著者
芹沢 拙夫 市川 健 瀧川 雄一 露無 慎二 後藤 正夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.427-436, 1989-10-25
被引用文献数
3

1984年ころより, 静岡県においてキウイフルーツ(Actinidia Chinensis)に新しい細菌病の発生が認められた。本病の病徴は大きく二つの相に分けられた。一つは冬季から春先にかけて発生するもので, 樹幹や枝に亀裂を生じ, 赤褐色の隘出物が認められる。同時に, 外観は健全な腋芽や葉痕, 剪定痕, 枝の分岐点などに白色ないし赤褐色の細菌菌泥の隘出も認められる。第二は晩春から初夏にかけてで, 新たに展開した葉にまず水浸状斑を形成し, やがて拡大して大きさ2〜3mmの褐色の角斑となり黄色のハローを伴う。同時に, 新梢には亀裂を生じて潰瘍状を呈し, やがて先端は萎凋枯死する。花芽にも感染が認められ, 枯死あるいは花腐れ症状を呈する。葉や新梢, 花等の病斑上にも白色の菌泥が認められる。これらの病組織および菌泥より分離を行ったところ, つねに一定の白色細菌が得られた。分離細菌は有傷接種, 無傷接種ともにキウイフルーツおよびサルナシ(A.arguta)に対して強い病原性を有しており, 自然感染の病徴を再現した。葉位別にキウイフルーツ葉の感受性を調べたところ, 成熟直前のものが最も感受性が高く, より若いものや完全に成熟したものでは感受性が低下した。気象条件と本病の発生について考察した結果, 低温, 強風, 降雨が発病を助長しているものと思われた。薬剤による防除効果を検討した結果, ストマイ剤, カスガマイシン剤, 銅剤のいずれも有効であった。本病の病名をキウイフルーツかいよう病(bacterial canker of kiwifruit)としたい。
著者
Arwiyanto Triwidodo 坂田 完三 後藤 正夫 露無 慎二 瀧川 雄一
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.288-294, 1994
被引用文献数
2 5

ストレリチア(<i>Strelirtzia reginae</i> Banks)から分離された青枯病菌の非病原性菌株(Str-10 op型)を接種したトマトの根系から,非接種対照植物の根系よりも多量のトマチンが検出された。茎の組織内ではこのようなトマチン濃度の上昇は見られなかった。Str-10 op型の接種源濃度を10<sup>8</sup>から10<sup>9</sup>cfu/mlに増加すると,接種5日後における根部組織内のトマチン含量は113&mu;g/g根から152&mu;g/g根まで増加した。接種9日後にはトマチン含量は450&mu;g/g根まで増加した。この濃度は青枯病菌の病原性菌株の増殖を<i>in vitro</i>で抑制するのに十分な濃度であった。トマチンによる青枯病菌の発育抑制は静菌的であった。一方,Str-10 op菌株の培養ろ液及び加熱死菌で処理したトマト根部ではトマチン濃度の増大は見られなかった。
著者
露無 慎二 平田 久笑
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

品種特異的抵抗反応を誘導する非病原力エフェクターが同時にサプレッサー機能をも有するが、カンキツかいよう病菌の非病原力様でかいよう形成を司るエフェクター、PthA、もサプレッサー機能も持つ。我々は、PthAエフェクターが宿主植物であるカンキツのPectin Methyl Esterase (PEM)前駆体に特異的に結合することを発見した。このことから、PthAと結合出来ない他植物のPME前駆体遺伝子の導入、カンキツPME前駆体遺伝子への変異導入などによってこの結合をコントロールし、かいよう形成カスケードに導かないようにできる可能性を示すことができた。さらに、非病原力エフェクターと反応する植物因子を改変し、非病原力エフェクターのサプレッサー機能抑制することにより耐病性植物創出に導く可能性を示唆出来た。
著者
露無 慎二 舟久保 太一 堀 要 瀧川 雄一 後藤 正夫
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.294-302, 1985-07-25

Erwinia属軟腐病菌 (E. carotovora subsp. carotovora および E. chrysanthemi) を大根およびジャガイモに接種し, その腐敗組織内のペクチン質分解酵素活性を調べると, ペクチンリアーゼ活性がペクチン酸リアーゼ活性と同程度になるまで近づく場合があった。E. chrysanthemi (EC183) を大根熱水抽出液培地に培養すると, 両酵素の比活性が経時的に上昇した。さらに12種の植物抽出液について調べた結果, 全ての植物抽出液で同様な結果を得た。これらの結果から, 多くの植物抽出液中にはペクチン質 (ペクチン酸リアーゼの誘導物質を供給する) の他, ペクチンリアーゼの誘導物質であるDNA損傷物質が存在することが示唆された。そこで, これら12種の植物抽出液についてDNA損傷物質の存在をrecアッセイで調べた結果, 10種の植物抽出液にその存在を確認した。以上の結果から, Erwinia属軟腐病菌のペクチンリアーゼは植物体組織に存在するDNA損傷物質によって誘導される可能性が考えられ, 宿主植物の感染部位におけるその制御と病徴発現に果たす役割について考察した。