著者
長嶋 秀世 土方 洋一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.3, pp.311-320, 1991-03-25

本論文では,人間の平均的主観をシステムに導入し,多種類の商標図形を対象とした類似商標の検索を行う方法を提案する.類似図形の検索は,文字認識などとは異なり,画像間の物理的な類似性だけでは不十分で,人間の主観を考慮することが重要である.ここでは,多数の被験者を対象とした商標図形に関するアンケートを実施し,その結果を各特徴量の重み係数に反映させ,人間の主観に適合した特徴空間を構成する方法について述べる.これは,図形間の物理的な特徴量による類似性とアンケートから得られる主観的類似性とを合理的に対応させ,図形に対する人間の感覚を重み係数として定量化するものである.本手法の有効性を検証するため,本手法を用いた類似商標の検索実験を行い,重みなし特徴空間との比較検討を行う.実験結果によると,本手法の検索は,アンケートとの一致度が高く,アンケートで最も支持のあった商標図形を第8位までにすべて出力し,また,アンケートに使用していない商標を加えた1,000個の商標集合に対する検索結果も,アンケートに準じるものであった.このことから,人間の主観に対応した検索結果を得ることができ,本手法の有効性を確認した.