著者
瀬戸 真之 須江 彬人 石田 武 栗下 正臣 田村 俊和
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.314-323, 2010-05-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
27
被引用文献数
5 2

福島県の御霊櫃峠(約900 m)には,西北西の強風にさらされることが多い斜面に構造土が存在する.この構造土は,扁平礫が露出した帯と植生が密生した帯とが,数十cm~2 mほどの間隔で交互に配列している.両方の帯とも傾斜方向にかかわらず,ほぼ西北西–東南東の卓越風向に伸びる.伸びの方向が最大傾斜方向と直交する所では階状土,一致する所や傾斜が緩い所では縞状土の形状を示し,本稿では「植被階状礫縞」と呼ぶ.本研究では,低標高山地斜面に構造土が発達する点に注目し,その詳細を記載した.階状土部分の断面では,階段状を示すのは堆積物上面のみで,堆積物と基岩との境界面はほぼ一様の傾斜で,地表の礫は植被に乗り上げている.植被階状礫縞は,強風により積雪を欠く裸地で植被が卓越風向に平行な縞状に発達し,凍結・融解で傾斜方向に礫が移動し,卓越風向にほぼ直交する向きの斜面では植被に堰き止められ,ほぼ一致する向きの斜面ではそのまま移動して形成されたもので,現在も発達中と考えた.