著者
森田 勝 門松 香一 保阪 善昭 藤村 大樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.203-210, 2010-06-28 (Released:2011-05-27)
参考文献数
23
被引用文献数
2

先天性外表疾患である口唇口蓋裂は,比較的発生頻度が高く,当教室では現在までに複数の疫学的研究を行ってきた.本疾患の発生には,遺伝および胎児期の環境など複数の要因が関連しているとされているが,その要因は未だ特定されていない.本研究は1989年1月より2005年12月までに昭和大学病院形成外科を未治療で受診した1273名の口唇口蓋裂患者を対象とし,本疾患の発生要因として考えられる(1)母親の出産時年齢,(2)両親の喫煙習慣,(3)母親の飲酒習慣を調査した.そして,調査によって得られたデータと当教室の過去の報告,厚生労働省の統計と比較し検討を行った.解析方法として,F分布による検定とχ2検定を用いた.その結果,母親の出産時年齢,両親の喫煙習慣は本疾患の発生に関連があることが示唆されたが,飲酒習慣については関連性を認めなかった.
著者
上田 拓文 門松 香一 森田 勝 本田 衣麗 保阪 善昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.194-199, 2006-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

口唇・口蓋裂は先天性外表疾患として比較的頻度の高い疾患である.本研究は平成17年11月から過去約13年間に, 昭和大学付属病院形成外科を未治療で訪れた1323例を対象に, 裂型・被裂側・被裂程度の分布および性別の関連について調査検討を行った.分類方法は裂型を口唇裂, 口唇口蓋裂, 口蓋裂に, さらに口唇裂および口唇口蓋裂は右側, 左側, 両側に分け, 口蓋裂は軟口蓋裂硬軟口蓋裂, 粘膜下口蓋裂に分けた.なお解析方法としてはクロス表の検定にはx2検定を用いた.その結果は以下のとおりである.1.口唇裂451例, 口唇口蓋裂450例, 口蓋裂単独422例であり裂型は一様に分布していた.2.口唇裂男性253例, 女性198例, 口唇口蓋裂男性285例, 女性165例, 口蓋裂単独男性163例, 女性259例であり口唇裂, 口唇口蓋裂は男性に多く口蓋裂は女性に多かった.3.口唇裂は左側: 右側: 両側≒6: 3: 1であった.4.口唇口蓋裂は左側: 右側: 両側≒5: 2: 3であった.5.口唇裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒1: 3であった.6.口唇口蓋裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒3: 1であった.
著者
佐藤 伸弘 門松 香一 保阪 善昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.481-489, 2009-12-28 (Released:2011-05-20)
参考文献数
18

今回われわれは顔面骨骨折の中でも眼窩下神経に障害を及ぼす可能性が大きく,全顔面骨骨折中20~40%と比較的発生率の高い頬骨骨折を研究対象とし,過去16年間で当院を受診した頬骨骨折患者で神経障害残存をきたした症例とその骨折のタイプについて研究した.結果に関しては骨片の転位により分類されたKnight & North分類を用いた.頻度,男女比,左右差,手術比率をそれぞれ調査し,過去の当科疫学統計報告と比較して同様の傾向であった.新たな知見として骨折線の眼窩下神経孔通過の有無により分類(通過群:A群,非通過群:B群)を行い,いずれの骨折も有意差なく存在することが判明した.さらに神経障害の出現はA群に有意に多く,その中でも頬骨回旋転位群により多く出現していることが判明した.また,神経障害改善率はA・B群間では有意差を認めず,それぞれ転位を伴わない骨折の場合は高率であったが,骨片が転位するか粉砕するような場合,改善率が低下することが判明した.加えて,神経障害の出現に関しB群では眼窩下神経孔より近位での損傷が予想され,今後神経障害の改善率を向上させるため,精査や手術操作に関しさらなる研究が必要と思われた.