著者
飯島 直樹
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.128, no.3, pp.1-36, 2019 (Released:2021-08-26)

元帥府とは1898年に天皇の「軍事上ニ於テ最高顧問」の役割を帯びて設置された機関である。一方で、1903年に設置された軍事参議院は天皇の帷幄で重要軍務の諮詢を受けることを目的とし、元帥のほか陸海軍要職者から構成され、多数決制や議長の表決権などの議事規程も備えた合議制諮詢機関であった。 両機関は「軍事顧問府」として宮中に存在し、戦前は枢密院と対比されるような国家機関として位置づけられていたにも関わらず、先行研究では陸海軍の運用統一を図る統帥機関として有効に機能しなかったという低評価が定着していた。 そこで本稿では、大元帥たる天皇が求めた「軍事顧問府」という視点に改めて着目し、軍事輔弼機関としての元帥府・軍事参議院の成立過程を再検討することで、日清・日露戦間期における天皇と陸海軍との関係形成の新たな一側面を描出することを目的とした。その成果は以下の通りである。 元帥府の設置は、日清戦後の軍制改革で焦点となっていた監軍部廃止と特命検閲使の不在化を回避することが直接的な要因であった。ただし、その背景には明治天皇が個人的に信頼し自らの軍事顧問官と認識していた山県や小松宮彰仁親王ら現役大将の現役留置の意図も含意されていた。明治天皇は疑念のある帷幄上奏事項を積極的に諮詢し、元帥全員一致の奉答を得ることで、当局と元帥府との「協同一致」による輔弼を求めていたのである。 一方で、明確な議事規程がないが故に合議の拘束性が弱い元帥府では、陸海軍当局や元帥間でも意見が一致しない事態も生じ、「軍事顧問府」としての限界を次第に露呈するようになる。議事規程を整備し構成員に元帥を含む軍事参議院設置は、天皇の帷幄における「協同一致」の論理を阻害しかねない元帥府の改革が志向された結果であった。このことは、「軍事顧問府」の制度化とともに、大元帥たる天皇の裁可の制度化をも意味していたのである。
著者
飯島 直樹
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.129, no.8, pp.1-37, 2020 (Released:2021-09-09)

「協同一致」の論理とは、陸海軍が完全に意見一致することで、軍事協同作戦の遂行が可能になるという論理であるとともに、天皇への輔弼責任の保障という軍による輔弼の在り方を建前とした、陸海軍間や他の国家機関との間における自己正当化の論理だった。本稿は、「協同一致」の輔弼責任を保障していた元帥府・軍事参議院を分析軸として、昭和戦前期における陸海軍関係の一端を解明することを目的とした。 日露戦後、軍事参議院は戦闘用兵事項について軍政・軍令機関の「協同一致」の輔弼責任を保障する役割を担った。元帥府には国防用兵事項について統帥部が諮詢奏請、元帥会議による全員一致の奉答を経て裁可を仰いだ。両統帥部が「協同一致」の輔弼責任を元帥府奉答で仮託することで、内閣と対等の立場で国防用兵事項の決定に関与するという政治的正当性を具現化していた。 この「協同一致」の論理が動揺したのが、ロンドン条約批准問題だった。参謀本部は兵力量改訂を両統帥部の「協同一致」の連携で行うことを当然視していたが、海軍では多数決制や議長表決権のある軍事参議会の場で条約否決を目指す艦隊派への対応に忙殺され、陸軍との連携が疎かになった。参謀本部では海軍の紛争への関与を回避したい上層部と、将来の陸軍軍縮や協同作戦策定を見据えて海軍との「協同一致」の維持を重視する中堅層が対立したが、結局は海軍単独軍事参議会開催で妥協した。このことは、陸海軍関係の観点では「協同一致」の論理の綻びを示すものであった一方、枢密院の審議方針に影響を及ぼすなど、他の国家機関に対しては軍の表面的な「協同一致」が有効に作用していたことを示す。 最後に、「協同一致」の論理に依拠してきた陸海軍関係がロンドン条約の段階で動揺したことは、戦時期の政策や作戦面での陸海軍対立の淵源となったこと、戦時期に海軍を「協同一致」の下に牽制するために陸軍で元帥府活用構想が浮上することを展望した。
著者
飯島 直樹 青木 秀馬 今村 淳一 瀧口 雅章
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1477-1482, 2009 (Released:2010-06-18)
参考文献数
6

ピストンリングの低張力化がガソリンエンジンのピストン摩擦力とオイル消費に及ぼす影響について検討するために,浮動ライナ法とSトレース法により両者の同時測定を行った.各リングの低張力化による摩擦力とオイル消費への寄与率について解析を行い,その原因をピストンおよびリング周りの油膜観察により確認した.