著者
長谷部 比呂美 池田 裕恵 日比 曉美 大西 頼子
出版者
淑徳大学短期大学部
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.31-48, 2015-02-25

近年の初等教育界の大きな問題として「小1プロブレム」が取り上げられている。新入学児に対して経験豊かな教師でさえ指導に窮している現象であり、こうした問題への対処として幼保小連携、環境移行、交流などの幼保小接続や、基本的生活習慣、ソーシャル・スキルの形成等で移行をスムーズにするという視点から、現在多くの方策が模索されている。しかし、その背後には単に小学校という場への慣れという問題では解決できない別の複数の要因が関わっていることが考えられる。近年の社会の急激な変化に伴い必然的に子どもを取り巻く環境自体も大きく変化し、子どもの育ちに直接的影響を及ぼしている。従って滑らかな移行といった対症療法では背後に潜む問題自体を解決することはできないであろうし、また環境移行以外の問題に対処することも困難であろう。本研究では、現在の日本社会で生じている子どもたちの問題を幼児期に遡って原因を探り、解決のためには幼児期に何が必要であるのかを解明する。首都圏の保育士および幼稚園教諭を対象に、近年の幼児や保護者に見られるようになった現象について質問紙調査を行い、今回はその第一報として最近の幼児の特徴と傾向を探った。その結果、「目的的調整力の低位」、「内発的活力の低位」、「行動・防衛体力の低位」、「生命維持力の低位」の4因子が抽出され、すでに幼児期において、多くの子どもに生来備わっているはずの健やかな育ちを求める機能が十分に育まれず心身共に脆弱性を抱えている傾向が明らかになった。