著者
土方 洋一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.23-33, 1982

The basic form of early waka rests on a correspondence between the representation of psychological states and that of material objects. The developnlent of lyric poetry may be seen as the process whereby the depiction of objects was suppressed and the psychological came to stand on its own. The independence of the psychological was not won in the course of waka history in isolation, but came into being through a dialectical relationship with narrative. As prosenarrative took over the function of representing the material world, poetry, standing in metaphoric relation to the prose, was able to devote itself to the expression of psychological states. The rise of lyric poetry may be seen to depend fundamentally on the act of writting.
著者
土方 洋一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.61-73, 1980

Onna San-no-miya's conception is not only an important affair in the second part of The Tale of Genji but also a latent factor for the third part in which kaoru is a hero. After she committed adultery with Kashiwagi, her conception as a result of the night had something to do with his dream of a cat, and miraculously Kaoru was born. It was said that such mysterious rendezvous as in dream brought a miracle of conception for one night. Thee heroines of adultries, Fujitsubo, Onna-San-no-miya and Ukifune composed poems in each of which the word "dream" was included. The purpose of this study is to follow the process from adultry to conception with the clue of the word "dream".
著者
土方 洋一
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.30-37, 2007

伊勢の斎宮寮において在原業平と斎宮とが密通したという伝承は、もともと創作された話であり、フィクションであることを前提として記憶されていたと考えられるが、時代が下ると、一部においてこの出来事が事実として取りなされ、二人の間に産まれた男子が高階氏の嗣子となったという伝承を派生させることになる。高階氏の血筋に関わるこの伝承は、従来藤原行成の日記『権記』に初出すると考えられていたが、『権記』の問題の記事は後時に加筆されたものであり、この風聞自体はおそらく白河院政期頃に発生したものではないかと考える。この高階氏にまつわる伝承は、一つの伝承から新たな風聞が派生することの例として、また成立の事情と年代が異なる伝承が、文献の上では平準化され、その地層の違いが見えにくくなる例として、風聞の発生とその伝承の過程を考える上で興味深い問題を提示している。
著者
長嶋 秀世 土方 洋一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.3, pp.311-320, 1991-03-25

本論文では,人間の平均的主観をシステムに導入し,多種類の商標図形を対象とした類似商標の検索を行う方法を提案する.類似図形の検索は,文字認識などとは異なり,画像間の物理的な類似性だけでは不十分で,人間の主観を考慮することが重要である.ここでは,多数の被験者を対象とした商標図形に関するアンケートを実施し,その結果を各特徴量の重み係数に反映させ,人間の主観に適合した特徴空間を構成する方法について述べる.これは,図形間の物理的な特徴量による類似性とアンケートから得られる主観的類似性とを合理的に対応させ,図形に対する人間の感覚を重み係数として定量化するものである.本手法の有効性を検証するため,本手法を用いた類似商標の検索実験を行い,重みなし特徴空間との比較検討を行う.実験結果によると,本手法の検索は,アンケートとの一致度が高く,アンケートで最も支持のあった商標図形を第8位までにすべて出力し,また,アンケートに使用していない商標を加えた1,000個の商標集合に対する検索結果も,アンケートに準じるものであった.このことから,人間の主観に対応した検索結果を得ることができ,本手法の有効性を確認した.