著者
藤岡 正子 佐古 隆之 木目 良太郎 下村 浩祐 長田 卓也 村瀬 訓生 勝村 俊仁
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.52, no.April, pp.223-228, 2012-04-10 (Released:2012-04-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

要 旨:健常成人女性8名を対象に,随意最大筋力の30%強度,運動頻度1 Hzで疲労困憊に至るまで継続する掌握運動を1日1セット,週に5回,6週間のトレーニングを実施した。そのトレーニング前後に,漸増負荷掌握運動時における尺側前腕屈筋群の筋酸素消費量を近赤外連続光分光法を用いて評価した。その結果,最高筋酸素消費量はトレーニング前後で有意差は認められなかったが,最大運動強度はトレーニング後で有意に増加した。
著者
佐久田 斉 嶌田 泰之 原 正幸 立原 啓正 大木 隆生
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.99-104, 2017-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1

Kounis症候群はアレルギー反応に伴い急性冠症候群をきたす症候群である。60歳代男性,増大傾向のある腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術中にPVCとST上昇が出現しショックに陥った。冠動脈造影にて左前下行枝と回旋枝の広範囲閉塞を認め,#6に対してPCIを施行した。PCPSを装着したが心機能は回復せず第一病日に失った。本例は術前冠動脈CT検査の際に造影剤アレルギーが疑われており,臨床経過と冠動脈造影所見からKounis症候群が疑われた。
著者
鄭 忠和
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.123-130, 2021-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
22

和温療法は「安全,有効,低コスト,非侵襲」で,治療の望ましい要件を満たす革新的治療法である。全身の血管内皮から血管拡張物質のNOを著明に発現して多彩な効果を発揮し,心不全や閉塞性動脈硬化症などの難治性疾患に有効である。重症心不全に対する標準治療として新規保険収載されている。超高齢社会のフレイル対策,包括的リハビリテーション,QOLの向上・健康長寿・未病・予防に貢献する医療として今後の活用が期待される。
著者
北川 晃 成田 晶子 山本 貴浩 池田 秀次 泉 雄一郎 萩原 真清 太田 豊裕 石口 恒男
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.163-168, 2017-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3

四肢は動静脈奇形の好発部位であり,血管内治療の果たす役割は大きい。その理由として,表在(皮下)病変,深部(筋・骨)病変のいずれにも経動脈的,経静脈的あるいは直接穿刺によるアプローチが比較的容易であることがあげられる。また,硬化療法を併用する場合,硬化剤の中枢静脈への流出を防止し,標的血管内に長時間停滞させることがポイントとなるが,そのための血流コントロールを確実に行うことが可能である。病変の解剖,血流動態を正確に評価し,症例に応じた適切な治療方法を選択することが,治療効果の向上と合併症の予防に重要である。
著者
澤野 宏隆 重光 胤明 甲斐 達朗
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.52, no.March, pp.147-154, 2012-03-10 (Released:2012-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
11 4

要 旨:出血性ショックを伴った腹部内臓動脈瘤破裂12症例の治療について検討した。破裂動脈瘤部位は膵十二指腸動脈6例,結腸動脈2例,脾動脈2例,腎動脈1例,胃十二指腸動脈1例であった。輸液や輸血を含めた初期治療を行い,全例で造影CTと血管造影を施行した。治療はIVR(interventional radiology)を10例で,緊急開腹手術を2例で施行して全例を救命しえた。IVRは低侵襲でショック症例に対しても有効であるが,治療困難な症例では時期を逸せずに外科手術を検討することが必要である。
著者
進藤 智彦 安田 聡 下川 宏明
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.131-137, 2021-12-10 (Released:2021-12-10)
参考文献数
46

世界的な高齢化の進展とともに,さまざまな合併症を有する心血管病患者は増加の一途を辿っている。近年,生体において音波の繰り返し刺激が血管内皮細胞を伸展させ,内皮型一酸化窒素合成酵素や血管増殖因子の発現を誘導させることがわかってきた。これを応用し,われわれは音波を用いた低侵襲性血管新生療法を開発し,基礎・臨床の両面で研究を進めてきた。本稿では,音波を用いた血管新生治療の開発について概説する。
著者
兼城 達也 與那覇 俊美 平安山 英義
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.129-133, 2014 (Released:2014-08-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

要旨:Paget-Schroetter 症候群は健常な若年者に突然発症する比較的稀な疾患であり,その治療法について一定の見解が得られていない。症例は40 歳代男性で,突然発症した右上肢の腫脹を主訴に当院受診し,エコーとCT で右鎖骨下静脈の血栓閉塞を認めて入院となった。カテーテルによる鎖骨下静脈造影+血栓吸引・溶解療法を施行し,Paget-Schroetter 症候群と診断した。引き続いて根治手術を行った。手術は右鎖骨下アプローチによる右第一肋骨部分切除,肋鎖靱帯切除,前斜角筋離断を行い,術中造影でその中枢側の鎖骨下静脈に狭窄を認めた。胸骨柄にL 字切開を加えて鎖骨下静脈狭窄部のパッチ形成術を行った。術後経過は良好で退院後は術後8 週間の抗凝固療法を継続した。術後1 年間のfollow up で再発を認めていない。
著者
伊藤 栄作 戸谷 直樹 西江 亮祐 村上 友梨 福島 宗一郎 吉田 博 三澤 健之 大木 隆生
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.29-32, 2019-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
21

下肢静脈うっ滞症状を呈する33例において,血管内皮機能検査(flow-mediated dilation: FMD)について検討した。CEAP分類別のFMD中央値はC1: 4.2%, C2: 3.7%, C3: 4.3%, C4: 3.3%, C6: 2.4%で,C4–6群はC1–3群に比し有意に低下していた(p=0.035)。動脈硬化リスク因子(糖尿病,高血圧,脂質異常症)とFMD値とは関連はみられなかった。下肢静脈うっ滞症状と血管内皮機能障害は関連する可能性が示唆された。
著者
比嘉 章太郎 永野 貴昭 上門 あきの 安藤 美月 山城 聡
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.167-170, 2020

<p>本年2月より新しい塞栓物質としてShape memory polymerを用いたIMPEDEが認可されたため,その初期経験を報告する。症例は82歳男性。右内腸骨動脈瘤に対してEVARに先がけIMPEDE(IMP-10)を用いて上殿動脈・下殿動脈をそれぞれ塞栓した。血栓形成遅延を予防するため,塞栓確認造影のタイミング・回数を検討する必要があるが,術後CTではアーチファクトが少なく,エンドリークの評価がしやすいことから,IMPEDEは今後期待される塞栓物質である。</p>
著者
小林 健介 須藤 幸雄 明石 興彦
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.53, no.May, pp.71-74, 2013-05-10 (Released:2013-05-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1

要 旨:比較的稀な上肢の静脈性血管瘤(venous aneurysm; VA)を経験したので報告する。症例は71歳女性。40歳頃から右肘部内側の皮静脈が拡張しVAと診断した。VAは体表から透見でき上肢の挙上で虚脱した。静脈エコーや単純CTが診断に有用だった。局所麻酔下に瘤を切除した。炎症所見や内部血栓は認めず,術後の再発もなかった。上肢のVA切除術は低リスクで高い根治性が認められる。
著者
高橋 大輔
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.52, no.February, pp.85-88, 2012-02-10 (Released:2012-02-10)
参考文献数
11

要 旨:85歳以上高齢者腹部大動脈瘤手術の成績について2002年以降の21例を検討した。平均年齢87.1歳(85–92),緊急手術10例(47.6%),破裂7例(33.3%),平均最大径68.9 mmであった。手術死亡は5例(23.8%)で,全例破裂で術前ショック症例であった。待機手術の死亡はなかった。手術死亡を含む術後生存率は1年で71.1%,3年で64.0%であった。85歳以上高齢者腹部大動脈瘤手術においても待機手術の成績は良好であり許容されると思われた。
著者
山中 一朗 仁科 健 三和 千里 阪口 仁寿 廣瀬 圭一 水野 明宏 吉田 幸代 矢田 匡 恩賀 陽平
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.59-64, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4

大動脈食道瘻(AEF)に対する治療戦略を示す。最近10 年に経験したAEF は5 例。1)食道抜去と頸部食道・胃瘻増設。2)感染大動脈に対する人工血管置換術。3)感染治癒,体力回復を待って食道再建という段階的手術を基本方針とした。80 歳以上の2 例が病院死した。死因は脳梗塞と感染再発。他の3 例は再発なく良好。AEF は早期に診断して可及的に治療介入し,段階的手術を行うことで予後の改善が期待できる。
著者
鳥畠 康充 塩梅 修
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.52, no.January, pp.25-29, 2012-01-11 (Released:2012-01-11)
参考文献数
13

要 旨:肺血栓塞栓症で争われた民事裁判の20判決を分析した。司法判断は,医療過誤が頻発し医療界の体質改善を社会から強く求められた20世紀末,それに対する反省や改善から沈静化に至った21世紀初頭の社会的背景とよく一致していた。検査の有無,治療段階におけるヘパリン使用の有無,診断や治療の妥当性などが重要な争点となっていた。近年の裁判では,VTE予防ガイドラインが参考にされることは多いが,司法判断は概ね控えめで理性的であった。