著者
垣花 真一郎 安藤 寿康 小山 麻紀 飯高 晶子 菅原 いづみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.295-308, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
16 7

3-4歳児55名を対象に, かな識字能力の4つの側面の認知的規定因を検討した。識字能力として, 文字音知識, 特殊表記(拗音, 長音, 促音)の読み, 長音単語の表記知識, 読みの流暢性を対象とし, 関わりを検討する認知的要因として, (1)モーラ意識, (2)数唱, (3)非単語復唱, (4)語彙, (5)視知覚技能を対象とした。文字音知識の上位群は, (1)-(5)すべてで下位群を有意に上回っていた。ただし, 文字音知識の群を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果, 独立した寄与をしていたのは, モーラ意識のみであった。特殊表記に関しては, 長音の読みの上位群は下位群に比べ, 非単語復唱の成績が高かったが, 促音, 拗音については関係性が見出せた認知的要因はなかった。長音単語の表記知識は, 語彙との間で相関がみられ, 長音部の表記違い(e.g., さとお)も正答とみなした場合, モーラ意識, 非単語復唱, 視知覚技能との相関が見出された。読みの流暢性に関しては, 数唱, 非単語復唱のほか, 長音単語の表記知識との相関が見出された。本研究の結果は, かな識字に対する各認知的要因の相対的重要性は, 識字の発達に伴い変化することを示唆している。