著者
須磨 幸蔵 円治 康浩 堀 原一 種谷 節郎 堺 裕 小笠原 長康 谷口 堯 榊原 宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.59-64, 1974-01-15

植込式心臓ペースメーカーが諸外国6)10),わが国28)で用いられるようになってから約10年を経過する。この間,以前カエルやイヌなどの動物において認められていた電気生理学上の諸現象,たとえば絶対不応期,相対不応期,細動受攻期(vulnerable period),過常期1),Wedensky現象17)32)などが,ヒトの心臓でも実際に確められるようになってきた。 過常期(supernormal phase)は相対不応期の終りにおける一過性に興奮性の高まる時期をさす。興奮性にはexcitability (被刺激性)とconductivity (伝導性)の2つの面がある。より弱い刺激で反応が起これば被刺激性が高いとされる。より容易に,またはより早く興奮が伝導されれば伝導性がよいとされる。両者とも興奮性が高まった状態である。過常期にも,この両者に相当する場合があり,この時期においてその前後の時期にくらべて弱い刺激で反応する過常期興奮(supernormal excita—bility)の場合と興奮の伝導が速く容易になる過常期伝導(supernormal conductivity)の場合とがあり,両者を含めて過常性(supernormality)と呼ぶこともできる。
著者
須磨 幸蔵
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.269-276, 1974-10-30 (Released:2011-03-09)
参考文献数
35

Einthovenの心電計の発明によって心臓病の診断は大きな進歩をとげた。一方, この十年余ペースメーカーの出現によって房室ブロックをはじめとする不整脈の治療は大きな変革をとげ, エレクトロニクスは心臓病の診断と治療の両面に非常に大きな役割を果たすに至った。1976年東京において第5回国際ペースメーカーシンポジウムが開催されにことになり, わが国においても一般の関心が高まると考えられるが, ここでは房室ブロックおよびペースメーカーについて過去から現在までの概説を試みる。
著者
石川 自然 安藤 正彦 辻 隆之 須磨 幸蔵 高尾 篤良
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.11, pp.1632-1637, 1974

われわれは雑腫成犬を使用しての実験中,たまたままれにみるイヌの心膜欠損に遭遇した.<BR>本心膜欠損例は,'L内筍形の合併はなく,'t前面左右に及ぶ広範囲の心膜欠損があり,ヒトにおいてもまれと思われるtypeの1つである、また,形態学上興味深い事は,特に左室側の心膜辺縁の直下に深い圧痕がみられ,さらに左側のN.phrenicusが露出されていた事である.現在までに,ヒトの心膜欠損症の臨床症状の1つとして胸痛があげられているが,本症例の場合,圧痕による冠状動脈の圧迫は形態学上胸痛の成因を示唆している様に思われる.<BR>発生学的には,横隔膜神経が左側心膜を伴っていない事から,左側のpleuropericardial-membraneの不完全な発育によって肺芽が胸腔と心腔との間にある空隙に突入しながら発育したためと思われる.心膜欠損症の発生機序については,不明なところがまだ多く,今後さらに検討する必要があると思われる.