著者
藤田 昌彦 雨海 明博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.191, pp.1-5, 2000-07-11
被引用文献数
8

視覚的に提示された刺激は一定時間, 瞬時記憶に蓄積されると考えられている.100msを超えると急速に減衰し, 約200msで消失する.減衰前に提示された刺激は空間的に構造をもつ刺激と知覚されることが知られている.そこで我々は眼球運動の最中に縦一列の発光ダイオードを適時点灯させて網膜上にドットパターンを描いてその識別を問うた.問題は, サッカード抑制といわれるような視覚抑制機構が働くのか, 場所知覚が歪むのか, 眼球静止時と異なる統合時間帯を持つのかという諸点である.暫定的な結果では, 視覚抑制はないこと, 知覚場所に歪みはなくパターンが正しく知覚できることを示した.統合の時間が眼球運動最中は長い傾向を見出したが, これは用いたパターンが部分から容易に全体が推定できるものであったことによると思われる
著者
藤田 昌彦 雨海 明博 皆川 双葉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1897-1905, 1996-11-25
被引用文献数
12

サッカード(Saccade,跳躍性眼球運動)最中の視標の系統的なステップバックによって適応が生じて,数百回の試行でゲインが変化する.本論文では,これまで試みられてきた視覚依存性サッカード以外に,記憶依存性サッカードにおいても適応が生じること,適応によって1種類のサッカードのゲインを変化させても,適応を施さなかった他の種類のサッカードのゲイン変化はわずかであり,同時に逆向きのゲイン変化も可能であるという適応の独立性を報告する.適応過程での修正サッカードは両者共通に,ステップバックした視標に導かれた視覚依存性サッカードであった.このことは修正サッカード中の信号のみで適応が進むという可能性を否定する.サッカードの誤差知覚がさかのほって第1サッカードを生成した信号に干渉を与えて学習が進むという可能性,あるいは,誤動作が記憶され,次回以降の同種同サイズのサッカードに働きかけて,学習が生じる可能性の2通りが考えられる.そこで視標の修正ステップに数百ミリ秒の遅延を与えたときの適応の有無を調べた.これらをもとにして,サッカードならびにバリスティックな随意運動一般における学習様式を考察する.