- 著者
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長谷川 就一
若松 伸司
田邊 潔
- 出版者
- 公益社団法人大気環境学会
- 雑誌
- 大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.5, pp.181-192, 2005-09-10
- 被引用文献数
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従来から用いられてきた熱分離法による粒子状炭素成分分析において, 有機炭素(OC)の熱分解による元素状炭素(EC)の過大評価が問題となっていた。しかし, 最近, 分析中にフィルター試料の反射光や透過光を測定することによってOCの熱分解補正をおこなう熱分離・光学補正法が広まりつつある。本研究では, 熱分離・光学補正法による分析値が, 熱分離法による分析値とどの程度異なるかを調べるため, 冬季および夏季に, 都市部と郊外において, PM_<2.5>やPM_<10>など数種類の粒径範囲について採取したサンプルを各々の方法で分析し比較した。OCとECの熱分離条件は, いずれの方法においてもHe雰囲気下550℃とした。総炭素(TC)濃度については2つの方法において差は見られなかったが, ECおよびOC濃度は分析法によって明確に違いが見られた。EC濃度は, 熱分離法よりも熱分離・光学補正法の方が小さく, 熱分離法に対して, 反射光によって熱分解補正した場合の回帰直線の傾きは0.70, 透過光によって補正した場合は0.34であった。また, 分析法の違いによる影響だけでなく, 季節の違い, 採取場所による違い, 粒径範囲の違いによる分析値への影響についても検討したが, 分析法の違いによる影響が最も大きかった。また, 一般的に試料のサンプリングに広く用いられているハイボリウムサンプラー(HVS)とローボリウムサンプラー(LVS)の両方を用いてSPM(10μm 100%カット)を採取し, サンプラーの違いによる質量濃度や炭素成分の分析値への影響についても検討したところ, LVSに比べてHVSの質量濃度は15%程度, EC濃度は20%程度, OC濃度は40%程度小さくなっていた。