- 著者
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須貝 千里
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.4, pp.21-36, 2015-04-10 (Released:2020-05-26)
① 本報告は、田中実氏とともに立ち上げ、おおよそ二五年余り取り組んできた「文学研究と国語教育研究(実践)の相互乗り入れ」という〈事業〉の一環としてなされる。② 問題を本大会・文学研究の部のテーマである「教科書と文学」に焦点化するならば、このテーマは「国語・教科書と文学・作品」というように把握し直されなければならない。このことによって、与えられたテーマの「問題提起」を掘り起こすことができるからである。とすると、包含する課題は次のようになる。「国語」と「文学」、「教科書」と「作品」、「国語」と「教科書」、「文学」と「作品」、「国語」と「日本語」、「教える本」と「学ぶ本」、「物語」と「小説」、「作品」と「テクスト」などなど、「古文」と「漢文」、「古文・漢文」と「現代文」、「散文」と「韻文」もあるか。さらに課題は細分化できるが、本報告ではそれらを網羅的に論ずる時間は与えられていない。大森荘蔵は「生活上の真偽の分類」を「世界観上の真偽の分類」としてとらえ直し、世界観の転換という課題を提起したが、私はここから浮上してくる問題との関わりで、「国語・教科書と文学・作品」について、総括的に問題提起したい。この提起は、「歴史教科書問題」よりも「国語教科書問題」の方がより根源的問題であることを明らかにしていくはずである。③ 本報告は、「国語科」の壊し方について、文学作品の教材価値とともに論ずる。そのことによって、「国語科」からの文学作品の排除、あるいは戦略的撤退論に対して、「国語科」に文学作品が居座り続けることの居心地の悪さ、この立場に立って「国語科」の壊し方とそのための諸課題を提起することになる。この提起は、ポストモダン思想の台頭によって解体されてしまった「読むこと」の根拠の再構築を〈原文〉の〈影〉の働きに着目することによって図り、〈近代の物語文学〉と〈近代小説〉の違いを明らかにし、〈主体〉の構築という課題に挑むことによって、文学研究と国語教育研究(実践)の新たな地平を切りひらくことを目指しているのである。なお、「文学研究と国語教育研究(実践)の相互乗り入れ」という〈事業〉自体が居座り続けることの居心地の悪さを前提にしている。