著者
上田 拓文 門松 香一 森田 勝 本田 衣麗 保阪 善昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.194-199, 2006-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

口唇・口蓋裂は先天性外表疾患として比較的頻度の高い疾患である.本研究は平成17年11月から過去約13年間に, 昭和大学付属病院形成外科を未治療で訪れた1323例を対象に, 裂型・被裂側・被裂程度の分布および性別の関連について調査検討を行った.分類方法は裂型を口唇裂, 口唇口蓋裂, 口蓋裂に, さらに口唇裂および口唇口蓋裂は右側, 左側, 両側に分け, 口蓋裂は軟口蓋裂硬軟口蓋裂, 粘膜下口蓋裂に分けた.なお解析方法としてはクロス表の検定にはx2検定を用いた.その結果は以下のとおりである.1.口唇裂451例, 口唇口蓋裂450例, 口蓋裂単独422例であり裂型は一様に分布していた.2.口唇裂男性253例, 女性198例, 口唇口蓋裂男性285例, 女性165例, 口蓋裂単独男性163例, 女性259例であり口唇裂, 口唇口蓋裂は男性に多く口蓋裂は女性に多かった.3.口唇裂は左側: 右側: 両側≒6: 3: 1であった.4.口唇口蓋裂は左側: 右側: 両側≒5: 2: 3であった.5.口唇裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒1: 3であった.6.口唇口蓋裂の被裂程度は完全: 不全 (痕跡を含む) ≒3: 1であった.
著者
野田 弘二郎 保阪 善昭 村松 英之 上田 拓文
出版者
The Showa University Society
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.325-336, 2005
被引用文献数
4

顔面骨骨折の診断と治療方針決定に役立てるため, 過去10年間に当院を受診した症例について統計的検討を行った.1994年度より2003年度までに当院を受診した顔面骨骨折1415症例を対象とした.患者数は増加傾向にあり形成外科全患者中の割合も増大していた.平均で7割が救急外来を初診していた.性差は3: 1, 年齢平均は33.3歳であり受傷原因は男性では暴力, スポーツが, 女性では転倒・転落, 交通外傷が多かった.10歳代ではスポーツと暴力が, 高年齢層では転倒・転落が多かった.部位別では鼻骨, 頬骨, 下顎骨, 眼窩, 上顎骨の順に多かった.鼻骨骨折は若年層に多く, 高年齢層では頬骨骨折, 下顎骨骨折が多かった.下顎骨骨折では関節突起, 頤, 下顎角, 体, 筋突起, 歯槽突起の順で多かった.複数骨折での組み合わせは片側関節突起と頤が最も多かった.手術を行った症例が56.3%, 保存的治療は43.7%で, 手術は鼻骨骨折, 眼窩骨折, 下顎骨骨折の約半数で, 頬骨骨折, 上顎骨骨折ではより多く行われていた.症例数は単一施設としては本邦の報告中最多であった.患者数の増加傾向は顔面骨骨折治療の重要度が高まりを示している.受診経路は7割が救急外来でありプライマリケアの重要性が裏付けられた.年齢, 性別は他の報告と概ね一致していた.受傷原因は暴力が多く当院の立地等に影響されていると考えられた.受傷原因の性別, 年代別の差異は社会生活における行動傾向, 社会活動の活発さ, 反射的回避能力, 骨強度の年齢による変化等に起因すると考えられた.骨折部位別頻度は他の報告と同様の結果であったが, 当院の症例では鼻骨骨折の占める割合が高く, 上顎骨骨折も49例の受診があり軽傷から重症例まで幅広く扱う当院の性質を表しているものと考えられた.若年層で鼻骨骨折が特に多く, 中年以降では頬骨骨折の割合が高いが, 若年層ではスポーツや暴力による比較的軽傷の症例が, 高年齢層では転倒・転落など不慮の事故に関わる比較的重症な症例が多い傾向があると言い換えることも出来る.下顎骨骨折の部位別骨折頻度は他の報告と概ね一致していた.下顎骨骨折における複数骨折は, 関節突起や頤との組み合わせが多く, これらの骨折では高率に複数骨折があり注意を要する.全症例の56.3%が平均受傷後8日で手術されており再手術を要した症例は0.7%に過ぎなかった.