著者
河津 宏美 長島 大介 大野 澄雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1811-1819, 2006-08-01
参考文献数
20
被引用文献数
1

複数の種類及び程度の感情情報を含む音声を対象として,感情が表現された発話の感情の程度と音声の基本周波数パターンとの関係を,その生成過程モデルに基づいて分析した.その結果をもとに,感情制御規則の導出を行った.基底周波数は感情によらず,感情の程度が大きくなるに従って,増加傾向で変化した.フレーズ指令の大きさは,感情によって異なる傾向が見られ,喜びでは,感情の程度の影響を受けずほぼ一定,悲しみでは,感情の程度が大きくなるに従って,減少の変化傾向があった.また,アクセント指令の大きさは感情や文中に現れる位置によって異なる傾向が見られることが分かった.ここで導出した規則を適用した合成音声を作成し,聴取実験により感情の伝達性を評価した.
著者
眞鍋 克博 長島 大介 粕山 達也
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.756-762, 2018-08-15

はじめに 一部の子供には日常生活や学校生活において,無器用さやぎこちなさ,あるいは落ち着きがなくじっとしていられないなどが原因となり,さまざまな活動や参加が阻害されていることが散見される.学校教育現場において,そうした子供たちへは主に教育職員が対応しているものの,対応についての知識や経験が十分ではない場合が多く,学校での教育のなかで大きな課題となっている1). 現在,これらの阻害要因は発達性協調運動障害(developmental coodination disorder:DCD)として1つの概念疾患と捉えられるようになった.DCDでの障害の概念について,岡2)は歴史的に考察し,これをminimal brain dysfunction(MBD)やclumsiness,clumsy child syndrome,disorder of attention and motor perceptuomotor dysfunction,motor learning difficicultyと同様の意義としてこれまで使用されていることを指摘した.DCDはその初期において,療育や教育の分野で注目され,その後,医学からのアプローチとして捉えられるようになった経緯を明らかにしている.さらにDCDの症状は,正常と異常の境界線を引くのが実際上不可能であることから,日常生活上での障害の状態を前提として,それが起因するものとしてDCDがあることを述べている.また,DCDは米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM-5)において,神経発達症群/神経発達障害群のなかの運動症群/運動障害群の基準の1つに位置づけられている3).さらに,疾病および関連保健問題の国際統計分類(International Classification of Diseases:ICD-10)では,(F80-F89)心理的発達の障害における(F82)運動機能の特異的発達障害・協調運動障害に分類されている4). 本稿では,まず発達性協調運動障害について,診断基準を通してその特徴について述べ,臨床上の特徴と理学療法との関連について述べる.次にDCDとの合併が多くみられる自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD),学習障害(learning disabilities:LD),注意欠陥多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder:ADHD)の3つの障害の概要と理学療法評価,さらに理学療法の実際について述べることとする.