著者
香川 せつ子
出版者
西九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、19世紀末から20世紀初頭のイギリスを対象に、女性大学教員の量的動向や属性、専攻分野等を検討し、教育研究スタッフへの女性の参入の過程と阻害要因を明らかにした。19世紀末まで女性の大学教員の職場は女性カレッジに集中し、教育研究環境や地位において不利な条件下に置かれながらも、自然科学等の新興学問分野で独自の業績を残したことを指摘した。
著者
香川 せつ子 佐々木 啓子 中込 さやか
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

昨年度から続くコロナ禍による海外渡航制限のため、当初計画していた現地調査は実施できなかった。しかし国内の大学図書館や国会図書館が所蔵する一次資料や先行研究の渉猟およびネット上で公開された海外情報へのアクセスによって実証的研究を進めた。前年度から引き続いて19世紀末から20世紀初頭にイギリスに留学し、帰国後に教育・科学分野で活躍した大江スミ、二階堂トクヨ、黒田チカの軌跡と業績を検証し(香川・中込)、他方では奨学金によるアメリカのブリンマー・カレッジ等への留学が日本の女子高等教育にもたらした貢献(佐々木)ついて検討した。本年度の新たな取り組みとして、研究代表者の香川は実践女子大学創立者の下田歌子の19世紀末におけるイギリス留学について重点的に調査・研究した。『下田歌子と近代日本ー良妻賢母論と女子教育の創出』(共著、2021年9月刊行)では、下田梅子と津田梅子がともに華族女学校在職中に英米に留学していることに着目し、両者の西洋文化受容の過程を比較考察した。また別の論文では、下田と相前後してイギリスに留学した安井てつと下田を比較し、イギリスの女子教育から受けた影響を体育の奨励に着目して比較考察した。本研究課題の特質から、研究成果の海外への発信や海外研究者との交流にも努めた。2021年5月の女性と科学に関する国際研究会(Women and Science in the Twentieth Century)では香川が黒田チカについて報告、6月の国際教育史学会(ISCHE)では香川が二階堂トクヨ、佐々木が藤田たき、中込が大江スミについて報告、11月のイギリス教育史学会(HES)では佐々木が日本女性を対象とした米国留学奨学金について報告した。いずれもオンライン開催であり、海外研究者との対面での交流はならなかったが、頂いた質問やコメントを通して考察を深めることができた。
著者
香川 せつ子
出版者
西九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、19世紀後半から20世紀初頭に、イギリスの高等教育機関を修了した女性の卒業後のキャリア形成について考察した。この時期に女性の高等教育機会は急速に拡大し、1930年にはイギリスの大学に在籍する学生の4分の1が女性であった。その大半が卒業後に教職の道を歩んでいる。他方では女性の医学教育機会の獲得と医師職への進出が実現し、女性医師数も着実に増加した。本研究では、この二つの職種に注目し、医師についてはロンドン女子医学校、教職についてはケンブリッジ大学ガートン・カレッジを事例にとりあげて、入学生の社会的出自とプロフィール、卒業生のキャリア形成を検討した。ガートン・カレッジに関しては、その同窓会名簿の記載事項を分析した結果、(1)初期の卒業性にとって職業と結婚とは二者択一の関係にあり、19世紀末まで後者の数が前者を上回った、(2)職業の大半は教職であり、1910年まで卒業生の半数以上、就業者の4人に3人までが教職に就いた。教職の中でのキャリア形成の様相は年代とともに変化している、(3)教職以外では、有職無職様々な形をとりながらアカデミズムの世界で生きた女性、卒業後に医学校等に進学し医師となった女性、結婚後ボランティアなど社会活動で活躍したことが明らかとなった。ロンドン女子医学校に関しては、その年報と校内誌から教育課程や学生生活の実態を探るとともに、女性医師数の動向を検討し、卒業生の主たる活躍の場が、女性と子どもを対象とした病院や、植民地医療にあったことを明らかにした。