著者
岡村 かおり 前田 翔平 飯田 則利 佐藤 昌司 米本 大貴 飯田 浩一 和田 純平 卜部 省悟
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.278-285, 2019-04-20 (Released:2019-04-12)
参考文献数
72

胎児内胎児は多胎の発生過程で一児が他児に取り込まれた稀な奇形で,奇形腫とは異なる病態であるが,予後に大きく関わるため両者の鑑別は重要である.大半は新生児期から乳児期に発見され,液体で満たされた囊胞内に骨構造を有する充実成分と,充実成分へ流入する血管を認めるといった超音波所見を呈し,診断の参考となり得る.今回,我々は比較的高度な身体器官の形成を認め,また特徴的な画像所見から,出生前診断された1例を経験した.腫瘤は出生後も増大し哺乳障害を認めるようになったため,新生児期に手術を行った.MRIやCTは脊椎構造の有無,栄養血管や周辺臓器との位置関係を把握でき,手術時期やアプローチ法の決定に有用である.
著者
岡村 かおり 梶原 啓資 中尾 真 飯田 則利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1278-1283, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)
参考文献数
22

症例は胎児期に重複膀胱が疑われ,出生後に鎖肛を伴わない直腸膣前庭瘻の診断で人工肛門を造設した女児.術中に管状型回腸・全結腸重複症が判明し,また重複尿道,重複膣,重複子宮を合併していた.6生月に会陰部横切開で直腸膣瘻閉鎖術および重複直腸側々吻合術を施行したが,直腸膣瘻が再発し,8生月に後方矢状切開で直腸膣瘻再閉鎖術,10生月に重複回腸・上行結腸切除,隔壁部分切離および人工肛門閉鎖術を行った.術後2年の現在,腸管の通過障害はなく経過は良好である.今後,妊娠・出産を含めた長期的フォローアップが重要である.
著者
高橋 良彰 伊崎 智子 飯田 則利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.75-79, 2017-02-20 (Released:2017-02-20)
参考文献数
13

子宮腟溜血腫はまれな疾患で,外陰および腟の奇形により,第二次性徴発現時期に達してから発症することが多い.当科で子宮腟溜血腫を呈した2 例を経験したので報告する.2 例ともに11歳で間欠的腹痛を主訴に前医を受診し,卵巣囊腫茎捻転が疑われ当院紹介となった.症例1 は卵巣囊腫茎捻転の術前診断で緊急開腹術を施行したところ両側卵巣は正常であったが,子宮および膣内腔が血液で充満しており子宮腟溜血腫と診断した.外陰部診察で腟横中隔と診断し,開窓術を施行した.症例2 は外陰部診察で腟口の閉鎖を認め,術前に腟閉鎖と診断可能であった.術中診断は下部腟欠損症で,腟盲端部を腟入口部まで牽引吻合する単純再建術を施行した.2 例ともに順調に月経がみられている.年長女児でTanner 分類がII~III 度であるにもかかわらず初経発来がなく,間欠的な下腹部痛を訴える症例は子宮腟溜血腫を疑うことが大切である.