著者
三條場 千寿 Yusuf ÖZBEL 麻田 正仁 長田 康孝 Sambuu GANTUYA 松本 芳嗣
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.71-77, 2011-03-15 (Released:2011-10-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

唯一の日本産サシチョウバエとして記載されたPhlebotomus squamirostris Newstead, 1923(やまとさしちょうばえ,1934, 山田信一郎; にっぽんさしちょうばえ,1954, 日本昆虫図鑑改訂版)は,現在の分類ではSergentomyia squamirostris (Newstead)となっている.1950年代以降,国内でのサシチョウバエ採集の報告はない.今回,秋田県,鳥取県で初めてサシチョウバエが採集されたので報告する.また,採集したサシチョウバエの詳細な観察を行い,日本で採集されたS. squamirostris では初めてhead, genital pump, paramera, aedeagus, surstyle, およびfemale antennaについて図示した.
著者
三條場 千寿 Ozbel Yusuf 麻田 正仁 Sumbuu Gantuya 長田 康孝 宮城 一郎 松本 芳嗣
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第62回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2010 (Released:2010-10-12)

サシチョウバエは,パパタシ熱,バルトネラ症,リーシュマニア症などの人獣共通感染症を媒介する昆虫である.我が国における唯一のサシチョウバエとしてPhlebotomus squamirostris Newstead,1923が記載されている.1956年に青森県で9頭のサシチョウバエ採集が記録されて以来(緒方,1958),約50年間国内での報告はない.現在の我が国におけるサシチョウバエの棲息状況を明らかにするため,2008年秋田県,群馬県,鳥取県,沖縄県においてオイルトラップおよびCDCライトトラップを用いサシチョウバエの採集を試みた.その結果,秋田県で27頭(雄15頭,雌12頭),群馬県で491頭(雄369頭,雌122頭),鳥取県で3頭(雄1頭、雌2頭),沖縄県で192頭(雄157頭,雌35頭)を採集した.群馬県で採集したサシチョウバエの詳細な観察を行ったところ,形態学的特徴は1923年に記載されたP.squamirostrisと同じであった.さらに現在のサシチョウバエ同定に用いられているkeyによれば,Sergentomyia属サシチョウバエの特徴を有することが明らかになった.このため日本産サシチョウバエPhlebotomus squamirostrisをSergentomyia squamirostrisと再記載すべきである.国際化による地球規模でのヒト,動物,物資の移動,地球温暖化などの要因により,サシチョウバエの棲息域が拡大し,リーシュマニア症の流行地も拡大しつつある.我が国におけるサシチョウバエの棲息およびサシチョウバエが媒介する諸感染症に対する警戒を行う必要があると考える.