- 著者
-
香川 せつ子
- 出版者
- 西九州大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究では、19世紀後半から20世紀初頭に、イギリスの高等教育機関を修了した女性の卒業後のキャリア形成について考察した。この時期に女性の高等教育機会は急速に拡大し、1930年にはイギリスの大学に在籍する学生の4分の1が女性であった。その大半が卒業後に教職の道を歩んでいる。他方では女性の医学教育機会の獲得と医師職への進出が実現し、女性医師数も着実に増加した。本研究では、この二つの職種に注目し、医師についてはロンドン女子医学校、教職についてはケンブリッジ大学ガートン・カレッジを事例にとりあげて、入学生の社会的出自とプロフィール、卒業生のキャリア形成を検討した。ガートン・カレッジに関しては、その同窓会名簿の記載事項を分析した結果、(1)初期の卒業性にとって職業と結婚とは二者択一の関係にあり、19世紀末まで後者の数が前者を上回った、(2)職業の大半は教職であり、1910年まで卒業生の半数以上、就業者の4人に3人までが教職に就いた。教職の中でのキャリア形成の様相は年代とともに変化している、(3)教職以外では、有職無職様々な形をとりながらアカデミズムの世界で生きた女性、卒業後に医学校等に進学し医師となった女性、結婚後ボランティアなど社会活動で活躍したことが明らかとなった。ロンドン女子医学校に関しては、その年報と校内誌から教育課程や学生生活の実態を探るとともに、女性医師数の動向を検討し、卒業生の主たる活躍の場が、女性と子どもを対象とした病院や、植民地医療にあったことを明らかにした。