著者
酒井 直人 竹原 康雄 山下 修平 馬場 聡 難波 宏樹
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

脳神経外科手術において頭蓋内腫瘍の硬さは手術の難易度を左右する。核磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)は非侵襲的に生体内に組織の弾性率、すなわち硬さを測定することができる画期的な方法である。我々は、MREを用いて代表的な4つの頭蓋内腫瘍:髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、グリオーマに対してMREを用いて術前に弾性率を評価し術中の硬さとの相関について研究を行った。その結果、術前のMREの弾性率と術中の腫瘍の硬さは相関した。MREは術前に硬い腫瘍を鑑別するのに有用と考えた。
著者
杉山 憲嗣 難波 宏樹 野崎 孝雄 伊藤 たえ
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.23-29, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
24

DBSは,疼痛疾患,不随意運動の治療法として始まり,中枢神経のループ回路障害の治療法として注目され,近年,難治性の強迫性障害(OCD),うつ病等々の精神科疾患にも適応されるようになった。中でも難治性 OCD に対する DBS は,USA で FDA の認可,ヨーロッパでも CE Mark approval を獲得し,そのDBS施行数は,論文発表例のみでも94症例となっている。複数報告例(総患者数= 81例)での治療有効率は約64 %(63.8 ± 21.9%)である。各ターゲットごとの報告例数,術後 YBOCS15点以下の改善者数,20点以下の改善者数は,①内包前脚/腹側線条体刺激:報告例数42 例,15点以下12 例,20点以下15例,②側座核刺激:報告例数33 例,15点以下8 ~ 11 例,20 点以下 13例,③視床下核刺激:報告例数19 例,15 点以下7例,20 点以下 11例であった。DBSによる治療が,精神科内,OCDの患者や患者家族内で選択しうる補助療法として認識され,検討されることを望むものである。
著者
北浜 義博 難波 宏樹 花北 順哉
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.132-137, 2012
参考文献数
8

【目 的】出血を伴った黄色靭帯内のガングリオン嚢胞を病理・免疫組織学的に検討し,亜急性期炎症所見を分析し,靭帯内出血性病変の発生機序について考察する.【対象と方法】症例は68歳男性,急性発症で4ヵ月継続する右下肢痛が主訴であった.画像所見からガングリオン嚢胞によるL5神経根症と診断し,黄色靭帯摘出を実施した.この摘出標本を対象としてHE, EVG, AZAN, congo redの病理染色およびCD31, CD34, VEGFR2, vWFの免疫染色を実施した.病理学的に変性の重症度を弾性線維,膠原線維,間質の硝子化変性の所見を基に評価し,血管新生出現の様子を免疫染色で観察した.【結 果】椎間関節より連続したガングリオン嚢胞には出血所見を伴っていた.ガングリオン周辺には炎症所見を認め,免疫染色陽性の新生血管内皮を認めた.新生血管は脊柱管側膜構造から炎症部周囲に多く分布した.炎症部位以外にも新生血管を認め,炎症部位から離れるにつれCD34陽性の間質細胞が存在した.炎症部近傍の間質はCD34陰性で,アミロイドの沈着を認めた.【考 察】本症例では,ガングリオン嚢胞を中心とした黄色靭帯内亜急性期炎症所見が観察され,その周囲に新生血管を伴い,靭帯の伸縮に伴う機械的ストレスを基にこれが出血源になったと考えられた.【結 論】本症例の病理学的・免疫組織化学的所見より,黄色靭帯変性初期の亜急性期炎症所見周囲の新生血管がガングリオン嚢胞の出血源になると考えた.