著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.198-205, 1990-05-20
被引用文献数
9

夏みかん及び甘夏みかんの果汁を加水量の20〜60%加え、直接炊き込む方法により炊飯を行った。結果を以下に要約する。1)加熱による色、風味への悪影響はなく、炊き上がった飯はうすいみかん色と適度な酸味を呈し、加える果汁割合を考慮すれば官能的に良好な飯となった。夏みかんでは加水量の40%、甘夏みかんでは60%の添加割合が好ましいものであった。2)果汁を加えた飯は、粘りが強くやわらかい飯となった。また、つやの測定値が高く、顕微鏡観察では飯粒周辺部に濃厚に見える付着物がみられ、つやや粘りとの関係が示唆された。3)飯粒中の酸の浸透状態は果汁割合の多い飯ほど、飯粒表面付近の酸量が多く、この酸の働きにより表面組織の状態にも違いが生じ、テクスチャーなどの差として測定されたと思われる。以上、果汁添加による飯の性状の変化が観察され、食味上、好ましい果汁の添加割合が明らかになった。また、本法による炊飯は簡便であり、果汁を多く使用できるため、炊き上がった飯のみかん色を生かした調理が期待できる。付着性の増加などの特徴を粘りの少ない品種の米や古米に生かすことができればこれらの米の利用価値を高めることも可能であると考えられるため、今後さらに検討を進める予定である。
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.775-783, 2009-09-15 (Released:2012-06-21)
参考文献数
44
被引用文献数
4
著者
貝沼 やす子 福田 靖子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.139-147, 2002-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要約: 1.竹炭を利用して炊飯した米飯は低温保存後のかたさの増加が抑制された。特に80%圧縮で顕著であり,米飯粒内部の糊化が促進されているものと考えられた。竹炭浸出液を使っての炊飯に効果が期待できた。2.竹炭を長時間水に浸漬して得られた竹炭浸出液を使って炊飯した米飯は,白飯よりやわらかく,おいしいと評価された。3.竹炭浸出液のpHは高くなり,浸出条件によってはpH10近くにもなる。カリウムを多く含むのが特徴であり,導電率とカリウム含有量に正の相関関係がみられた。また,微量ではあるが,強いアルカリ性を示す成分の溶出がみられた。これらの傾向は800℃ の竹炭で再現性が高かった。4.竹炭浸出液は加熱することによりpHは高くなり,浸出条件による差はなくなった。また,米を入れて浸漬,加熱することにより,pHは8前後と低くなったが,水のみでの炊飯よりは高いpHであった。5.竹炭を利用した炊飯液には全糖,タンパク質が有意に多く溶出していた。これらが液の濁度を高めているものと考えられ,特に全糖量と濁度には正の相関関係がみられた。竹炭利用による炊飯水の高いpHがデンプンの分解を促進し,老化の抑制に効果的に働いているものと推察した。
著者
貝沼 やす子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.194-201, 1977-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5

1) 味覚テストでは, 強火加熱による飯が, 弱火加熱による飯より好まれた.また, 弱火加熱による飯の食味は加熱時間の延長により改善され得る.2) 強火加熱の場合が, 弱火加熱より沸騰直後の数分間はわずかに高い温度を示し, このことが炊き上がった飯の食味および性状に与える影響を無視することはできない.3) 強火加熱の方が, 弱火加熱の場合より飯粒中に含まれるいわゆる遊離水が少なく, 赤外線水分計による脱水速度は小さくなり, デンプンの糊化に関与する水分が多いことを示した.一方, 物理的測定では強火加熱による飯はかたいと判定されたが, 嗜好的には好ましいかたさであり, 飯の物理的性状が味覚に及ぼす影響は大きい.4) グルコアミラーゼにより消化されて溶出する糖は, わずかに強火加熱試料に多く測定された.火力の強弱が米デンプンの糊化の程度に多少関係していると思われる.5) 炊き上がった飯の表面は, 強火加熱試料に蒸気が通りぬけた穴が多くみられ, 沸騰状態のはげしさを物語る様相を呈している.
著者
新城 知美 貝沼 やす子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.69, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 食物繊維や大豆たんぱく質、イソフラボンを含むおからをそのまま添加した食パンは比容積の低下などが生じ品質が低下したが、おからを焙煎してパン生地に添加するとパンの性状改善効果が認められた。本研究では焙煎処理によるおからの変化について検討し、パンの性状改善との関係を明らかにすることを目的とした。また、パン生地調整に最適な加水量および添加時期の検討を行い、更なるおから添加食パンの性状改善を目指した。【方法】 おからの乾燥は30℃で10時間、焙煎は180℃にて吸水率が最低値を示す時間焙煎し、重量、色、食物繊維量、吸水率を測定し、DSC分析、たんぱく質定量、Native-PAGE、SDS-PAGEを行った。食パンの作製はホームベーカリーを使用し、パン生地についてはファリノグラフ試験及び走査型電子顕微鏡観察を行った。パンについては、体積測定、破断強度測定、官能検査、断面の走査型電子顕微鏡観察を行った。 【結果】 おからを焙煎すると食物繊維量はやや減少し、たんぱく質の低分子化が認められ、吸水率が低下した。焙煎処理おからを添加すると、パン生地中にグルテン形成の改善が認められ、乾燥おから添加食パンに比べ膨化し、食味も改善された。コントロール生地と同じ硬粘度となる加水率(最適加水率)で焼成したパンでは、全ての測定項目においてコントロールの性状に近づく変化を示し、官能検査でも高い評価を受けた。この加水率はおからの吸水率を用いた簡単な関係式から算出することができ、市販の多くの生おからを利用した焙煎おから添加食パンに有効であった。おから添加時期を変えた製法では焙煎おから添加パンの物性がよりコントロールに近い結果となった。
著者
貝沼 やす子 江間 章子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.364-371, 1997-11-20
参考文献数
9
被引用文献数
8

1)料理を作るのを嫌いと答えた人は少なかったが,約半数の人が献立を考えるのは面倒と答えていた。2)献立の決定は,専業主婦では朝,在庫の材料を確認してが多く,次いで夕方買物時に店先でとなっており,就業主婦ではこの順位が逆転した。いずれの場合も比較的無計画に献立が立てられていることがわかった。3)気軽にできる料理の条件は作り方をよく知っていることであり,次いで食べる人の好みにあっているであったが,比較的よく作る献立ではこの順位が逆転した。4)夕食献立は主薬をまず決め,材料を変えた他の材料を組み合わせていくという回答が多かった。また,主菜として利用しやすい材料は肉・魚であり,就業主婦では肉の利用が多かった。5)Aグループには調理上不可欠であるとともに,基本的,極日常的な器具,材料,操作が分類され,面倒に思わず気軽に使い,行われていた。C,Dグループには面倒に思う,できたら使いたくない,行いたくない,器具,材料,操作が分類された。これらには,特殊な機能や用途がある,使い方や後始末が面倒である,日常的でない,などの要因が考えられた。Bグループには,あれば便利な器具,少し複雑な操作,比較的よく使うと思われる材料が分類され,少し面倒ではあるが,調理方法や調味方法に広がりや変化を付与するものであった。
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.88-94, 2003-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
37
被引用文献数
1
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.29-36, 1996-01-15
被引用文献数
9

We studied for rice gruel mixtures containing several different ratios of rice (3 bu kayu, 5 bu kayu, 7bu kayu, Zenkayu) with regard to their physical properties and digestibility, and we also conducted sensory tests. We compared two brands, i. e. Thai rice and Japanese "Koshihikari." The following is a summary of the results: 1) After cooking, Thai rice grains gained more weight than "Koshihikari" and had a higher degree of swelling. Rice gruel with a low ratio of rice had a bigger weight increase and a higher degree of swelling. All of the rice gruels absorbed some degree of water and swelled when left for some period of time after cooking. 2) The hardness and adhesiveness of cooked rice were higher in the rice gruel with a high ratio of rice. A remarkable difference between Thai rice and "Koshihikari" was seen in adhesiveness. In the case of "Zenkayu," Thai rice had a higher adhesiveness, and in the case of the other ratios of rice gruel, "Koshihikari" had a higher adhesiveness. 3) Changes in the degree of swelling, hardness, and adhesiveness were seen when the temperature fell to 60℃ after cooking. 4) α-Amylase produced more reducing sugar in Thai rice and gruels with a high ratio of rice. 5) In sensory tests on appearance and ease of swallowing, "5 bu kayu" showed fewer difference with Thai rice and "Koshihikari" than "Zenkayu." Concerning the smoothness and adhesiveness, when both "Zenkayu" and "5 bu kayu" showed distinct difference between Thai rice and "Koshihikari." The panellists preferred "Koshihikari" on the whole. 6) Observing the surface of the cooked rice, it was noticed that Thai rice was rough, while "Koshihikari" was smooth, which corresponds with the result of the sensory tests.
著者
貝沼 やす子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.785-792, 2006-12-15
被引用文献数
2

1)凍結中の温度履歴では,-20℃より-40℃,塊よりはシート状,200gよりは100gの方が,短時間で最大氷結晶生成帯を通過した.特に,-40℃・シート状・100gが早く,-20℃・塊・200gが最も通過時間が長かった.2)テクスチャー測定ではほとんどの冷凍保存粥が炊きたてと比較して,かたく,付着性が大きくなり,冷凍保存により粥の性状が変化することが確認できた.団塊法では,-20℃より-40℃,塊よりはシート状,200gよりは100gの方がやわらかく,付着性が小さかった.飯粒法でも同様の傾向がみられたが,シート状・100g,塊・100gは-20℃より-40℃の方がかたく,最大氷結晶生成帯通過時間の短い-40℃の方が粥飯粒の崩壊が少ないためと考えた.3)画像解析結果では-20℃保存の粥に面積の小さな粥飯粒が多く存在していることが示され,これらの飯粒の存在が粥飯のテクスチャーに影響を与えたものと推察された.4)官能評価では,ほとんどの冷凍保存粥は,炊きたての粥と比較して,粒の形が残っておらず,粒々感,さらさら感がないと評価されたが,-40℃・100gは塊,シート状いずれも炊きたてに近い粥であると評価された.一方,-20℃,塊,200gの保存条件では炊きたてより粥の性状が劣ると評価された.以上,1)〜4)の結果から,保存形態を問わずに推奨できるのは100gの粥を-40℃に保存する方法であった.
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.199-207, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

1) 米飯から調製する粥の物性には米飯の加水量の影響が大きく, 米飯の保存方法の影響は小さかった.2) いずれの米飯粥も加熱時間が長くなるにつれて付着性は増加する傾向を示したが, 粥飯粒自体は軟化傾向を, おもゆを含むとかたさは増加傾向を示した.3) 加水量の多い米飯を利用した1.7倍粥では米飯の吸水率は少なく, 分離液 (おもゆ) の粘性は小さかった. かたさ, みかけの破断応力も低い傾向にあり, 粥飯粒の外観は10分加熱ですでに過度に膨潤しており, 崩れが観察された.4) 加水量1.5倍, 1.3倍の米飯から調製した粥は, 1.7倍粥に比較してかたさ, みかけの破断応力, 分離液の粘性は高い傾向にあり, 粥飯粒の外観は米粥に似ていた.5) 官能検査において, いずれの米飯粥も20分加熱で米粥に近い性状であると評価された. 1.7倍米飯粥のみは20分加熱しても有意に水っぽいと評価され, 物性測定の結果に対応していた.
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.897-902, 1992-09-15
被引用文献数
11

For the basic study of rice cooking of Japanese Takikomimeshi, we examined the effect of soaking time and solution on infiltration of salinity and properties of the cooked rice. The results were as follows.(1) The method of soaking rice in seasoned solution took longer times for water absorption than the method of water.(2)The cooked rice soaked in seasoned solution was glossy. It was suggested that the surface of cooked rice grains was watery. It was considered that the salt distributed thickly at the circumference of the cooked rice grains. In case of short soaking time, such tendency was remarkable.(3)In the sensory evaluation, the cooked rice soaked in seasoned solution for 30 min. was evaluated to have much hardness and low adhesiveness. But the improvement of texture was recognized by extending the soaking time or decreasing the amount of salt.(4) The result of viscoelasticity of the cooked rice was almost agree with that of the sensory evaluation, being judged by the creep compliance.
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.198-205, 1990-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
7
被引用文献数
5

We used 20-60% juice of Japanese summer orange and Amanatsukan in place of water on rice cooking, and exaimined about the effect of this method on the color, taste and quality of cooked rice. The results are as follows.:1) There were on adverse effect on the color and taste by cooking with juice and the rice cooked with adequate amount of juice was acceptable in sensory evaluation.2) The cooked rice with juice showed low hardness, high adhesiveness and was glossy. By microscopical observation, the thick matter was at the surface of cooked rice grains. It was suggested that there is the relation between this matter and adhesiveness and glossiness. It was considered that we can make use of these characteristics to the aged rice stored for a long time and the low-adhesive rice.3) As for state of acid permeation into the cooked rice grains, large quantity of acid was contained around the surface. It is remarkable for the cooked rice with more juice. It was considered that the surface state of cooked rice was changed by acid, and this fact appeared to difference on the texture.
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.89-95, 1991-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5
被引用文献数
3

We examined on an improvement of taste of stored aged rice by use of Japanese summer orange juice in rice cooking. We also used vinegar on rice cooking for comparing with juice. The results are as follows.1) In sensory evaluation, the rices cooked with juice as well as vinegar were improved on flavor, adhesiveness and hardness of stored aged rice.2) In an instrumental measurement, the cooked rices with juice as well as vinegar showed low hardness, high adhesiveness and gloss. By microscopical observation, it was suggested that there was the relation between high physical changes and the surface of cooked rice grains.3) A proper salt content of the rice cooked with juice was less than the rice cooked with vinegar.4) Salts in rice grain cooked with juice were distributed more in the surface than those in rice grain cooked with vinegar. It is considered that the use of Japanese summer orange juice for cooking stored aged rice shows a significant improvement on the taste of stored aged rice and decrease of salt.
著者
白木 まさ子 貝沼 やす子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.525-532, 1977-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7
被引用文献数
1

1) 牛乳羮の調製にあたり, 牛乳の添加量が多いほど牛乳羮の硬さ, もろさが減少する.2) 牛乳の添加量が多いほど牛乳羮の凝集性が増加し, 離漿が減少する.これは牛乳羮の性状の安定性が増加するためと思われる.3) 牛乳羮の離漿には比較的多量のカゼインと少量の脂肪が含まれているので, やや青味がかった白色を呈する.4) 牛乳成分のうち, カゼインと脂肪は強固な結合状態を保ちながら牛乳羮の硬さに影響をおよぼす.5) バター, カゼイン添加試料による牛乳美の硬さ, もろさはおのおのの添加量に影響され, 特に, カゼインの場合は添加量が増えるほど硬さ, もろさは減少する.
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.785-792, 2006

1) 凍結中の温度履歴では, -20℃より-40℃, 塊よりはシート状, 200gよりは100gの方が, 短時間で最大氷結晶生成帯を通過した. 特に, -40℃・シート状・100gが早く, -20℃・塊・200gが最も通過時間が長かった.<br>2) テクスチャー測定ではほとんどの冷凍保存粥が炊きたてと比較して, かたく, 付着性が大きくなり, 冷凍保存により粥の性状が変化することが確認できた.団塊法では, -20℃より-40℃, 塊よりはシート状, 200gよりは100gの方がやわらかく, 付着性が小さかった. 飯粒法でも同様の傾向がみられたが, シート状・100g, 塊・100gは-20℃より-40℃の方がかたく, 最大氷結晶生成帯通過時間の短い-40℃の方が粥飯粒の崩壊が少ないためと考えた.<br>3) 画像解析結果では-20℃保存の粥に面積の小さな粥飯粒が多く存在していることが示され, これらの飯粒の存在が粥飯のテクスチャーに影響を与えたものと推察された.<br>4) 官能評価では, ほとんどの冷凍保存粥は, 炊きたての粥と比較して, 粒の形が残っておらず, 粒々感, さらさら感がないと評価されたが, -40℃・100gは塊, シート状いずれも炊きたてに近い粥であると評価された. 一方, -20℃, 塊, 200gの保存条件では炊きたてより粥の性状が劣ると評価された.<br>以上, 1)~4) の結果から, 保存形態を問わずに推奨できるのは100gの粥を-40℃に保存する方法であった.
著者
貝沼 やす子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.487-493, 2008-10-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

精白米を10℃,-20℃,-40℃,-60℃に6ケ月間保存したところ,いずれの保存温度においても保存中に水分は変動しなかった.米への吸水は,10℃に保存した場合,保存期間が長くなるに連れ減少し,6ケ月後には顕著に低い吸水率となった.-20℃,-40℃と保存温度が低くなるにつれて0ケ月との差は小さくなり,-60℃保存は最も差が小さかった.0ケ月との差は浸漬の最初の段階で顕著に現れ,表層部に生じた古米化現象による影響であると考えられた.吸水後の米粒の硬度は,-60℃保存は0ケ月と変わっていなかったが,-40℃,-20℃保存はわずかに差が生じ,10℃保存については大きな差が見られ,いずれも硬く変化していた.浸漬液に溶出した還元糖量は10℃,-20℃,-40℃保存では,保存期間が長くなるにつれて減少したが,-60℃保存では溶出する還元糖に変化が見られず,酵素の活性が維持されていると考えられた.<BR>米飯の破断強度測定,テクスチャー測定では,保存期間が長くなると0ケ月と比較してかたく,付着性が少ない米飯となり,保存により米飯の物性が変化した.この変化は10℃保存の米飯で顕著であった.-20℃,-40℃と温度が低下するにつれて変化は小さくなり,-60℃保存では0ケ月の米飯の物性とほぼ同じ状態であった.官能検査においても,保存温度が最も低い-60℃保存の米で炊飯した米飯は10℃保存の米飯に比較して,有意に粘りがあり,やわらかいと評価され,総合評価においても有意に好まれた.
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.341-347, 1999-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The effects of cooking pot material and heating conditions on the physical and chemical properties of rice gruel were studied.It was found difficult to adjust the heat input to rice gruel cooked in a yukihira nabe (earthen pot) when the temperature reached over 100°C at the bottom of a pot. Rice gruel cooked rapidly was harder and stickier than when cooked slowly, particularly when a yukihira nabe was used as the pot. Rice gruel cooked slowly had a large amount of reducing sugar, mainly consisting of glucose. Rice gruel that was too sticky was not easy to swallow and was disliked. Rice gruel cooked in an aluminum pot was preferred to that in a yukihira nabe, although the application of the heat retaining method to the latter type of pot was effective.
著者
貝沼 やす子 関 千恵子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.690-697, 1983-11-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
3

1) 炊飯条件としての沸騰に至るまでの加熱速度の相違は, それぞれの炊飯過程や飯の性状に特微をもたらした.2) 加熱速度の速い場合 (S) は加熱に伴う米粒の吸水は遅れるが, 沸騰状態の継続時間は長くなり, この間におこる米粒の変化が著しい.しかし, 急激的に水分の吸収や糊化が行われるために, 均質的な変化は期待できず, かたくて粘りの少ない飯になる.3) 加熱速度が遅い場合 (L) は沸騰に至るまでの時間が長くかかり, 沸騰までにほとんどの水が吸収されてしまうのでいわゆる沸騰期を作る水はなくなる.またゆるやかな温度上昇にあわせて溶出した多量の固形分が米粒の表層に付着しながら徐々に糊化が進むため, 光沢がなく, やわらかい飯になる。4) 沸騰に至るまでの加熱時間が, 約10分の場合 (M) は, 1), 2) の中間的な状態を保ち, 加熱に伴う適量の吸水, 沸騰期の適度な存在により米粒の変化が好ましい状態に進む.5) その他, α化率, 飯の色は, S, M, Lにほとんど差がなく, また, 官能的にも大きな違いはないが, 使用ガス量が少なくてすむことなどを含め, 総合的には, 沸騰までに約10分を設定したMの加熱速度が最も好ましい.