著者
山岡 哲二 斯波 真理子 馬原 淳
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトでは、代謝のアンバランスからもたらされる様々な疾患を治療する"DNCS, Drug Navigated Clearance System"という新たな治療概念の実証に挑戦している。その基本的原理は、これまでのDDS研究には類を見ない「生体内病因物質を、生体が備えている別の分解・排泄機構へと誘導する」ことによる疾患の治療法である。まず、高脂血症治療を目指して、血中LDL分子を肝細胞アシアロオロソムコイドレセプターに誘導するシステムの構築を進め、モデルマウスを用いたin vivoでの効果の検証に成功してきた。昨年度は、拡張型心筋症の治療を目指した自己抗体の除去について同様の検討を実施した。その結果in vitroにおいては有効な幹細胞による体ゲット抗体の取り込みを確認したために、この治療効果を実証するための動物モデルの作成を進めてきた。すなわち、血中抗体価が低下することで、その症状の軽減をモニターできるシステムである。また、抗体を直接肝細胞へ誘導するシステムに加えて、体内のLDL分子をメディエータ分子として利用することで、単純な分子で目的抗体を肝細胞へ誘導することが可能となっており有望なシステムと考えている。現在、有効な動物モデルの作成には至っておらず、そのin vivo検証ができない状況である。しかしながら、特異的な抗体の幹細胞への誘導効率は飛躍的に向上しており、今後、他施設の動物モデルも検索した上で、in vivoにおける治療実験を進める。
著者
山岡 哲二 馬原 淳
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

フローサイトメーター(FACS)や磁気ビーズ法(MACS)より簡便で、かつ、特異細胞表面マーカーの「密度」に依存した連続的な分離が可能で、さらに、従来法のように幹細胞を抗体などで標識する必要のない新たな幹細胞分離用細胞ローリングカラムを開発した。白血球はその表面糖鎖と血管内腔のセレクチン分子との連続的な相互作用により、血管内壁をローリングすることで炎症部位へと集積する。本研究では、この細胞ローリング現象を応用して、幹細胞表面マーカーに対する特異抗体を内腔面に固定化したチューブ状カラムを作製し、単離間葉系幹細胞(MSC)を表面マーカー密度で分離し、各分画に存在する幹細胞の分化能特性を詳細に検討することで、従来よりさらに純度の増した幹細胞画分の分離を可能にした。また、非特異的相互作用を強く抑制するベタイン構造を表面抗体固定化部位に導入する事で、非特異的な強い細胞の相互作用が抑制され安定な細胞ローリングを再現することが可能となった。
著者
山岡 哲二 馬原 淳 村瀬 剛 村瀬 剛 田中 啓之
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

オリゴ-D-乳酸と神経再生誘導性とで構成される両親媒性結合体を、ポリ乳酸製組織再生用デバイスの修飾プローブとして開発・作成した。このプローブとポリL-乳酸を溶液系で混合して電界紡糸法などの急速な脱溶媒を伴う加工法により、直径約1.2mm長さ14mmのラット坐骨神経欠損モデル用神経誘導管を作成し、in vitroおよびin vivo似て評価したところ、本プローブはポリ乳酸と分子分散し、疎水性相互作用あるいはステレオコンプレックス形成に基づいて、ポリL-乳酸基材中へと安定に固定化されることが明らかとなった。本プローブで修飾したポリL-乳酸フィルム上でのPC12細胞(ラット副腎髄質由来褐色細胞腫)の挙動から、主食により、細胞の分化が顕著に促進されることが明らかとなった。また、ラット坐骨神経欠損モデル治療実験では、移植6ヶ月に於いてコントロールに用いたポリ乳酸性神経誘導管の2~4倍の神経再生効果が確認された。