- 著者
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陳 全
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
高分子量域のPI、PtBS試料の相溶性ブレンド系の絡み合い状態が誘電緩和、粘弾性緩和、流動光学などの手法で検討されている。高温においては、化学的には均一で分子量のみが異なるPI同士のブレンド系と同様の2段階の長時間粘弾性緩和が観察され、1段目の緩和はPIのA型双極子に由来する誘電緩和を伴うのに対して.2段目の緩和は誘電緩和を伴わないことが見出された。この結果から、PI/PtBSブレンド系においてPIが速い成分、PtBSが遅い成分であることが確認され、また、1段目の粘弾性緩和が全成分鎖の間の絡み合い緩和であり、2段目の緩和がPI鎖の緩和後に発現するPtBS鎖同士の絡み合い緩和であることが結論された。この結論は、流動光学データからも支持された。また、1段目の緩和に付随する絡み合い長は、成分鎖のKuhnセグメントの数分率と純状態における絡み合い長に基づく一次混合則で良く記述されることを示した。さらに、この混合則は、絡み合いをパッキング長と対応付ける現在の分子描像と良く対応することも明らかにした。一方、低温では、1段目の絡み合い緩和が平坦部を伴わないRouse型のベキ乗緩和となることを見出した。粘弾性、誘電、および流動光学データの対比から、遅い成分であるPtBS鎖による拘束が絡み合い長にわたるPI鎖のRouse平衡化を遅延して平坦部をマスクするために1段目の緩和が平坦部を伴わないことを明らかにし、この分子描像に基づくモデルを構築した。さらに、流動光学データなどに基づき、このモデルの妥当性を実証した。