著者
関 節朗 干場 健 Jorge BORDON
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-37, 2001-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
11

パラグアイ南東部穀倉地帯における不耕起栽培ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) の収量は近年減少傾向にある.この原因が不耕起栽培を継続した圃場での根の発育不良にあるか, どうかを明らかにするため, 年数, 耕起法, 前作物, 土壌の異なる11圃場についてダイズの根の形態, 分布を調査した.その結果, 不耕起畑では地表下5~10cmのところで, 主根が彎曲したり, 主根の伸長が止まり, 代わりに側根が水平に伸長したり, 主根の伸長・肥大が貧弱で側根がタコ足状に発達したりしているダイズが多数観察され, このようなダイズでは根系が地表近くに分布する傾向が認められた.一方, 耕起畑および開墾初年目の畑では主根伸長異常のダイズは少なかった.土壌調査結果によると主根の土壌下層への伸長不良は, 播種床下の土壌硬度が高いほど, また土壌表層と下層のリン酸濃度の差が大きいほど多くなる傾向にあった.このことから長年不耕起栽培を継続した畑では, 土壌に圧密層が形成され, また施肥リン酸が表層に集積するなどして, ダイズ根の土壌下層への伸長を妨げて根系分布の表層化を招き, 軽度の気象変動 (干ばつ) にも生育が左右され, 近年の収量低下の原因になっているのではないかと考えられた.
著者
関 節朗 佐藤 収
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 = Japanese journal of tropical agriculture (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.290-294, 2002-12-01

パラグアイ・イグアス地域の不耕起畑では,深さ 5〜15cm のところにダイズ根の伸長を妨げる圧密層が存在し,多くのダイズに根系分布の浅層化が観察されている.この根系分布の浅層化を改善するため,2000/01年のダイズ栽培期間にパラグアイ農業総合試験場 (CETAPAR) において,スリット播種の効果について試験を行った.スリット播種とは,不耕起用播種機に装着されているコールタによって,土壌に切れ目を入れて,切れ目線上に播種する方法である.処理はスリットの深さ 5cm(S-5区),10cm(S-10区),15cm(S-15区)の3段階を設けた.初生葉展開期における地表面から主根先端までの長さは,S-5, S-10, S-15区でそれぞれ 8.9,11.6,14.9cm と,スリットが深いほど主根は深くまで伸長した.播種後10日目に測定した深さ 10〜15cm の土壌硬度は,S-5, S-10, S-15 区でそれぞれ10.5〜11.2, 8.7〜9.7, 1.1〜2.3kg/cm^2と,スリットが深いほど低くなった.開花期における異常根系発生率は,S-5, S-10, S-15区でそれぞれ82, 58, 22%と,スリットが深いほど根系異常は少なくなり正常根系の割合が多くなった.このことからスリット播種は主根の伸長速度の大きい出芽前後の土壌硬度を減少させて,主根の鉛直方向への伸長を促進し,その後の根系分布の発達に大きく寄与していることが明らかになった.また,子実収量はS-5, S-10, S-15区で,それぞれ3.2, 3.5, 3.8t/haと,スリットが深いほど増収した.
著者
関 節朗 干場 健 Bordon Jorge
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-37, 2001-03-01
被引用文献数
4

パラグアイ南東部穀倉地帯における不耕起栽培ダイズ(Glycine max(L.)Merr.)の収量は近年減少傾向にある.この原因が不耕起栽培を継続した圃場での根の発育不良にあるか, どうかを明らかにするため, 年数, 耕起法, 前作物, 土壌の異なる11圃場についてダイズの根の形態, 分布を調査した.その結果, 不耕起畑では地表下5〜10cmのところで, 主根が彎曲したり, 主根の伸長が止まり, 代わりに側根が水平に伸長したり, 主根の伸長・肥大が貧弱で側根がタコ足状に発達したりしているダイズが多数観察され, このようなダイズでは根系が地表近くに分布する傾向が認められた.一方, 耕起畑および開墾初年目の畑では主根伸長異常のダイズは少なかった.土壌調査結果によると主根の土壌下層への伸長不良は, 播種床下の土壌硬度が高いほど, また土壌表層と下層のリン酸濃度の差が大きいほど多くなる傾向にあった.このことから長年不耕起栽培を継続した畑では, 土壌に圧密層が形成され, また施肥リン酸が表層に集積するなどして, ダイズ根の土壌下層への伸長を妨げて根系分布の表層化を招き, 軽度の気象変動(干ばつ)にも生育が左右され, 近年の収量低下の原因になっているのではないかと考えられた.
著者
関 節朗 干場 健 久保田 亜希
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.28-32, 2002-03-01
被引用文献数
1

パラグアイ・イグアス地域のテーラロッシャと呼ばれる重粘土壌では, 長年の不耕起栽培によって5〜15cmの深さに圧密層が形成されており, 多くのダイズに根系異常が見られる.この原因を明らかにするため, 1999年パラグアイ農業総合試験場(CETAPAR)において, 農家の不耕起畑にみられるのと同様の土壌硬度をもつ圧密層を, トラクタの踏圧回数を4回および8回と変えて造成し, 対照の無踏圧を加えて3水準の土壌硬度条件でダイズの主根伸長・根系発達と土壌硬度との関係を調査した.その結果, 無踏圧区のダイズ主根は出芽時に9.0cmまで鉛直に伸長したのに対し, 4回, 8回踏圧区ではそれぞれ2.9cm, 1.6cmに過ぎず, また踏圧区のダイズでは主根の先端に屈曲や肥大が認められた.主根伸長の旺盛な発芽から第1本葉展開までの土壌硬度は, 無踏圧では深さ10cmより下層で20mm(山中式土壌硬度計による指標硬度)以下, 15cmでも25mm以下であったのに対して, 踏圧区では深さ15cmまで25mmかそれ以上であった.開花期の根系は, 無踏圧区では鉛直に伸びた主根を軸に深さ20cmまで全層に分布したのに対して, 踏圧区では主根の屈曲や伸長停止が見られ, その補償生長として上位側根が発達したが, 深層での根系分布は貧弱であった.踏圧試験圃に隣接した不耕起畑裸地の土壌硬度を3回の降雨後次期降雨まで測定した結果, 深さ15cmまでの土壌硬度は, 降雨後晴天が続くと数日のうちにダイズ根の伸長が困難になる硬さに達することが明らかになった.このようなことから, 同地域の不耕起畑で観察されるダイズ主根の伸長異常とそれに伴う根系の表層分布は, 主根伸長が盛んな出芽前後の短期間の土壌硬化によって引き起こされていると考えられた.1998,1999年の干ばつ年におけるダイズ収量の減少は, 不耕起畑における土壌の緻密化が大きく影響したのではないかと考えられる.