著者
隅田 孝
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.68, pp.301-313, 2019-09-25

日本社会が成熟社会へと変化する中、日本の消費者は物質的な豊かさを享受することができた一方で、果たして精神的な豊かさを享受することができたのだろうか。このような疑問が1980年代及び1990 年代のポストモダンのあり方を模索する日本の成熟社会論において問われた。 日本の成熟社会において消費の意味は変化し、多様化している。そして消費者はモノの有用性に見いだされる価値だけでなく、消費のプロセスをも消費対象としている。インターネットの出現によって情報化社会がより一層加速され、消費者は一方的に提供されるだけの側から、消費のプロセスを消費する存在へと変貌を遂げている。 日本の消費者もまた消費のプロセスを消費する消費者へと変化を遂げ、いわゆるブランド・コミュニティを形成する消費者行動が定着してきている。ブランド・コミュニティはモノと消費者の関係、消費者同士の関係を新たに創造する。このブランド・コミュニティによる消費が消費のプロセスを顕在化させ、モノの消費だけでなく消費のプロセスを消費することを可能にしている。日本の成熟社会における消費者行動は、これまでのように消費対象としてのモノを消費することにとどまるのではなく消費者同士が醸成する消費に至るプロセスを消費するための行動となってきていることを明示する。
著者
隅田 孝
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.64, pp.179-194, 2017

本稿では、少子高齢化の影響を受けた子供市場において、近年いわゆる豪華一点主義といわれる現象がみられ、そのような子供市場についてマーケティング論的分析を行った。豪華一点主義といった社会的背景を受け、近年関心の高まりをみせ注目を集めている子供や若者といった若年層をターゲットにしたマーケティングのあり方を、食品産業、とりわけ玩具菓子及び外食産業を例にあげて分析を行った。 玩具菓子市場では大人と子供のボーダーレス化現象がみられ、大ヒット商品を誕生させた要因の1 つであると考えられる。従来、大人が好んで購入する商品とみなされていたモノが子供の嗜好を刺激するモノであるといったように潜在的なニーズの発掘に成功した。その逆の成功事例も数多く存在する。たとえば、子供の玩具から大人のコレクションへというように、玩具菓子が市場で新たな価値を帯びていくプロセスをチョコエッグやプロ野球カードを事例に、そのメカニズムを明らかにした。また、今後の食品産業における子供市場のあり方として、子供というカテゴリーにとらわれることなく、子供と大人が共有できる価値をもつ製品の開発が求められることを述べた。
著者
隅田 孝
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.67, pp.295-314, 2019-03-25

広告戦略におけるオノマトペ(主に食品などのサクサク、ふわふわ、などの擬声語、擬態語)は、商品の差別化や販売促進などで使用されている。その他にも消費者間コミュニケーション(クチコミ)などで使用され、様々な広告効果が発揮されている。消費者間コミュニケーション(クチコミ)の重要性の高まりを背景に、広告戦略においてこれらオノマトペが注目されている。 今日、サクサク、ふわふわ、など一般的にオノマトペは使用され、日常的に使用されているオノマトペがクチコミとしての広告効果に深く関わっていると考えられている。一方で、オノマトペを用いた広告の中で商品に使用するとイメージが損なわれるもの(食品にベチャベチャ、ぐちゃぐちゃなどを使用する場合など)がある中で、広告戦略に適しているケースについて検討する。 本稿では、あらかじめイメージが植えつけられている商品があり、イメージを表現するオノマトペを伏せた状態で使用、試食させた場合、消費者はどのようなオノマトペを連想するのか、その連想したオノマトペは商品イメージと一致するのかを検証する。また、この伏せた状態での消費者間コミュニケーション(クチコミ)はどのように広がり定着していくのかについても考察を進める。これらをまとめて、オノマトペは広告戦略として活用する際に有効であるかについて検討する。
著者
隅田 孝
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要
巻号頁・発行日
no.64, pp.179-194, 2017-09-25

本稿では、少子高齢化の影響を受けた子供市場において、近年いわゆる豪華一点主義といわれる現象がみられ、そのような子供市場についてマーケティング論的分析を行った。豪華一点主義といった社会的背景を受け、近年関心の高まりをみせ注目を集めている子供や若者といった若年層をターゲットにしたマーケティングのあり方を、食品産業、とりわけ玩具菓子及び外食産業を例にあげて分析を行った。 玩具菓子市場では大人と子供のボーダーレス化現象がみられ、大ヒット商品を誕生させた要因の1 つであると考えられる。従来、大人が好んで購入する商品とみなされていたモノが子供の嗜好を刺激するモノであるといったように潜在的なニーズの発掘に成功した。その逆の成功事例も数多く存在する。たとえば、子供の玩具から大人のコレクションへというように、玩具菓子が市場で新たな価値を帯びていくプロセスをチョコエッグやプロ野球カードを事例に、そのメカニズムを明らかにした。また、今後の食品産業における子供市場のあり方として、子供というカテゴリーにとらわれることなく、子供と大人が共有できる価値をもつ製品の開発が求められることを述べた。
著者
隅田 孝
出版者
社会・経済システム学会
雑誌
社会・経済システム (ISSN:09135472)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.107-115, 2006-10-14 (Released:2017-07-28)

This study suggests a new direction for how a consumer behavior is described on a brand community as the Internet community. The brand community is a specialized, nongeographically bound community, based on a structured set of social relations among admires of a brand. The concept of brand community consists of three aspects : shared consciousness, rituals and traditions, and a sense of moral responsibility. In this paper, the brand community is classified into two types. One is the enterprise based brand community and the other is the consumer based brand community. The former is building for the profit by enterprises ; on the other hand the later is building for the nonprofit by consumers. Each type is characterized in order to clarify the orientation of consumers. Then the other applicable measurement which is shown by the degree of consumer involvement is applied for establishing a matrix of two dimensions. One coordinate axis is named a type of brand community, the other one is a degree of consumer involvement. Finally, the types of consumers on the brand community are extracted four categories as type A, type B, type C, and, type D. Type A is on the enterprise based brand community and on the high consumer involvement. Type B is on the consumer based brand community and on the high consumer involvement. Type C is on the enterprise based brand community and on the low consumer involvement. Type D is on the consumer based brand community and on the low consumer involvement. The finding is that type B has a remarkable process to build the consumers attitude on the brand community.
著者
隅田 孝
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.65, pp.213-225, 2018-03-03

クチコミによる企業のマーケティングは、今日においてはなくてはならないマーケティング手法の1 つであると認識されている。いわゆるSNS による商品情報の拡散や商品の良し悪しを明示することによる商品評価が定着するにつれ、企業にとって、クチコミはその扱い方ひとつでメリットにもデメリットにもなりうるのである。 まず、クチコミはその性質上、企業のマーケティングにダイレクトに影響しうるものと、ダイレクトにではなく間接的にその影響を及ぼすものがあり、これらのタイプをクチコミ・ポジショニングを用いて明らかにする。次に、上記のクチコミ・ポジショニングに合わせてクチコミの分類を試みた既存研究を用い4 つのクチコミのタイプを明示する。さらに、消費者の情報認知段階に合わせたクチコミ伝播のメカニズムについても既存研究を援用し2 段階モデルとして明示する。最後に、消費者によるインターネット上での消費者行動に言及し、ブランド・コミュニティの存在を指摘する。 しかし、これからのクチコミと企業のマーケティングのあり方、つまり、今日インターネット上で展開される新たな消費者行動の形態ととらえることのできるSNS とそれらSNS が新たに登場しては短期間で消え去ってしまうことが危惧される現状がある。本稿ではあえてSNS の今日的な有用性と解釈されがちな点に目を向けるのではなく、クチコミの本来の理論的位置づけを整理し再確認することを意識しつつ、クチコミの本質について再考察することを試みるものである。