- 著者
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渡邉 瑞貴
領田 優太
浅野 理沙
Khamb Bilon
薄田 晃佑
飯田 圭介
岩田 淳
佐藤 慎一
酒井 寿郎
長澤 和夫
上杉 志成
- 出版者
- 天然有機化合物討論会実行委員会
- 雑誌
- 天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
- 巻号頁・発行日
- pp.Oral15, 2014 (Released:2018-07-19)
1. 背景 現代人を悩ます生活習慣病の一つ、脂質異常症(高脂血症)は肥満など多くの疾病の起因となる。それら多数の疾病の予防・治療のためにも、脂質生合成機構の制御と解析は重要な課題である。 脂質生合成において、転写調節因子SREBP(Sterol regulatory element- binding protein)は中心的な役割を担う(図1)1。小胞体膜貫通型タンパク質として存在する前駆体SREBPは、キャリアータンパク質SCAP(SREBP cleavage-activating protein)と複合体を形成している。この複合体は、脂質レベルが低下すると小胞体からゴルジ体に輸送される。ゴルジ体において前駆体SREBPは酵素による二度の切断を受けて活性型となる。活性型SREBPは核に移行し、転写因子として脂質生合成に関する遺伝子群の発現を亢進する。ステロールや脂肪酸などの脂質類が産生される。 SREBPの活性化は内因性物質であるステロールによって厳密に制御されている。ステロール過多になると、ステロールはSCAPに直接作用し、SREBP/SCAP複合体の小胞体からゴルジ体への輸送を阻害する。脂質生合成は種々の複雑な制御を受けることが知られており、ステロール以外の内因性物質による直接的なSREBP活性化調節機構の存在が予想される。しかし、その詳細は未だ不明な点が残る。 私たちの研究室が化合物ライブラリーから見出した合成小分子ファトスタチン(1, 図2)は、ヒト細胞内でSREBPの活性化を選択的に阻害して脂質生合成を抑制する2,3。ファトスタチンは、SREBP活性化を阻害する初めての非ステロール合成化合物となった。さらに私たちの研究室は、ファトスタチンを誘導体展開し、ファトスタチンよりも10倍阻害活性に優れ、経口投与可能なFGH10019(2)も報告した4。一連のケミカルバイオロジー研究によって、ファトスタチンはステロールと同じSCAPを直接の生体内標的とするが、ステロールとは異なる部位に作用することを示した。この結果は、ファトスタチン様に作用する、ステロール以外の内因性物質の存在の可能性を示唆する。2. 新たなSREBP制御天然化合物の発見 以上をふまえ私たちは、SREBP活性化に関わる新規内因性物質の探索を目的に、280種の脂質化合物を新たにスクリーニングした。その結果、細胞内でSREBPの活性化を阻害する複数の内因性脂質化合物が見出された。これら見出された化合物類は、濃度依存的にSREBPの活性化を阻害することがわかった。さらに、ある一連の内因性天然脂質化合物類は、ステロールと同様にSREBPの小胞体からゴルジ体への輸送段階で活性化を阻害するが、その作用メカニズムはステロールと異なることが示唆された(図3)。CHO-K1細胞をステロールで処理すると活性型SREBPが消失し、前駆体SREBPが蓄積する。一方、内因性天然脂質化合物Aで処理すると、活性型および前駆体両方のSREBPが減少した。これら新たに見出した内因性脂質化合物類とSREBPとの直接的な関係について、現在のところ報告はない。これら脂質化合物はSREBP活性化を制御する新たな内因性物質の可能性がある。3. SREBP制御天然化合物の作用メカニズムの解明研究 スクリーニング(View PDFfor the rest of the abstract.)