- 著者
-
貝沼 やす子
関 千恵子
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.11, pp.690-697, 1983-11-20 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 6
- 被引用文献数
-
3
1) 炊飯条件としての沸騰に至るまでの加熱速度の相違は, それぞれの炊飯過程や飯の性状に特微をもたらした.2) 加熱速度の速い場合 (S) は加熱に伴う米粒の吸水は遅れるが, 沸騰状態の継続時間は長くなり, この間におこる米粒の変化が著しい.しかし, 急激的に水分の吸収や糊化が行われるために, 均質的な変化は期待できず, かたくて粘りの少ない飯になる.3) 加熱速度が遅い場合 (L) は沸騰に至るまでの時間が長くかかり, 沸騰までにほとんどの水が吸収されてしまうのでいわゆる沸騰期を作る水はなくなる.またゆるやかな温度上昇にあわせて溶出した多量の固形分が米粒の表層に付着しながら徐々に糊化が進むため, 光沢がなく, やわらかい飯になる。4) 沸騰に至るまでの加熱時間が, 約10分の場合 (M) は, 1), 2) の中間的な状態を保ち, 加熱に伴う適量の吸水, 沸騰期の適度な存在により米粒の変化が好ましい状態に進む.5) その他, α化率, 飯の色は, S, M, Lにほとんど差がなく, また, 官能的にも大きな違いはないが, 使用ガス量が少なくてすむことなどを含め, 総合的には, 沸騰までに約10分を設定したMの加熱速度が最も好ましい.