著者
阿部 恵利子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.58, 2009 (Released:2009-09-02)

目的 近年、医学や発達心理学の分野において乳幼児期の視覚の発達の経緯が明らかにされつつある。これによると、色彩感覚や空間認知能力は乳幼児期の視覚体験によって獲得され、それ以後は訓練しても習得は難しいとされている。しかし、こうした視覚に関する知識を、乳児をもつ母親は認識しているのであろうか。そこで本研究は、乳児をもつ母親の空間認知に関する意識について調査・分析を行い、子どもの色彩感覚や空間認知の発達を促すための基礎的研究とすることを目的とする。 方法 子育てサークルの母親、20代16名、30代14名、計30名を対象にアンケート調査を行った。調査対象者の平均年齢は29.6歳である。 結果 月齢別の視力に関するアンケート調査では、1ヶ月の赤ちゃんが明るい色彩に反応することや、4ヶ月の赤ちゃんが目で物を追うことに対する母親の認知度は高いが、具体的な視力については認知されていないことが確認された。赤ちゃんの視覚については70.0%の母親が「関心がある」と回答しているが、空間認知や色彩感覚の発達を理由とする回答は得られなかった。また、乳児は黒・白・赤などの極端な配色や図柄に反応を示すことを認知している母親は少数であり、多数の母親が赤・青・黄の三原色を使用している玩具を「良い」と認識している傾向が示された。視覚と聴覚の発達に関する工夫をしているか否か、の質問については、視覚では66.7%、聴覚では52.3%の母親が「工夫していない」と回答している。このことは、住まいの色彩に関する質問項目において、母親の好みが優先されており、乳児の発達が考慮されていない現状と一致する。 乳児をもつ母親は、視覚に関心はあるものの、視覚に関する具体的な発達については認知しておらず、空間認知や色彩感覚の発達を促す意識は低い傾向が確認された。