著者
畑 辻明 関根 光雄
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.918-932, 1981 (Released:2009-11-13)
参考文献数
52
被引用文献数
2 2

以上, TMSPを中心にシリルホスファイトの反応を述べたが, シリルホスファイトの特徴は本来安定なホスホネート型の構造を強塩基で反応性の高いホスファイトイオンとして活用する代りに, トリメチルシリル基のhardな性質を利用してこのイオンをトリメチルシリル基で固定したものである。その結果, シリルホスファイトは反応性の高い中性の蒸留可能な物質として単離することができ, さらに反応後簡単に加アルコール分解によってトリメチルシリル基が除去できる利点をもつのでエステル化されていない従来不安定でつくりにくかった種々の有機リン酸化合物の合成にきわめて有用である。
著者
畑 辻明 関根 光雄 高久 洋 石戸 良治 大塚 栄子 上田 亨
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は重点領域研究を申請するに際し、その準備段階として我が国で核酸化学の研究が濃縮されている核酸化学シンポジウムの中からメンバーを選び、本年度に研究を実施した。その結果、9月におこなわれた核酸化学シンポジウム(札幌)をはじめとして各所で貴重な新しい事実が発表された。たとえば、核酸とタンパク質の相互作用を調べたものとして上田らは制限酵素BalII、Sau3AI、MboIを選びDNA鎖の酵素認識部位のチミンの代りに3種類のウラシルに変換し、制限酵素の認識の特異性を明らかにすることができた。一方、大塚らはいわゆる"ribozyme"の機能が発現するためにどのようなRNAの塩基配列が必要であるかを調べイモリサテライトRNAの切断部位を含む切断鎖と相補鎖の塩基配列を変化させたオリゴヌクレオチド(21量体)を化学合成し、どのような塩基配列が切断に重要であるかを明らかにすることができた。また、関根らはオリゴヌクレオチドの合成で通常用いられているトリチル型の保護基が酸性条件で除去された性質を変換し、アルカリ条件で除去できるトリチル型の保護基を開発した。畑らは、mRNAのキャップ構造を構築する反応形式を検討し、RNAフラグメントを効率よくキャップ化する方法を開発することができた。