著者
安斉 了 和田 隆一 奥田 敏男 青木 仁久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.999-1002, 2002-10
被引用文献数
2 14

わが国における馬伝染性子宮炎の清浄化にPCRの野外応用が効果があるか否かを評価した.1998年から2001年の4年間に,ハイリスク馬検査と疫学調査のために国内の延べ4,026頭のサラブレッド繁殖牝馬および種牡馬から採取された7,534検体の生殖器スワブから,分離培養ならびに直接および培養PCR法によりTaylorella equigenitalisの検出を行った.その結果,PCR法により12頭の繁殖雌馬と1頭の種雄馬からT.equigenitalisが検出された.分離培養法では,その中の2頭からだけT.equigenitalisが分離された.T.equigenitalisが検出された馬は化学療法と外科手術の併用による治療を行ったところ,その後3年間に亘る追跡検査でT.equigenitalisは全く検出されなかった.今回の成績から,PCR法は野外において繁殖用馬の生殖器スワブからT.equigenitalisを検出する方法として分離培養法よりも高感度であることが証明された.さらに,馬伝染性子宮炎の清浄化達成には,PCR検査と治療の組み合わせが有効な手段であることが示唆された.