著者
鈴木 樹里 三輪 宣勝 熊崎 清則 阿部 政光 釜中 慶朗 松林 伸子 後藤 俊二 松林 清明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.361-366, 2001-04
参考文献数
17
被引用文献数
1 5

飼育下においてニホンザルの身体成長がどのようにまたどこの部位が変化するのかを明らかにするために,放飼場とケージという異なる飼育様式で1歳齢から7歳齢までの,雄77例,雌92例を対象に身体の各部36項目の生体計測を行った.ケージ飼育個体の計測値は多くの項目で放飼場飼育個体の値より小さかった.雌雄ともに初期発達期に成長率が大きい項目で育成空間の大きさの影響を受けやすいことが明らかになった.多くの項目は性成熟期の成長によって初期成長の遅れを回復するが,移動運動に関連する前腕最少周囲径,手長,下腿最少周囲径および足長では発達初期の影響を大きく受け,ケージ飼育個体の成長の遅延したままであった.雌の方が雄よりも飼育スペースの大きさの影響を受けやすいことも明らかになった.これらのことからニホンザルの持っている本来の成長を保証するためには,面積が広く且つ垂直方向に自由に運動できる飼育環境が必要であることが示唆された.