- 著者
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樹林 千尋
阿部 秀樹
青柳 榮
- 出版者
- 東京薬科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2002
世界保健機構がWHO方式癌疼痛治療方針を発表して以来、モルヒネの消費は増大しており、先進国ではモルヒネ消費の主目的は癌治療と言われている。しかしながら、モルヒネには連用による耐性や依存を生じる深刻な欠点があり、モルヒネに代わる強力な非麻薬性鎮痛薬の開発が世界的に求められている。インカビラテインは最近角高Incarvillea sinensis(ノウゼンカツラ科)より発見された新奇モノテルペンアルカロイドである。本アルカロイドはモルヒネに匹敵する強力な鎮痛作用を示すことが見出され、その作用はオピオイド受容体よりもアデノシン受容体の関与が大きいことが示唆されていることから、非麻薬性鎮痛薬のリード化合物として期待される。本研究は、このような特異な化学構造と顕著な薬理活性を有するインカビラテインの全合成を完成させ、さらに、アデノシン受容体アゴニスト性の解明及びアナログ合成・活性評価へと展開し非オピオイド性鎮痛薬創製を目的とする。角嵩抽出物中にインカビラテインと共にインカビンCが共存することから、インカビラテインの生合成前駆体はインカビンCであると推定される。そこで初めにインカビンCの合成を行った。L-酒石酸より導いたシクロペンテノン誘導体、アルケニルスズ化合物、ヨウ化メチルの3成分連結法によりトリ置換シクロペンテノンを合成し、次いで分子内還元的Heck反応を経て(-)-インカビンCの合成を行った。次に、同様の経路により6-エピインカビリンを合成し、フェルラ酸の[2+2]光二量化反応によって得られたα-トルキシル酸と光延反応により結合することにより、目的とした(-)-インカビラティンの最初の全合成に成功した。