著者
片山 雅一 深山 美和子 古屋 聡子 桑本 康 帆保 誠二 安斉 了
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.139-143, 2003-03-20
参考文献数
13
被引用文献数
1 6

米国から輸入されたクオーターホース9頭中の3頭が, 輸入検疫期間中に発熱と下顎リンパの腫脹を呈した.輸入馬は所定の検査結果が陰性であったため解放されたが, 着地検査においてこの3頭から<I>Streptococcus equi subsp. equi</I> (腺疫菌) が分離された.その後, この乗馬クラブ内では腺疫がまん延したが, 週1回の鼻腔粘膜スワブ細菌検査と, その結果に基づく防疫指導を行った結果, 最終的に58頭中25頭 (43.1%) から腺疫菌が分離され, 最初の分離から22週後に乗馬クラブ内での流行は終息した.この間に分離された腺疫菌は, 集落型がムコイド型でSeM遺伝子型は1型であり, 従来の国内分離株とは異なっていた.また, 輸入馬9頭中4頭の血清抗体価に輸入後の低下が認められた.以上の成績から, 今回の集団発生事例は輸入馬の中に潜んでいた保菌馬に起因したことが証明された.
著者
安斉 了 和田 隆一 奥田 敏男 青木 仁久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.999-1002, 2002-10
被引用文献数
2 14

わが国における馬伝染性子宮炎の清浄化にPCRの野外応用が効果があるか否かを評価した.1998年から2001年の4年間に,ハイリスク馬検査と疫学調査のために国内の延べ4,026頭のサラブレッド繁殖牝馬および種牡馬から採取された7,534検体の生殖器スワブから,分離培養ならびに直接および培養PCR法によりTaylorella equigenitalisの検出を行った.その結果,PCR法により12頭の繁殖雌馬と1頭の種雄馬からT.equigenitalisが検出された.分離培養法では,その中の2頭からだけT.equigenitalisが分離された.T.equigenitalisが検出された馬は化学療法と外科手術の併用による治療を行ったところ,その後3年間に亘る追跡検査でT.equigenitalisは全く検出されなかった.今回の成績から,PCR法は野外において繁殖用馬の生殖器スワブからT.equigenitalisを検出する方法として分離培養法よりも高感度であることが証明された.さらに,馬伝染性子宮炎の清浄化達成には,PCR検査と治療の組み合わせが有効な手段であることが示唆された.
著者
高井 伸二 森下 大洋 西尾 恭 佐々木 由香子 椿 志郎 樋口 徹 萩原 紳太郎 仙波 裕之 加藤 昌克 瀬能 昇 安斉 了 鎌田 正信
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.681-684, 1994-08-15
被引用文献数
9

Rhodococcus equiの毒力マーカーである15-17kDa抗原に対するモノクローナル抗体を用いたコロニーブロット法を強毒株簡易同定法として開発し, 軽種馬生産牧場の土壌,母馬及び子馬糞便から分離した菌株のプラスミドプロファイルとの比較から疫学調査における本法の有用性を検討した. 子馬糞便由来778株, 母馬糞便由来170株及び土壌由来1,267株のそれぞれ238株, 6株及び85株がコロニーブロット陽性を示し, そのうち, それぞれ235株(98.7%), 6株(100%)及び75株(88.2%)で病原性プラスミドが検出された. 一方, コロニーブロット陰性を示した子馬糞便, 母馬糞便及び土壌分離株からランダムに50菌株を選び, プラスミドプロファイルを調べたところ何れの菌株においても病原性プラスミドは検出されなかった. 以上の成績から, 本法は疫学調査において信頼度の高い, 迅速簡易な強毒株同定法であることが示された.