- 著者
-
深川 由紀子
香西 博明
香西 保明
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化学会誌
- 巻号頁・発行日
- vol.2002, no.3, pp.415-419, 2002
和紙抄造などに利用されているアオギリの粘質物を採取し,物理化学的特性や構成成分について研究を行った.<br> アオギリの若葉や幹に被覆する酸性多糖類は,イオン交換水にて抽出した後メタノールで精製する.多糖類は,<FONT SIZE="-2">D</FONT>-ガラクツロン酸,<FONT SIZE="-2">D</FONT>-ガラクトース,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-アラビノースおよび<FONT SIZE="-2">L</FONT>-ラムノースから構成されている.さらに粘質液を数日間放置すると粘度が低下する.アオギリ粘質物の酸による加水分解からアミノ酸である<FONT SIZE="-2">L</FONT>-グルタミン酸,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-アラニン,さらには<FONT SIZE="-2">L</FONT>-イソロイシン,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-バリン,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-リシン,<FONT SIZE="-2">L</FONT>-チロシンおよびグリシンを得た.これらの結果は,アオギリに含まれる多糖類がきわめて複雑な構造を有し,その結果特有な物理的性質を与えていることと示唆している.