マネジメントのための手法に特に注目した。また、タイムスパンについては、昨年度までは1990年代に注目していたが、本年度の研究では、それ以前および以後の理論的展開とそれにもとづいた実践の状況を検討対象に加えた。検討の結果、現代イスラーム金融の地域的差異と呼ばれる状況は、1990年代に特有の現象であることが明らかとなった。(2)現代イスラーム金融の理論的特徴からみたその歴史的意義についての検討近年の現代イスラーム金融における研究では、現代イスラーム金融の理論的特徴を「Asset Backed Finance」という形で論じているものが多くみられる。しかし、この特徴は、デット系の金融手法にのみ通用するものであるため、本年度の研究では、昨年度までの理論研究の成果をまとめながら、エクイティ系の金融手法にも通用し、さらに、経済学および経済理論の枠組みの中で広く理解できるような特徴を明らかにすることをめざした。その結果、現代イスラーム金融の理論的特徴は、「実物経済に埋め込まれた・埋め込むことを志向した金融」であることが明らかとなった。そして、この特徴は、特に経済システムの安定性を考える際に、いわゆる資本主義システムと大きな差異が現れることが明らかとなった。