著者
中田 朋宏 池田 義 南方 謙二 山﨑 和裕 阪口 仁寿 上原 京勲 坂本 和久 中津 太郎 平間 大介 坂田 隆造
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.32-36, 2016-01-15 (Released:2016-02-02)
参考文献数
17

総肺静脈還流異常症(TAPVC)において,稀に左心系が非常に小さく,左心低形成症候群様の血行動態を示すものがあり,その対応に苦慮することがある.症例は1生日の女児,心エコーおよびCT検査にて下心臓型TAPVC,左心系の低形成(hypoplastic left heart complex),両側上大静脈,右鎖骨下動脈起始異常と診断された.肺静脈狭窄のため,1生日に準緊急的にTAPVC修復を行い,心房中隔欠損(ASD)作製術および両側肺動脈絞扼術(BPAB)も併せて行った.術後経過は良好であったが,術後の左心系の成長乏しく,47生日にNorwood手術(肺血流は右室-肺動脈導管5 mm人工血管で再建)を行った.その後もやはり左心系の成長乏しく,単心室型治療を選択することを決定し,6カ月時に両方向性Glenn手術,1歳11カ月時に完全右心バイパス手術を施行した.TAPVCを合併した左心系のボーダーライン症例に対して,TAPVC修復+BPAB+ASD作製を行うことで,左心系の発育を待ち,単心室/二心室型の治療方針を決定する方針は妥当と思われた.
著者
山中 一朗 仁科 健 三和 千里 阪口 仁寿 廣瀬 圭一 水野 明宏 吉田 幸代 矢田 匡 恩賀 陽平
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.59-64, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4

大動脈食道瘻(AEF)に対する治療戦略を示す。最近10 年に経験したAEF は5 例。1)食道抜去と頸部食道・胃瘻増設。2)感染大動脈に対する人工血管置換術。3)感染治癒,体力回復を待って食道再建という段階的手術を基本方針とした。80 歳以上の2 例が病院死した。死因は脳梗塞と感染再発。他の3 例は再発なく良好。AEF は早期に診断して可及的に治療介入し,段階的手術を行うことで予後の改善が期待できる。