著者
高鳥 浩介 高橋 恵子 鈴木 敏正 宇田川 俊一 倉田 浩
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.307-312_1, 1975-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15

市販カビ醗酵型, 自然醗酵型サラミソーセージ31試料について菌類分布を調査し, 主要菌としてカビ醗酵型より P. cyclopium, P. viridicatum など Penicillum を,自然醗酵型より Cephalosporium sp., Mucor mucedo, M. racemosus, Aspergillus versicolor, P. cyclopium などを分離した. カビ醗酵型の Penicillum は主として加工上のスターターと考えられるが, 分離株の penicillic acid 産生能は認められず, カビ醗酵型ソーセージなどは食品衛生上一応支障ないものと考えられる.
著者
高橋 恵子
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

目的:親しい人間関係の発達を理解する代表的な理論である「愛着理論」と「ソーシャル・ネットワーク理論」を理論的・実証的に吟味した上で,両者を統合する理論として筆者が構築してきた「愛情の関係モデル」を提案し,妥当性を実証的に検討することをねらいとしたものである。研究の内容:ステップ1は2理論の基本的な相違を明らかにした上で,先行研究を概観し,人間関係は愛着をその一部として含むソーシャル・ネットワークとして捉えることが有効であるという立場から,筆者の「愛情の関係モデル」を提案した。「愛情の関係モデル」は,個人が持つ複数の重要な他者からなる親しい関係の性質を正確に記述し,さらに,個々人の複雑な関係のネットワークを類型化して個別の特徴をとらえて見ようというものである。ステップ2では「愛着理論」の測定具(Strange Situation Procedure,Doll Play,Attachment Interview,Attachment style)をわが国で使用する場合の問題を検討し,「愛情の関係モデル」の測定具(愛情の関係スケール,ARSと絵画愛情の関係検査,PART)を提案した。ステップ3では幼児から高齢者までの研究協力者から得た実証的な資料について4つの研究をした。最後に,愛着の機能を認めたうえで,それをソーシャル・ネットワークの中に位置づけることの大切さ,しかも,ソーシャル・ネットワークの個人差を記述することを可能にした「愛情の関係モデル」の重要さ,について論じた。
著者
菱沼 典子 石川 道子 高橋 恵子 松本 直子 鈴木 久美 内田 千佳子 金澤 淳子 吉川 菜穂子 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.76-82, 2007-06
被引用文献数
1 1

目的:大学内に市民が立ち寄り活用できる健康情報サービススポットが開設されて3年目になる。この健康情報サービススポットの広報活動が,利用者の増加に有用であったかどうかを検討し,今後の広報活動への示唆を得ることを目的に本研究を行った。方法:調査対象期間は2004年4月〜2006年12月であり,健康情報サービススポットの記録と,研究者間での振り返りからデータを収集した。広報活動を時間軸に沿って整理し,来訪者数,リピーター,健康相談者数,ならびに当該地域住民,当該自治体,看護職・司書等からの協力や連携等の問い合わせ件数の推移を調べた。結果:3年間の広報活動の内容は<知ってもらう宣伝>と<来てもらう催事>に大別され,<近所付き合い>から始め<町のキーパーソンとの連携>によって推進されていた。<知ってもらう宣伝>は,ポスターやチラシ,案内板や看板,地域の行事への参加,ホームページの活用で,イメージキャラクターを用い,サービス内容を選択して宣伝内容としていた。<来てもらう催事>はハーブティや抹茶のサービス,ランチタイムミニ健康講座・ミニコンサートの定期的催しであった。健康情報サービススポットの最も重要な活動である健康相談の月平均利用者は,2004年31.7名から2006年88.4名と増加し,2005年の相談者の12%がリピーターであった。宣伝媒体を受け入れている店舗数は2006年現在,ポスター掲示が31件,カードの設置が10件で,自治体や自治体内の諸機関からの連携依頼や専門職の見学もあった。考察:これらの結果から,健康情報サービススポットの利用者が増え,その存在が広く知られてきていることが確認でき,広報活動は有用であったと考える。大学と地域との連携や,広報活動の中での健康情報サービスの実施について考察した。
著者
高橋 恵子 奥瀬 哲 八代 信義 佐藤 豪 岩渕 次郎
出版者
旭川医科大学
雑誌
旭川医科大学紀要. 一般教育 (ISSN:03878090)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.11-26, 1997-03

出版社版1)尺度得点の因子分析からACに関連した自我状態で,神経性過食症は感情抑制とそれによる慢性的な陰性感情の蓄積傾向を顕著に示し,不適応感が強く,不安-抑鬱気分を伴った過敏な対人関係,過剰適応傾向が示された. 2)消化性潰瘍は,不安-抑鬱気分などの心理状態についての自覚が乏しい傾向にあった. 3)過換気症候群や神経性嘔吐の患者群は,理性的,知的に自己を統制し,外界に対して望ましい社会性を示そうとする意識が高かった.一方,不安感などの内面的問題に関しては防衛的傾向にあり,抑圧的で緊張の強い適応様式が窺われた. 4)また過敏性腸症候群の患者のエゴグラムは特にきわだった傾向は見出されなかった
著者
服部 遊 高橋 恵子 石川 稜威男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.202, pp.19-24, 2005-07-16
被引用文献数
1

電気的再生音の微小レベルの物理特性と人の感覚的評価との関係を調べる目的で非線形な音質調整法を開発した。その処理では、音源の周波数帯域を分割し、選択した帯域の瞬時値を冪乗処理して振幅を圧縮または伸長し、非線形処理に伴う奇数次の高調波成分を除去して合成して出力する。圧縮すると微小レベルの信号ほど増幅率が高くなり、伸長すると逆に減衰率が高くなる。人の聴覚特性を考慮して可聴周波数帯域を分割し、その内の一つの帯域の信号だけを圧縮・伸長処理した音楽データを用いて"やわらかい""かたい"といった評価語との関係を調べた。評価には一対比較法を用い、5kHz付近を伸長すると評価語"やわらかい"との関係が有為であること、本調整法が有効であることを確認した。
著者
高橋 恵子 多賀 正尊 伊藤 玲子 丹羽 保晴 林 雄三 中地 敬 楠 洋一郎 濱谷 清裕
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.324, 2010 (Released:2010-12-01)

原爆被爆者成人甲状腺乳頭がんの分子生物学的解析より、RET/PTC再配列と放射線量との有意な関連に加えて、遺伝子変異が未同定、即ちRET、NTRK1、BRAFおよびRAS遺伝子に変異を持たない甲状腺乳頭がん症例も放射線量に関係することが見出された。このことは、RET/PTC遺伝子再配列以外にも、放射線関連成人甲状腺乳頭発がんに関与する遺伝子変異が存在することを示唆する。 我々は遺伝子再配列型の癌遺伝子に焦点をおき、遺伝子変異が未同定の甲状腺乳頭がん症例に生じている遺伝子変異の解析を行った。その結果、甲状腺乳頭がんではまだ報告されていない新しい型の遺伝子再配列、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子の再配列を初めて見出した。被曝症例19例中10例にALK遺伝子再配列を見出したが、非被曝症例6例中にはいずれにもこの変異は検出されなかった。現在、ALK再配列のパートナー遺伝子を同定中である。これらの結果より、放射線関連成人甲状腺乳頭発がんにおいて、RET/PTC再配列および ALK再配列を主とする染色体再配列が重要な役割を担うことが示唆される。
著者
高橋 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.65-75, 1970-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究は, すでに報告した大学・高校生の結果と比較しつつ中学生の依存性の様相をとらえ, 青年期における依存性の発達的変容を考える資料を得ようとするものであった。その結果, 明らかにされたのは次の点であった。1) 依存構造対象間の機能分化の程度は, 一般的にいえば中学生では, 高校・大学生に比べ明確ではなかった。その証拠としては, まず第1に対象間の機能分化がすすみ, よく構造化された, 単一の焦点を持つF型は中学生では25%でしかなく, 高校・大学生に比べて少ない。そして, 第2に, F型と判定される場合にも他の型における同じ対象よりはという相対的な意味では, 焦点となっている対象が中核的とはいえるが, 大学生の同じ型にくらべれば, 機能分化が明確でないと思われる型がみられた。たとえば, 愛情の対象型では, 得点からいえば焦点と判定される愛情の対象であるが, たしかに, 他の型における愛情の対象とは明らかに機能が異なり, 中核的であるとはいえ親友もまた重視されていて, 〈愛情の対象-親友〉型という2F型的な特徴をもっていたのである。また, 親友型でも, 親友よりも母親の方がより中核的と思われるところがあった, という具合である。また, 依存構造の発達の指標のひとつとして, 依存の対象の数の増加・範囲の拡大ということが考えられたのであるが (高橋, 尊1968a), 中学生では, 高校一大学生に比べ, 愛情の対象, 敬する人などに対しての無答が多いことが注目された。つまり, F型でも, そして同じ焦点のF型でも, また型としてのよい構造的特性をそなえていても, 中学生ではそこに含まれる要素がまだ少なく, 発達につれて変化する可能性があるといえるのである。2) 依存要求の強度依存要求の強度は予想どおり, 中学生が高校・大学生に比べて高いということはなかった。母親型が上位・下位群に同程度出現するのに対し, 愛情の対象は上位群でのみ出現しやすいということからすれば, 依存要求の強度は, 幼少時に獲得されたものが一定不変であるとか, 成長につれて減少していくとか考えるのは妥当ではなく, むしろ, ある対象, たとえば愛情の対象に出会ったということにより, 逆にそれ以前より依存要求が強くなるということすらあると考えられよう。3) 中学生女子における依存性依存構造の内容についてみれば, 中学生における依存の対象には次のような特徴がみられた。(1) 単一の焦点となる対象としては, 中学生では, 母親が特に多く, 次が愛情の対象, ついで親友が多く, 父親, きょうだいは焦点になりにくい。 (母親は女子においては一貫して重要な依存行動のむけられる対象であるが, 中学生ではまたいちだんとそうである。(3) 逆に, 父親は女子においては一貫して依存行動をひきおこしにくい対象であるが, 中学生では大学生や高校生, とくに後者に比べれば, かなり重要な対象に近いといえる。しかし, この傾向も, 1年生で顕著なだけで学年の上昇につれて父一娘間には心理的な距離がでてくるし, また, 母親とともになら対象になりうるという高校生でみられた特徴がやはりすでに現われている。父親はなぜ単一では依存の対象になりにくいのであろうか。ひとつには, 父親が「たよりにしている」とか, 様式 (4) とかの道具的あるいは間接的ニュアンスの強い依存行動の向けられる対象になることを考えると, 父親は情緒的な依存行動の対象にはもともとなりにくいのかもしれない。父一娘関係は依存行動というものではなく, 別の角度からとらえることがふさわしいものとも考えられる。が, また一方では, 母親とともにしか対象になりにくいということが, 母一娘関係の中に, 母・父の夫婦関係が微妙に影響していることを示唆していると思われる。(4) MFないし準MF型でも, 母親は対象のうちのひとりになることがもっとも多く, また, 2F, 準2F型では<母親-父親>という組合わせが, また, 3F, 準3F 型では<母親-父親-X>というものが多くなっており, 中学生では依存行動の対象としては, なによりも母親が, そして母親に伴なわれるという条件つきで父親が, 重要だといえる。(5) 親友は, 高校生にくらべ全般的には中学生ではあまり重要な対象ではない。焦点となった親友の場合でも, 必ずしも中核的とはいえないものもあった。(6}愛情の対象は, 中学1年生からすでにわずかながら出現している。が, 全般的には, 現実にもいないし, いると仮定もできないというものが多い。そして, 愛情の対象が焦点になった型においても, 愛情の対象は, 次に重要な親友とともに中核になっているという未熟さをもっていた。
著者
高橋 恵子 田松 花梨 松本 宏明 鮎川 順之介 今泉 紀栄 三道 なぎさ 柳生 奈緒 栗田 裕生 長谷川 啓三 若島 孔文
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.3-17, 2012-07-21 (Released:2017-07-21)
被引用文献数
1

東日本大震災の発災後に被災者自身の手によって行われた「震災川柳」の取り組みについて、参加者が震災川柳の心理的効果をどのように認知していたかを明らかにし、今後の災害後の心理的支援を検討する手がかりを得ることを目的とする。本研究は、調査1(インタビュー調査)と調査2(質問紙調査)によって構成される。調査1では、震災川柳の役割には5つのカテゴリーがあることが示され、さらに、個人内/個人間において効用を持つことが考えられた。さらに調査2では、震災川柳を自ら詠む人(投稿参加)と発表される川柳を聞く人(傍聴参加)という参加形態と、心理的効果の認知との関連を検討した。その結果、投稿参加、傍聴参加ともに、震災川柳により「明るい気持ちになる」ことが分かった。これらのことから、震災という非常事態において、震災川柳が心理的支援の一つの形態として有効である可能性が示唆された。
著者
瀬戸屋 希 萱間 真美 宮本 有紀 安保 寛明 林 亜希子 沢田 秋 船越 明子 小市 理恵子 木村 美枝子 矢内 里英 瀬尾 智美 瀬尾 千晶 高橋 恵子 秋山 美紀 長澤 利枝 立石 彩美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_41-1_51, 2008-03-20 (Released:2011-08-30)
被引用文献数
16 10

精神障害者に対する地域ケア施策において,精神科訪問看護は重要な役割を担っている.その効果については,精神科病棟への再入院の防止と在院日数の減少に影響を与えることが報告されているものの,提供されているケアの具体的な内容については十分に検討されていない.本研究は,精神科訪問看護で提供されているケア内容を網羅するケアリストを作成することを目的に,精神科訪問看護師18名を対象に,行った看護ケア内容についてインタビュー調査を行った.得られた援助内容について質的に分析し,「日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大」「対人関係の維持・構築」「家族関係の調整」「精神症状の悪化や増悪を防ぐ」「身体症状の発症や進行を防ぐ」「ケアの連携」「社会資源の活用」「対象者のエンパワメント」の8つのケアの焦点と,それぞれの焦点について合計58のケア領域と222のケアコンテンツからなるリストを作成した.今後は,このリストを用いてケアの内容と量を測定していくことが期待される.
著者
高橋 恵子
出版者
弘前大学保健管理センター
雑誌
弘前大学保健管理概要 (ISSN:02865890)
巻号頁・発行日
no.30, pp.14-21, 2009

大学生の生活習慣に関する意識調査を行った結果,ほとんどの学生は自らの生活習慣を望ましいものと捉えておらず,生活習慣に対する評価は低かった。自らを健康的でないとする群では無気力が認められた一方で,健康群では他者に相談したりリラックスする等の積極的な健康行動が認められた。適切な食習慣をもつ学生は,抑うつ・不安,無気力等の陰性感情得点が低く,ストレス状況下における感情の抑圧傾向が少なかった。運動習慣はリラックスによる対処行動と関連した。睡眠習慣の阻害要因としては無力感,怒り,イライラなどの陰性感情,および感情の抑圧傾向があり,促進要因としては人に相談したりリラックスするストレス対処があげられた。日頃ストレスが多いと感じる学生は,少ないと感じる学生に比べて抑うつ・不安,怒り・不機嫌,無気力の得点が高かった。ストレスが少ない学生は,そうでない学生に比べてリラックスの対処が適切であった。生活習慣の修正は多くの学生にとって動機付けの難しさがあるが,身近なストレスと生活習慣を関連づけた対人援助的な介入は,健康行動のセルフマネージメントカを育成する有効な手がかりであると考えられる。
著者
高橋 恵子
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.189-200, 2005-03-20
被引用文献数
1

The purpose of this study is to examine the role of psychological factors in influencing life-style. We examined the relationships among emotion, stress-coping, and life-style. A survey of the health consciousness of university students reveals that most of the students feel that their life-style is undesirable and suffer much stress. However they are not conscious of their life-style. Students who have negative emotions (depression, anxiety, anger and languor) report that they do not sleep very well. Languorous students who suffer chronic stress report having an uncontrolled life-style. In regard to coping behavior, students who have good social support (consulting with friends and other persons) report having a good life-style. Students who have a positive thinking style and feel relaxed ordinarily report good control of their life-style and students who make use of a problem focused coping style exercise more and show good control of their intake of alcohol. Poor sleeping habits were found to be related to suppressions of emotions. Students who are less aggressive report well-controlled food intake as part of their life-style. It takes a long time to construct one's own life-style. The university student years are an important stage to establish the life-style. This study reveals some important roles of stress to life-style, however it is needed to study more widely about the relationships between psychological factors and life-style.
著者
高橋 恵子 田松 花梨 松本 宏明 鮎川 順之介 今泉 紀栄 三道 なぎさ 柳生 奈緒 栗田 裕生 長谷川 啓三 若島 孔文
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-17, 2012-07-21

東日本大震災の発災後に被災者自身の手によって行われた「震災川柳」の取り組みについて、参加者が震災川柳の心理的効果をどのように認知していたかを明らかにし、今後の災害後の心理的支援を検討する手がかりを得ることを目的とする。本研究は、調査1(インタビュー調査)と調査2(質問紙調査)によって構成される。調査1では、震災川柳の役割には5つのカテゴリーがあることが示され、さらに、個人内/個人間において効用を持つことが考えられた。さらに調査2では、震災川柳を自ら詠む人(投稿参加)と発表される川柳を聞く人(傍聴参加)という参加形態と、心理的効果の認知との関連を検討した。その結果、投稿参加、傍聴参加ともに、震災川柳により「明るい気持ちになる」ことが分かった。これらのことから、震災という非常事態において、震災川柳が心理的支援の一つの形態として有効である可能性が示唆された。
著者
高橋 恵子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.7-16, 60, 1968-03-31

本研究は.依存性がいちおう発達の最終段階に達していると思われる青年後期において,それがどのような様相を呈しているかを,依存構造というモデルをとおして解明しようとするものであった。その結果明らかにされたのは次の3点である。 1)依存構造:依存構造には限られてはいるがかなり多くのさまざまな対象が含まれ,それぞれ異なった機能を与えられ,分化した位置を占めている。そして,この対象間の機能分化は,各個人が相対的に強い依存要求をひきおこす,その個人の存在を支える機能を果たすという意味で中核になっている単数または複数の焦点を中心に,いく人かの対象がそれぞれの役割りを与えられ,それぞれの意味を持ち,さまざまに位置づけちれていることを予想させる。 2)依存構造の類型:依存構造の構造化の様相-対象の数,焦点の有無,焦点の数,焦点と他の対象との機能分化などは各個人において異なるのであるが,焦点が何かによって依存構造を類型化してみると,同じ類型間には対人的依存行動の共通点が認められることが明らかになった。 3)大学生女子における依存性:青年においてもここで問題にする意味での依存性が認みられる。つまり,現象的には自立的であると考えられている大学生においても,少なくとも女子では依存要求が認められる。そして特に顕著なことは次のようなことである。 (1)単一の焦点になる対象としては,母親,愛情の対象,尊敬する人などが多く,同性の親友や父親は少ない。 (2)女子青年と母親との情緒的結合は強い。このことは他の研究(たとえば,久世・大西,1958)でも指摘されていることであるが,本研究でもこれと一致した結果が得られた。母親は単一の焦点となる傾向が大であり,複数焦点型でも焦点のひとりはほとんど母親であり,親密度も高い。 (3)母親を焦点とするものは,他の型に比べ家族中心的傾向がある。またこの型では恋人もないものが多く,親友との結合も弱く,青年期の発達からみて問題を感じさする。 (4)焦点が多いもの,および明確でないものでは,高得点の対象のひとりにほとんど必ず母親が含まれる傾向があり,類型の特徴も母親型の様相を呈し,上記の(3)と考え合わせて,母親以外の単一の焦点の顕在化が発達の方向かもしれない。 (5)大学生女子では父親との結合はそれほど強くはない。父親は情緒的に拒否されているわけではないが,依存構造のなかでは道具的色彩の増した位置づけがなされていると予想される。また,父親は尊敬する人と競合的な立場にあり,尊敬する人を焦点とする依存構造ではほとんど父親はしめだされる傾向がある。 (6)一般に女子青年の依存構述においては同性の親友の占める位置は少ない。
著者
高橋 恵子
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究はわが国における友情概念を検討することを目的とした。Piaget, Selman, Younissなどの欧米の友情概念についての先行研究と比較しながら、友情について、わが国の子どもやおとなが持っている素朴理論を明らかにした。如何なる人間関係を友情と呼び、友人にどのような機能を求めているのか、それはいわゆる西欧流の、いいかえれば、これまでわが国の発達研究が当然としてきた友情概念と同じか否かを明らかにすることをねらいとした。具体的には、友人と呼ぶ人間の範囲、その人々との関係の質(情緒的、道具的な関係)について検討すること、そしてまた、友情概念が実際の友人との関係に直接的に関連しているか否かを明らかにすること、を目的として3種の個別面接調査を実施した。面接を録音し、後にすべて文字化してプロトコルを作成して分析した。調査対象は小学2年生から大学生までの男女、計約300名であった。その結果、主に以下の4点が明らかになった。(1)いわゆる親友の概念(たとえば、どのような関係を親友と呼ぶか、親友はどのような心理的機能を持っているかなど)では、たとえば、ベルリンの子どもと差はなかった。(2)しかし、親友といわゆる友だちとのつきあいについて差をつけるかという質問では、ベルリンの子どもが親友を誰よりも大切にするとしたのに対し、わが国では親友だけではなく誰とも仲良くするのが望ましいとした。(3)それは、わが国では友だちと呼ぶ人間関係の範囲が欧米に比べて広く、ちょっとした知合いでも「友だち」と表現するような、「友だち」と言う言葉の使い方が異なっていることと関連していた。(4)しかし、わが国の子どもがだれとでも同程度に付き合っているのではなく、親しさの程度を区別して、ベルリンの子ども同様、選択的につきあっていることがわかった。